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揚げ餅を育てる
お正月気分もすっかり落ち着いてきた。
慌ただしい日常が戻りつつある裏で、静かな戦いは始まっている。
もちvsカビだ。
我が家では年の瀬に親戚が集まり餅つきをする。
昔はちょっとしたお祭りのようだった。
祖母世代が熱々のもち米をガーゼに絡んで、臼に入れると、祖父や父親世代の男手がドス、ドスと餅をつく。
母親世代や子どもは、お供え用の鏡餅をつくったり、あんこを丸めて大福をつくるのが恒例だった。
もちつきも楽しかったけれど、一番記憶に残っているのは、父親たちがヒィーヒィー言いながら杵を持ち上げる様子や、母親たちが手を動かしながら世間話をしている声だ。
大人の笑い声や、楽しんでいる姿を見るのが嬉しかったのかもしれない。子どもは大人をよく見ている。
祖父母が亡くなりごくわずかな人数となったいまも、もちつきは続いている。
つきたてのもちは、のし餅袋なるものに入れて平たく伸ばす。袋にはマス目がかかれていて、包丁でカットすると長方形のおもちができる。
一升用ともなると一袋で40個以上のおもちができる。31日から朝、昼、おやつにもちを食べるも、正月2日目にはちょっと飽きてカップヌードルが食べたくなって、家でつくったおもちはどんなに頑張っても10日もすればカビが生えてくる。
大切なもちにある日突然、みどりのテン。
こんなところにホクロなんてあったけ?のノリで。
ふと、別のもちをみるとそばかすみたいにみどりのテンテンがたくさんいて、気づいた瞬間に叫びたくなる。
白いもちならまだいい。
海苔を混ぜてつくったのりもちは、見分けることすら困難で、最後の方はまだカビてないと言い聞かせながら食べる。
ヤツらは冷蔵庫に保管していても、いつのまにか現れる。どこから来たんだと言いたくなるくらい油断も隙もない。
ちなみに市販の切り餅にカビが生えないのは、完全無菌な場所でつくり、ひとつ一つていねいにパックされているかららしい。
自家製ではそこまで徹底した対策ができないので、カビる前にみんな干してしまう。
揚げ餅だ。
これも子どもの頃から楽しみだった。
昔は鏡開きの日にカビの生えかかった鏡餅から、カビをへずって揚げ餅にして食べた。
カビを取り除くと食べられそうなところはそんなにない。
それでも父親が得意げな顔して揚げたもちは、天かすみたいに粉々だったけど、カリカリしたところともちっぽい食感が好きだった。
ザルに入った天かすみたいな揚げもちを家族みんなで頬張った。
いまは調べるとカビの生えたもちは、目に見えない菌が付いているので食べない方が良いとのこと。
だからカビが生える前に、早急に揚げ餅を育てるのだ!
適当に細切りにする。乾燥すると鏡餅みたいに割れるので、包丁で手を切らない大きさでいい。
もちの芯まで乾燥するように、しばらくベランダで天日干しをする。
以前、玉ねぎ袋みたいな網に入れていたらカビが生えたことがあるので、なるべく平ざるのようなものでのびのび寝かせるのが良い。
こんな感じに。
少しずつ水分が抜けてカビカビではなく、
カピカピになっていくはず。
ゆっくり、ゆっくり、
揚げもちを育てる。
今年は全員無事にカビずにいられるだろうか。
干してるだけなのに心配になって、朝晩様子を見てしまう。もちは人の心配も知らずのんびり、のんびり。
みなさんもお餅が余っていたら、時間をかけてゆっくり育ててみてください。
正月が終わっても楽しみは続く。
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