【読書】これぞ人生の元気サプリ
仕事で嫌なことが続くと、つい「何のために働いているんだっけ?」と
立ち返りたくなることがありませんか?
特に日照時間が短い冬の時期は、ちょっとしたことでも
気分が沈んでしまって、なかなか浮上することが難しいと感じます。
今回は、そんな躓いた時にぜひ読みたい、元気サプリメント的な小説を
ご紹介します。
青山美智子『ただいま神様当番』(宝島社文庫)
可愛らしい神様が、とあるバス停利用者の人々の前に現れ、
彼ら彼女らに神様当番をさせるというお話です。
神様の風貌が可愛く描写されています。
私のイメージでは、おそらくジャムおじさん系の見た目で、
紅色のジャージを着ている小柄なご老人という姿です。
神様の要望は、実は当番の彼ら彼女らが心の底から願っていることです。
最初は皆、表面的な達成を目指すのですが、
それだけでは神様当番は終わりません。
一番目に出てくるOL、水原咲良は、「わしのこと、楽しませて」と
お願いをされてしまいます。
会社の上司とは気が合わず、唯一仲の良かった同僚は結婚を機に
退職することが決まり、大好きなアイドルのコンサートは
いつも抽選落ちで・・・。
いろんなことが嫌になっている状態の咲良がその不満を爆発させていると、
ふと神様が自宅に置いてあったある物に気づくのです。
そこから、彼女の生活が少しずつ変わり始めます。
二番目に登場する松阪千帆は、小学生で、元気だけが取り柄の弟がいます。
もっと大人しくて礼儀正しい弟がいたらな・・・
と呆れているところに神様が登場。
千帆が忘れかけていた弟のよさに気づいたり、
気づかずに隠していた親に甘えたいという欲求に気づきます。
三番目には、リア充に憧れる男子高校生の新島直樹が登場します。
本当のリア充とは何なのか。
青春時代を絶賛謳歌中の立場では、恋人のいる同級生や
勉強・スポーツができる友人を羨ましく思ってしまって、
なかなか本質に気づけないかもしれません。
自信が持てない自分を隠すように時折嘘をついてしまう直樹ですが、
神様の大胆な行動のおかげで、少しずつ、
素の自分を出す勇気が出てきます。
次は、大学で英語の非常勤講師として働く英国人男性、
リチャード・ブランソンです。
彼は日本語の勉強にとても熱心ですが、
受け持っているクラスの学生たちが話す乱れた日本語に悩んでいました。
いつも不真面目な態度で授業を受ける学生たちを前に、
リチャードはどんどん心を閉ざしていきます。
そんな時、神様に「美しい言葉で話したいの」とお願いをされます。
神様の言う「美しい言葉」とはどういうことなのか。
個人的に、毎回出てくる展開、「神様当番」という四文字が腕に
黒の太文字で書かれていることに、当番の彼ら彼女らが驚くシーンが
好きです。
特にリチャードの反応が、リチャードという人柄がよく表れていて
思わず笑ってしまいました。
最後は、小さな会社の社長である福永武志という男性が出てくるのですが、
彼はこれまでの当番とは少し異なりました。
ワンマン社長でえらぶっているところがあり、神様当番になったときにも
「周りに見せつけてやろう」と企てます。
ただ、そんなやりたい放題だった彼に、突然ピンチがやってくるのです。
苦しみの中、少しずつ、周りの人の様子にも目を向けられるようになる
武志。
自分が求めていたことは、意外と近くにあったのだと、
ふと足を止めて後ろを振り返ることの大切さに気付かせてもらえました。
皆それぞれ、神様の要望を叶える過程で、本当に自分が望んでいる事に
気づき、少しずつ変わっていくのです。
それぞれの人生をしっかり大切に生きていて、
自分の人生を大切に生きているからこそ、
周りの人の人生も大切にできるんだなと認識させられた一冊でした。