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小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫

この小川洋子の代表作(?)を買ったのは、実は知り合いの高校生男子にプレゼントしようと思ったから。小説を読まない彼でも楽しく読めるものをと考えて買ったのだが、そういえば彼は数学好きではなかった。思い直して贈るのをやめ、本が手元に残った。そしてわたしはと言えば、映画を見ただけで読んだ気になっていたが実は未読。まったく数学好きではないのだけれどせっかくだから読むことにした。

先日、理系男性2名と飲んでいたとき、「数式の美しさ」「数学の楽しさ」を二人は目を輝かせて語り、わたしは聴いていて少しも共感できないでいた。数学は苦手だし、そもそも数というものに興味が持てないのだ。代わりにわたしが「文章の美しさ」「構成の美(源氏物語とか!)」について語っても二人はよくわからないのだった。美と言ってもいろいろあるわけだ。

それでこの小説なのだが、映画と比べて当然ながら数学の話が多い。数式もたくさん出る。だが数に興味のないわたしは、素数や友愛数などはまだしも、その後は数式が出る部分はほとんど斜め読みしてしまった。ダメな読者である。

あと、80分だけ記憶があるというのも、なんだか釈然としなかった。子ども好きとはいえ、毎回初めて会ったルートのことを、そこまで入れ込んで心配するだろうか、など。とはいえ、覚えていられる時間が短いというのは、年を取っていく人間にとっては身につまされる話である。わたしなんか、「あれ、こないだこの件は話したでしょ?」と相手に言われてもさっぱり覚えていなかったりする。そんなときは非常に不安になる。ワタシ、ダイジョウブ? 新しい記憶をなくしつづけたとき、最後に自分に残るのは何だろう、自分はどんな人間なのだろう、と考えてしまうこともあるのだ。



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