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岸本佐知子『なんらかの事情』ちくま文庫

自分が関係する大きめのイベントが先月あり、それはいい感じに終わったのだが、そのあと頭の中でその内容が余韻と呼ぶには強すぎる残り方をしていて、なかなか他のことに集中できない。(そんなことってないですか?)それでここのところは軽めのエッセイ本をつづけて読んだりしているわけです。

さて、岸本さんのこの本。だいぶ前に読んだ『ねにもつタイプ』と『きになる部分』がめちゃくちゃ面白かったので、当然かなりの期待値で読んだ。この人のエッセイは「おもしろい」と「ふしぎ」と、少々の「ぶきみ」がまじりあう。合体すると「おもふしぶ」(いま命名した)。今回も、「こういう人のところにはこういう出来事が集まってくるんだなぁ」と思った。たとえばお店でミニトマトを買っても、この人が買うとそのパックに「妻せつ子」という奇妙な商標名(?)が印刷されていたりするのだ…。

クラフト・エヴィング商會のイラストつきで、このイラストがたいへんに良かった。こういうこともできる人たちなんだな。ページをめくるときの指の位置についてのエッセイでは、実際にページの左端に実物大の指がリアルに描かれていて、自分の指をどこに置いたらいいかわからず困ってしまった。

まぁ、『ねにもつ』と『きになる』が壮絶によかったので、わたしとしてはこの本はちょっとそれよりも「おもふしぶ度」がパワーダウンしている感じがしたかな。それでも充分に楽しかったですが。


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