「取材学-探求の技法-」
最初の投稿から早9カ月。
普通の修士生でいえばそろそろ修論に必要なデータが出そろって論文を書き始めるころなのかもしれませんが、私の場合は少し出遅れています…。(コロナで2カ月失ったということにしておきたい)
MPH入学当初は統計とか、そういうのをやるんだろうな…と勝手に思っていたのですが、ひょんなことから人類学的な視点から研究を進めることになりました。学部ではウェットの実験をする研究室で半年卒研をした程度で、質的研究に関しては全くのド素人。手探り状態です。
これから主にやるべきことは「インタビュー」と「質的解析」の2点。
このインタビューが今の私にはとっても怖い。経験しなければわからないことを経験していないがために「わからない」と頭が拒絶反応をしているような感覚。アポを取るメールや電話、手紙を送る。そしてお返事が来る。そんなことを想像するだけで、実行に移せないまま幾日も過ぎていきます。(一歩踏み出せばいいことはわかっているのですが、足がすくむのです。)
これでは修論がかけない……
そんな時、気分転換にふらっと立ち寄った古本屋さんで出会った本がこちら。
加藤秀俊著「取材学-探求の技法-」中公新書 初版1975年 (31版2002年)
取材に必要な心構え、マナーをはじめ、取材がもつ第一次情報としての意義やその意義を成すにたえうる取材の条件が書かれており、これから取材することを考えている私には、とても有意義な情報&教訓であふれていました。
学生が他者を対象に研究を始めるときはもちろん、自分と異なるバックグラウンドを持つ人と対話するとき、これからなんらかの「取材」をしようと考えているとき、もしすぐ近くに教えを与えてくれる人がいないなら、この本がきっと代わりになってくれるはずです。
――真面目にじぶんの必要とする情報を手に入れようとする人は、いわゆる「インタービューアー」の真似をしてはいけない。理想としてかかげるべきものは、もっと知的な対談、対話の世界なのである。(p119)
インタビューといったときに、やはり真っ先に思い浮かんでいたのはテレビでよく見るインタビューでした。(完全に見透かされています。)自分は取材初めてだし、多少勉強不足でも、まああんな感じで色々聞かせてもらおう…正直そんな甘えが心のどこかにありました。
今の自分は、まさにこれから必要とする情報を手に入れようと社会を目前にしている。著者が言うこの「理想の世界」にたどり着くために、謙虚に学び、入念な準備をしなければ…。
また、インタビューが面白くなるのは、「異質の人間どうしがぶつかり合ったときである(p120)」と著者は言います。思い出せば、私のアドバイザー(人類学研究者)も、研究ではなるべく自分にとって遠い存在の人に話を聞きなさい、と私に繰り返し言っていました。
大学というところにいるとその閉鎖性を忘れてしまい、まさに「カタツムリのごとくに小さくかたまり(p121)」カラに閉じこもってしまいがちです。そのうえ、コロナのせいで閉鎖された在宅ワーク環境、見慣れたSNSやインターネット上の世界を行ったり来たりしているものだから、私はより外の世界が怖くなっているのかもしれない。しかし、いい研究、社会的な知に少しでも進展をもたらす研究をするには、今あるカラを破らなければ。
まだ取材そのものについては分からない。でも、どう準備したら良いのか、そこに関してはわかったことがすこーし増えて、背中を押してもらえた様な気がしました。同時に、初版から45年経っても全く色褪せることなく、私の不安や慢心を言い当て、そして今の社会をも鮮やかに映し出す記述に、著者の洞察の鋭さを感じました。