小川洋子『約束された移動』河出書房新社
もうトシだから年末の大掃除なんてやめて、小掃除ぐらいにとどめようと思ったのに、夫婦の片方が始めるともう片方もなんとなくがんばってしまう。ということで今日はキッチンやリビングを掃除したあと、本棚の整理をした。腕を肩よりも上げる姿勢がつづいたせいか肩が痛い…。しかし本はどうしてこうも増えるのだろう。できるだけ買わないように努めているつもりなのだが。
仕事も納めたし、家の中はだいぶきれいになった(残りは明日)ので、本を読んでいても気持ちがいい。今年最後から2番目の本は図書館で借りてきた小川洋子のこの本になった。
6つの短編が入っている。童話のような趣があるものばかりだが、いつものようにひそやかなグロテスクさもあったりして、この人らしい。表題作は一流ホテルのデラックスなスイートを掃除する係の女性の話。その部屋にたまに宿泊する美形のハリウッドスターがおり、スイートに備え付けられた本棚からいつも1冊だけ抜き取って帰る。掃除係は何が抜き取られたかを調べては、自分でその本を読んでいく。ありきたりのスターのように思われたその美男俳優のもうひとつの顔が選ばれた本から想像される。並べられた本の題名(実在の小説ばかり)とそれらに共通する意外な要素とは。
これは「読書」をテーマにした珍しい小説なのかも。そして「失われたもの」に注目するあたりは『密やかな結晶』を思い出させる。
そして今晩から読み始める次の本が今年最後の本になりそうだけど、どれにしようかな…。