トラウマ治療に行く時、心がけたり準備したほうがいいこと。考えておく(といいかも)編 1/4
先日マシュマロを開拓したところ、このような質問をいただきました。(皆様、ありがとうございます。)
1つ目の方のように、「カウンセリングいく前・あるいは並行して何かやったほうがいいですか?」質問も割といただいております。
そして2つ目の方と近い形で「行ったのはいいけど、カウンセラーとうまくいかないのはどうすれば?」というご質問もいただきます。
ただ、2つ目の方には申し訳ないのですが、今のところ私自身に継続終了を告げられた経験がないことと、なぜ継続終了されたのかわからないので、あくまで想定でしかお答えできず恐縮です…。
それもあって、この記事である程度の情報をまとめさせていただきました。何かの足しになれば良いのですが…。
(余談ですが、心理士さん側の事情で終了なら、ある程度の期間まで引き受けたりしてくれないのですかね〜。読んでてちょっとびっくりしました。新たないい出会いがあることを祈っております。)
というわけでこの記事は、
「カウンセラーと長期的関係を結ぶために、当事者が知っておく&やる(といいかもしれない)アレコレ集」です。
またしても長くなったので
「相手の限界を考える(といいかも)」「準備」「条件」「伝える」
4つに記事を分けました。この記事はぐだぐだと前置きを書いてます。
実践ではないのであまり役に立ちません(笑)
いわゆる「ヤバいカウンセラー」はこの記事で扱いません
まず最初に。
この記事で「このタイプのカウンセラーはやべえ…」みたいな話はしません。
カウンセラーと揉めると原因は色々ありますし、こちらがトラウマという難しい病を抱えてるのも含めて、片側の話だけ聞いても判断できません。
なので今回は「他人は変えられない」「でも自分は変えられる」というスタンスで、当事者ができる話をします。
もちろん「ボロボロになってる当事者にこれ以上要求するな」は超・ごもっともです。
しかし現状、カウンセラーをうま〜い具合に紹介してくれる機関もないですし、相談に乗ってくれる場所もなかなかありません。
何よりも治療中は金の問題が結構デカい。トラウマの病状で労働が難しいことも込みで、金を払ってうまくいかなかった時のダメージが心理的にも財布的にもデカい。なのに公的支援出てこない。辛い。政治家の脱税分をこっちに回してほしい。
とにかく我々はそんな社会資源が少ない中で、トラウマ治療という大航海を乗り越えなくてはならないッ…!
なので(やる気力がある人に限り)当事者サイドでできることをやっておこう、心構えておこう…という記事です。
本来やらなくてもいいことですが、サバイブせざるを得ない時にどうぞ。
支援職サイドの限界を知っておく(といいかも)
まずはトラウマ★大航海サバイブの戦略を練る基準として、支援職サイドの限界を想像してみました。
というのも、相手にできることの限界を知らなければ、
「なんでこれをやってもらえないんだ…?
あ、もしかして私にそんなことする価値がないと思われてるから…?」
と、自罰や自己批判に結びついて自罰タイムに入りやすいからです。
ACは何でもかんでも自分のせいだと思いがちですが、そもそも相手にも限界や事情が存在しています。
それをある程度知っておくことで、責任10000%を背負い込んで無意味な自罰タイムに突入するのを防ぎましょう。自罰は心にも体にも悪いからな!
自分の人生を理解してもらうのに90分は短すぎる
「カウンセラーと合わないかもしれない…」的相談でよく聞くのが
「自分の話を理解してくれない」「全然違う分析やアドバイスをされた」
という話です。(支援職サイドの勉強不足も否めませんが、ここでは割愛します)
まず当事者が知っておいたほうがいいのは、トラウマの中でも幼少期のあれこれがある場合、60分〜90分フルコースで傾聴しても、数回で全てを理解するのは難しすぎると思います。
これは私が人の相談に乗る側になってよくわかりました。
親子関係を軽く聞いて、相手の気持ちが落ち着いたり全貌がわかるまで合計で8時間以上の傾聴を必要とすることが多いです。8時間以上話しても「聞いてもらえて、ちょっと落ち着きました」ぐらいの効果です。
もちろん整理しまくれば
「私は親は怒鳴り散らされるのが日常で、おまけに宗教3世で、思春期に親が離婚して、依存症になって、変な男と付き合って、性被害に遭いました。」
と、スッキリした伝え方はできなくもない。
しかし、幼少期から何十年も抱えてきた苦しみを、初回から冷静に話すのは無理です。語る時、間違いなく自分の感情が乗っかってきますし、しかも出来事の詳細や感情を主観的に語るので、全体像が見えづらくなります(※これは現象の話で批判ではありません。当然のことです。)
一方で、聞き手は相手の感情を読み取る・リアクション・言いたいことを我慢する・分析する、などの「傾聴の呼吸」が必要になるため、全集中してるうちにちょっと聞き漏らすこともあったり…(あくまで素人の私はですが)
このように自分ではきちんと話してるつもりでも、聞き手側からしたら話の全体像がわからないのはあるあるです。
結局、人の人生は「一般論」「教科書に載ってる」ものよりずっと複雑で、入り込んでるのが普通です。他人の人生をそれなりに知るには、もんんんんんのすごい時間が必要なんだなと、相談されるようになってから思い知りました。
もちろんプロの相談は、素人の私と違ってある程度の問題のパターンを知識や経験でご存知ですから、短時間の会話からなんかこう…すごい分析をして、色んな見解をもらえるでしょう(すごい)
それでも、お持ちのトラウマ案件が多ければ多いほど、完璧な分析は難しいと思われます。
しかも90分のコースのうち、トラウマケアに1時間使うと、傾聴タイムは実質30分です。もっと短い時もあります。その中で取得できる情報はわずかです。
特にカウンセラーと接してる時間が短い最初のうちは、当然取得できる情報も少ないです。その中でカウンセラーが若干、見当違いの分析をしていても、
「短時間で得られる情報はそもそも少ないからなあ〜…」
と心構えておくのは大事かなと。間違っても「私がゴミだからわかってもらえないんだ…」と自罰タイムに入るのはやめましょう。
そして時間制限の中の若干の見当違いで「このカウンセラーには実力がない…」と完璧な分析を求めてカウンセラーを新しく変え続けると、カウンセラーショッピングが永久に終わらず、結局自分の首を絞めることになります。
もちろんマジで当たってなかったり、トラウマを理解してない人もいるのですが、誰でも初見は難しいのです。若干当たってないな…程度なら、3・4回ほど様子見してもいいと思います。
そもそも、自分がアドバイスを受け止められる状態なのか
トラウマや、幼少期からのあれこれがある場合、他者とのコミュニケーションを阻害してる自分の振る舞いを見つめ直す時がきます。
それも含めて、トラウマ治療中にカウンセラーからアドバイスをもらうことがあります。
しかしアドバイスは、自分のパニックが落ち着いて、自分をある程度は客観視できる段階で受け止められることです。
カウンセラーの分析・指摘・アドバイスが当たってる・当たってないの話の前に、そもそも自分がアドバイスを受け止められる状態なのか、自分の内面と正直に向き合いましょう。
ACはやたらと我慢強く、自分が甘えることを許せない人が多いです。
また治療を急ぐ気持ちや、自己肯定感が低すぎるばかりに「変わらないといけない」と自分をムチでしばくこともしばしば。親元で鍛えられた謎の耐久力で、本当は嫌だと思っているのに厳しい言葉や環境にも耐えがちです。もちろん私のことだとも。
しかし、受け止められる心の土台がない状態でアドバイスや指摘をもらっても、負のサイクルを招くことが多いのです。
アドバイス・指摘をもらう→我慢する→しかし自罰タイムが始まる→依存行為などでストレス解消→生活がぐっちゃぐちゃに…→やっぱり私はダメなんだ!変わらなきゃ!→アドバイスを(略)
というスタイルになりがちです。ああ、これも私だ。
「自分の話を何一つとして否定されたくない」
「ただこの気持ちをわかってほしい」
「正しいことを言われてるけど、自分の全てが否定されてる気が拭えない(そんな自分がどうかしてるのもわかってるんだが、どうにもできない)」
そんな正直な気持ちを見つけた時は、アドバイスをもらうより、傾聴してもらうほうに切り替えるのがおすすめです(後日の記事に詳細を書きます)
個人事業主カウンセラーのキャパは大きくない
これはあくまで個人事業主の絵描きフリーランサーとして一人で働いてる人間の想像ですが、個人開業してる先生は、大型病院ほどの"キャパ"が、色んな意味で少ないと思われます。
例えば精神科病院や施設ならチームを組んでるので、患者さんがある程度トラブルや問題を起こしても、複数人でカバーできます。責任も分担です。
ところが、カウンセリングは多くの場合、一対一の密室の空間の中で相手と接することになります。 複数人で事業をしてる場合でも、カウンセリング中に別の誰かが間に入ってくれることは少ないでしょう。
また、複雑なトラウマ治療の技の習得にも、時間とお金を割かなくてはなりません。さらに相談内容への守秘義務があるので、愚痴で発散するのも簡単ではないと思われます。
ついでにカウンセリング以外にも経理・営業・宣伝・問い合わせ返信・時間調整・書類関係と、それはそれは色んな業務にも追われてるでしょう……(個人事業主の想像)
個人開業だから能力が低いという意味ではなく、どれだけ"技"を極めても、人間の時間的な、物理的な限界っつーのがありますよねって話です。
この上で「カウンセラーの言動で死にたくなりました」と自殺未遂を仄めかしたり、怒鳴ったり、常に細かい要求をされたり、不満ばかり言われたり、鬼のクレームメールが大量に送られる、などが続くと、ただでさえ業務パンパンなカウンセラー(ていうか個人事業主の)キャパを追い詰めます。これはあなた一人の問題だけではなく、総合してキャパの限界を超えた時に、治療の継続を断られる可能性が高くなります。
大半の支援職の方には「いや、自分の心理ケアぐらいできるっつーの。支援職を舐めるな。」と思われてますでしょうし、豊富な知恵と経験で乗り越えられてるとは思います。
また「困った症状が出るのがトラウマだ。トラウマの臨床をするならそれぐらい覚悟しろ」という声もあると思います。
しかし、カウンセラーの金銭事情を考えれば、プライドと信念や理想だけではやりきれない部分も出てくるよね、という想像をしてるのは私だけ?
カウンセラー側の労働問題が当事者にも絡んでくる(かも)
カウンセラーはそこまで給料が高くないとお聞きしています。
一方で「個人事業主は会社員の3倍は稼がないとやっていけないよ」みたいな話がありまして。会社勤めと違って福利厚生もないですからね。
これはフリーランス界隈で言われてることですが、個人事業主カウンセラー(もしくは勤めていても)も同じような問題は抱えてると想像します。
"社会福祉として必要不可欠なのに、その仕事の賃金がなぜか低い"問題は、カウンセリングだけではなく、日本の支援職全般に言えることでしょう。
一方で、クライアント側はトラウマの病状で労働が難しく、働けない・生活保護も珍しくありません。労働ができても、給料を上げるために+α頑張るのはマジで厳しいです。体調不良やケアに1日の時間を使うから。
つまり、高度で技術のある治療を必要としてるのに、高額なお金を払える客層ではない。
カウンセラー側がその事情を知りつつ、長期的に継続できる金額を設定するとなると…………………………………………………
日本で金銭的豊かになるのは難しい職業だな…と勝手に想像しています。
そんな「日本の支援職の扱いってどうなのよ労働事情」が常にカウンセラーにかかってる上に、自分が払ってる金以上の欲求を求めると、
「うちは(この料金で)あなたに対応できないですから、もう来てもらわなくていいです…。」
と、言われる可能性が高まるんじゃないでしょうか。
(これはあくまで私が一般的な依頼内容として、金銭と仕事内容がマッチしないとお断りする経験からの想像ですが…。)
その上で、たまに聞く「カウンセラーに要望を伝えただけで、すごい怒られたり不機嫌になられた」「継続を拒否された」話には、
自分の伝え方・内容+タイミング+
支援職側の技量云々
ここに加えて、
+労働問題も日々積み重なってる
その可能性も勝手に想像しています。
多分、政府が支援職全員に年収1500万円になるように金を配るなり調整するなりしてたら、要望に応えられる余裕と、応える理由ができるんじゃないかなと…。やはり人間は金なのだ…。
これは「支援職の人も大変だから気遣ってあげようね」ではなく、
自分がどう努力しても、あるいは真っ当な主張をしても、カウンセラーとうまくいかない可能性はゼロにはできない。
その原因を探れば自分の問題ではない可能性もある。
掘り下げればカウンセラーよりも、政治家や社会構造にキレた方がいいこともある。
もちろん自分の発したトラウマ病状案件(別記事参照)でもめてしまったのなら、振り返って次から行動を変えて次にいかそう。
しかし、考えても考えても原因がわからないなら、相手の事情の可能性も高い。これは変えられません。
変えられないものを変えようとして始まる自罰はやめましょう。
という話です。
「自分の回復のために」戦略を練りましょう
最初に書いた通り、社会資源が少ない中で、トラウマ治療という大航海を乗り越えなくてはならないのが、今の当事者の現状です。
にもかかわらず、複雑なトラウマほど、長期的にカウンセラーと関わる必要があります。
自分の回復のために、治療を続けられる確率を高く保つ手段を戦略的にあれこれ調整したほうが当事者にとってはお得です。(※その余力がある人だけ)
まずは支援職サイドの限界を軽く頭に入れ、自分にとって変えられないものを線引きし、変えられることを実践していきましょう。
そんな実践編は次回からどうぞ。