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暮らしの気づきや伝統工芸品の魅力をつづります

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マガジン

  • 家にあるものだけで、ものづくり

    椿油、染め物、黒蜜、ケズリバナなど、家にあるものでチャレンジしたものづくりのまとめ。

  • 産地を訪ねて

    ものづくりの産地で見て来たことをまとめました。

  • 好きなことば

  • つかい手

    愛用している工芸品を紹介します。

最近の記事

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「Ka」

気がつくと季節は、少し肌寒い朝を迎えていた。鈍感な人間たちは、天気予報のお姉さんが「今日から秋の気配ですね」と一言つぶやくと一斉に衣替えを始める。 人間は、いつの間にか夏が終わってしまったなどと、いかにも秋が気まぐれにやってきたかのような言い方をする。でもね、蚊のアタシから言わせれば全くなっちゃいないよ。 八月の厳しい残暑の中、アタシが覚えているに、八月の七日あたりだろうか。時折吹く清々しい風に乗って、秋は日本中をあいさつに回っていた。本当に律義なヤツよ。 知らせを聞い

    • 名前のない植物たち

      100円ショップで目当てのものをカゴに入れ、会計に向かう途中でふと、家にある観葉植物のことが頭に浮かんだ。 「栄養剤でも買って行こうかな」と園芸コーナに足が向く。栄養剤とは、ペットボトルみたいな容器に入った緑色の液体型の肥料のこと。キャップを開けるとシャワーのように出てきて、葉にかかっても安心なので大雑把な私には非常に使い勝手が良いものだった。売り場に並んだ商品を手に取ったとき、少しウキウキしている自分に驚いた。まるで家で待っている家族にお土産でも買っていくような心持ちだった

      • やがて、やがて

        ときどき、思い出したくなる日々がある。 振り返れば、たまらなく愛おしく感じる日々。 今日もそうなればいいなと思う。 やがて、やがて、 そうなればいいなと思って生きていく。 いま、という瞬間はすごく必死だから、 そんなこと感じる余裕もなくて。 もう少しだけ、 過去を振り返るときに思う、気持ちみたいになれたら、 もっと、いまを好きになれる気がするのだけどな…。

        • 遊び疲れたら川の字で寝よう 猫の隣で寝転ぶ幸せ テレビゲームの臨場感は、胡座から生まれる 赤ちゃんは地べたの冒険家 ショートケーキのいちごが落ちても泣かない 雨に飛び込む 夏の水虫知らず できないのは、いまだけ 孤独から生まれるものを愛している ため息にも華を いのちの代弁者 お母さんの来ない運動会なんて、 雨で中止になればいい 今宵の月をきみもどこかで見てるかな 虹のしっぽ いとばなが咲いた 自分より性格の悪いやつに、 腹を立てるひつようはない 戦争はいつも、海外にあると思

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        「Ka」

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          8本
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        記事

          SF物語

          もう何も見たくないと思うことがある。 もう何も聞きたくないと思うことがある。 世の中、色んなものが溢れすぎている。 このまま強制終了でok。 人生は全部自分で決めたことの積み重ねならば、終わりだって自由に選んでもいいのではないかと。 もしも自由に死ぬことができたら、明日死ねばいいやって、結局死ぬのすらめんどくさくなるのかな。 生きてても面倒、死ぬのも面倒。 それはそれで大変そうだね。 そのうち考えるのも面倒だから、あたいは脳みそいらない。なんて日が来るかもしれ

          ウクライナ

          2月12日 ウクライナ政府が民間人から志願者を募り、領土防衛軍を強化しているという朝日新聞の動画ニュースをみた。領土防衛軍へ志願した男性は、色々と宣誓を述べた最後に「ウクライナ国民を決して裏切らないことを誓います」といって契約書に署名をしていた。 雪がちらつく寒空の下には、迷彩柄の服を着た屈強な男性から、ファーフード付きのコートを着た普通の女性まで、大勢の人が集まり軍事訓練をしていた。 ひとりに一つの銃。初心者は銃の形をした薄っぺらい木造模型を構えて見様見真似で歩く。 楽し

          ウクライナ

          おわり、はじまり。

          まいにち、交番の前を通るので必ず目に入るのが、入り口に表示されている昨日の交通事故。 負傷者はいつも90人から多い日は120人くらい。赤字で書かれた死亡者数が0だとほっとする。 1や2がある日は、誰かも知らない人のことを少しだけ考える。とつぜん、知らせを受けたお家にとって、一夜明けたこの朝は色なんてなにもないだろう。 誰も年の明けためでたい日に、ことし自分がしぬかもしれないなんて思いもしないだろう。 交番の前を通るまでは、当たり前のように一年が過ぎると思っていたのに、い

          おわり、はじまり。

          やらない目標

          年が明けてはや19日。 年末年始に立てた今年の目標は順調ですか。 私は毎年あれこれ考えて、「今年こそは〇〇するぞ!」と意気込んでみるけれど、実際に達成できたことは半分もなかったりする。我ながら情けない。 「毎日〇〇するぞ!」なんていう目標も三日後には忘れていたりするので本当に情けない。 だから今年は「〇〇をしない」という目標をつくった。これまたズボラな考えだけど、行動を起こすより我慢する方が実行しやすいと思ったから。 たとえば毎日写経をやると目標を立てると、筆ペンを持って

          やらない目標

          揚げ餅を育てる

          お正月気分もすっかり落ち着いてきた。 慌ただしい日常が戻りつつある裏で、静かな戦いは始まっている。 もちvsカビだ。 我が家では年の瀬に親戚が集まり餅つきをする。 昔はちょっとしたお祭りのようだった。 祖母世代が熱々のもち米をガーゼに絡んで、臼に入れると、祖父や父親世代の男手がドス、ドスと餅をつく。 母親世代や子どもは、お供え用の鏡餅をつくったり、あんこを丸めて大福をつくるのが恒例だった。 もちつきも楽しかったけれど、一番記憶に残っているのは、父親たちがヒィーヒィ

          揚げ餅を育てる

          存在のルール

          死にたいは帰りたいという気持ちに少し、似ている気がする。 人は生まれた瞬間から死に向かう。 本能的に、形のない場所に帰ろうとするのが、きっと人間なのだ。 つり革につかまりながら、目の前の広告を見て思った。一昨日まで、誰にでも夢と笑顔を振りまいていた人気アイドルの写真が、大きく写っている。その横に赤く塗りつぶされた背景に、黒文字で「自殺」と書かれた週刊誌の広告は、湿っぽい電車の中に妙に馴染んでいた。 朝のラッシュを迎えた電車の中は、少し蒸し暑く窓を開ける人もいた。 誰ひとり

          存在のルール

          死ぬ前に食べたい回転寿司

          ずいぶんとまえに回転寿司屋に行った。 席につくなり妹はメニュー画面をポチポチしながら、ネタを見定める。母は三人分のカップに粉末茶を入れて、お湯を注いでいた。 こんな時期にわざわざ行かなくてもと思っていた わたしは、モヤモヤしながら流れてくるお寿司を眺めていた。 テーブル席はどこもいっぱいだった。 注文したお寿司が流れて来るとそれを手に取り、嬉しそうにお母さんに手渡す子どもの声がする。 エビが食べたいとか、アイスはダメだとか、それぞれのテーブルで小さな交渉が行われている声

          死ぬ前に食べたい回転寿司

          ケズリバナのつくりかた

          ケズリバナは作物の豊かな実りを願い小正月につくられるモノツクリです。 作ったものは神棚や家の門口など様々な場所に飾っていたそうです。 ミズキを削ったもの まだまだ不恰好ですが、簡単に作り方を紹介したいと思います。 材料はニワトコやミズキ、オッカド(ヌルデ)などの、節の少ない木を削って作ります。 右がニワトコで2メートル近くあります。左はミズキ ハナカキと呼ばれるケズリバナ専用の小刀を使い、表面の皮を剥いでいきます。 表面が削り終えたら、木を回しながら少しずつ削って

          ケズリバナのつくりかた

          うまくってなんだ

          知らないうちに10月が終わりそうだ。 知らないのは自分だけだったかな。 ここ最近、うまくいかないなと思うことが多くて、少し苦しい時間を過ごしていた。 落ち込んだり、苛立ったり、消えてしまいたくなったり、うまくいってない自分を許せない気持ちがむくむくうまれて、 うまくいってない自分はどんどん、しぼんでいくようだった。 うまくいってない自分はみじめで、はずかしいと思った。 けれど途中で、うまくってなんだ?と考えるようになった。 自分が理想とする自分になれていないとき

          うまくってなんだ

          秋風

          秋は律儀なヤツで、もうすぐ秋が来ますよーと風に乗って日本中を挨拶に回る。 その挨拶が終わると秋が来る。 今日はそんな風が吹いている。 今年は何もない夏だったなんて言わないで。 夏は秋の挨拶を横目に少し寂しそうにつぶやいた。

          窓辺のガガンボ

          人がまばらの電車の中 窓の外をじっと見ているガガンボがいっぴき 逃してやろうか、どうしよか、 電車は揺れる、ガガンボは動かない 雨上がりの帰り道 窓の外は砂つぶ色に憂鬱な雲 外に出たいな、帰りたいな 点と線で描いたような簡単な体 触ったら足がとれる 手がとれる 些細な力が全てを崩し 風にゆられて、雨に打たれて しまいには 本当に点と線になってしまうのではとハラハラする 窓辺のガガンボ  きみはどうされたい 逃してやろうか、どうしよか 窓辺で死

          窓辺のガガンボ

          少年と犬

          歩道脇に止められた車を囲うように人だかりができていた。誰かの掛け声に合わせて車の片側を持ち上げている最中だった。抱きかかえられながら出てきたのは、手と口から血を出しながらも、吠えることを止めない黒い柴犬だった。 どうゆう訳だか車の下敷きになっていたらしい。救助された柴犬の顔が見えると周囲は一気に安堵に包まれた。 ふと、人だかりの隅に目をやるとひとり、両手で顔を覆って泣く少年がいた。彼は泣きながら「よかった、よかった、、」と何度も繰り返しつぶやいていた。 きっと少年が飼い主

          少年と犬