02:男ともだち
千早茜さんの『男ともだち』を読んだ。
(以下、内容の解説はしていませんが、ネタバレありというか、ただただ読後の熱冷めやらぬ状態で書いています。まだお読みになっていない方は、ぜひ『男ともだち』を読んでください。)
ハセオ=必要な毒の存在
ハセオの存在が読後、毒のように体内を巡っている。
神名という女主人公の年齢が自分に近かったこと、千早さんの作品『さんかく』が最高だったこと、解説を書いている村山由佳さんにほんの少しだけ繋がりがあることから手に取った本だった。
舞台は京都
京都の町屋がたびたび作品に登場するのは、千早さんが立命館大学のご出身だからなのかな。京都大好き人間にとっては、それだけでもたまらない。
先斗町とか、祇園、四条そんな地名にも心躍るし、路地裏のひんたりした暗がり、どこからともなく漂う京都にしかない街の匂いも思い出させる。
お話は、一気に読んだ。『さんかく』の時もそうだった。止まらないのだ。
匂い、が立ち込める、立ち上がる書き方をされる。どうしようもなく、映画を見ているような気分に浸りながら、日常を忘れて読み耽る時間がやってくる。
つい自分を重ねる(30代目前!)
神名に自分を重ねる。
どうしようもないところ、男に何かを求めているようで求めきれないようで、でもハセオのような存在を失いたくないところに。
ハセオは、神名に救われていたのかな。
そんな単純な救済の物語ではないし、言っちゃえば退廃的だし、現実では耐えきれないような話かもしれない。けれど、現実にハセオはいると思う。
男女の友情は成立するか?そんなものがテーマなの?
いやいや違うな。暗闇の中でも狂気の閃光を見失わない2人の物語だと思う。
狂気の閃光もそれを2人が信じていれば、現実になるのではないかな。
特にそれが男女であれば、狂気も狂気ではなくなる気がする。
暗闇の中でハセオも神名も互いを照らす光だし、互いに分かち難い関係だ。
依存とは違う、限りなくある部分は依存している気がするけれど、一周回ってもはや健全な依存。空気なんだ、酸素なんだ、互いに。
だからオススメ
結婚とか、仕事とか。
年齢相応に自分の周りに引っ提げてきた◯◯を同じように、いやもっと深刻に纏っている神名。読んでいて、現実と虚構の境界が曖昧になった。
世の中の20代後半(というかスレスレに30代直前)の女性の皆様、本当にオススメします、この本。
えぐられる、忘れていた失くしてしまったあの人を置いていく理由が見つかる、結婚後の生き方が救われる・・・全部なんか言葉にしてしまうと安っぽいけれど、きっと他の年代にも刺さるけれど、ジャスト登場人物と同年代の人に読んでほしい。語りたい。
私にとってのハセオ
私にもハセオのような存在はいる。
存在している、この現実に。
ここまでの関係ではないけれど、時々描写が妙に似ていてドキッとしながらページを繰った。
年上で、飲み会の席で寄っかかれるような、言わなくても食べたいものをとってくれちゃうような、ちっとも優しくない感じで周りに嫌厭されているのに、私にとってはそんなことない人。
(DV男ではない、女関係に極度にだらしないわけでもない、これは一応断っておこう)
付き合うとか、結婚するとかそんな関係ではない。
頼りたいのに頼ったら大泣きしてしまいそうでたまにツンケンしてみる相手。
ずっとこのままの関係でいい。
これ以上進展してほしくない、壊れたくない、壊したくない。
ダメ男と切れない女の病みブログみたいで、笑えるけどほんとにほぼハセオだ。
私の近くにいるハセオは、
週に何回も気まぐれに「1杯飲んでく?」「帰ろ、飲んでこ」と誘ってくる。仕事帰りの電車で隣りに座って「寝てていいよ」って言ってくれる、同い年には出せない雰囲気と寂しさを纏った男。
かと思うとずっ遠くにいるような。神名を置いて出ていく飲み会のハセオのような、振り返らないで進んでいく素早さもあって。
手なんか取らないけれどついてくることを確信している、この一文なんかそっくり当てはまる。
世の中の三十路前の女はみんなこうやってハセオを見つけて安らぎを得ているのか?
いや、私が妙にこの本に入れ込んでいるのは私のこれまでを肯定してくれるような人物が登場したせいなのか??
いやあ苦しい。
週半ば(というよりまだ火曜だから序盤)で読むのではなかった。
今週の仕事に差し障りが出るぞ。
いやいや一旦忘れて。
仕事に邁進マイシンっと。
全国のハセオさんへ。
ずっとハセオのままでいてよ。