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私がフランクリンメソッドを始めた理由

前回は、「私がピラティスを始めた理由」を書いた。

「フランクリンメソッド」ご存じですか?
たぶんまだ認知度が低いかも。

フランクリンメソッドとは、エリック・フランクリン氏が創始したメソッド。体をただただ動かす、というものではなく、体の持つ素晴らしい機能をフルに活用できるように、自分の動きをイメージしながら、脳神経と身体のつながりをスムーズにし、よりよく動ける体をつくろう、というものだ。

わたしはフランクリンメソッドエジュケーターになったのだが、「身体は本来どう動くように設計されているか、どうすれば機能的に動けるようになるかを、体現を通じて理解する、画期的なムーブメントの教授法」というのがコースの目的だった。

わたしはstottピラティス養成コースをとったが、養成コースでは最初に解剖の授業を行ったものの、ざっくりであった。当たり前ではあるが、ピラティスインストラクターとして、人間の骨格、筋肉の仕組みを知っておくのは当然だと思われる。
そのための講義であった。

その後、姿勢分析を習った。ピラティスを習いに来たクライアントの立ち姿からその身体の癖を分析し(身体を正面、真横、真後ろから見て、そのクライアントの体の左右差やゆがみ、力みを分析)その立ち姿を理想に近づけるために、その人の緊張している部の筋肉をゆるめ、弱っている筋肉を強くし、正しいバランスを作るためだ。

それから一連のエクササイズの正しい形、エクササイズの目的を習う。エクササイズはただ動くだけではなく、その時の呼吸法や細かい体の角度なども大切。そしてそれを教える立場として、それが自らも出来ないといけない。

最後の試験では、試験官の前で規定時間内にモデルクライアントの姿勢を分析して私見を述べ、姿勢を改善するエクササイズのメニューを立て、そのクライアントにエクササイズを指導しながら実際に動いてもらう。それと筆記試験もある。

わたしは歯科医なので大学で解剖学は勉強したが、はっきり言って、頭頚部より下の体の骨格筋肉に対してはあまり重きをおいて勉強していない。だから再度覚えることも多かった。というより、ほぼほぼ一からのような感じだった。

ずっと自分の体で生きているのに、その身体の構造をこんなに知らないなんて、とショックでもあった。

しかし、ピラティスインストラクター養成コースは、インストラクターを輩出するためのコースであり、全身のことを学ぶと、個人的な疑問がいくつもわいてきたが、それはstottのコースでは解決できないものであったので、もやっとしているところに、たまたまフランクリンメソッドを知った。

ピラティスの個人レッスンをstottピラティスインストラクターのスタジオで一定のコマ数受ける、というのもインストラクター資格をとるためのノルマであったため、たまたま行ったスタジオで腰やお尻の下にソフトボールくらいの大きさのラバーのボールを置き、寝た状態で体を動かしてみたのだが、その後立ってみると、体の感覚がまったく変わっていた。また、そのボールを足の裏に置き、体重をかけてそのボールを上からつぶすような動きなどを行ったあとも、立った時の足裏感覚がまったく違うものになっていて驚いた。その時にそのボールが「フランクリンボール」であり、フランクリンメソッドというものが存在することを知った。

帰宅してネットでフランクリンメソッドのHPを探すと、(それが2020年の12月だったのだが)本当にたまたま、2021年春からオンラインでエジュケーターの養成コースが始まるとのこと。
本来だと東京で対面コースしかなかったらしいが、パンデミックで初めてのオンラインの試みとのことだった。そのため福岡在住でもそのコースを受けることができると判断し、すぐにコースに申し込んだ。

Level1と呼ばれる初めてのコースの受講人数は20人足らずだったが、みな、ピラティスインストラクター、バレエの講師、ダンサー、鍼灸師など、体に基づく仕事をしている人たちだったから、フランクリンメソッドの良さをすでに理解できているようだった。

わたしはフランクリンメソッドを学んだおかげで、体がどんな風に動くように本来できているのか、そして、私たちが長年の癖のせいで、その機能をまちがって使っていること、またはうまく使えていないことが体の故障を招く原因になることが多いこともわかった。

そしてフランクリンメソッドで特徴的なのが「イメジェリー」と呼ばれるものを使いながら体を動かすこと。
これは、解剖学を踏まえたうえで、たとえばわたしが右腕を上にあげるとき、自分の鎖骨、肩甲骨、上腕骨はこんな風にうごいているんだということをビジュアル的に動きと連動してイメージすることだったり、または、自分の腕が軽々と上がるように下から吹く風がわたしの腕を上昇させてくれるイメージだったり、そういう風に想像力も働かせる。

これはダンスや音楽など、芸術的なことをしている人のほうが理解しやすいかもしれない。
たとえば「白鳥がはばたくように腕を動かす」とか「ふんわりとジャンプする」などはイメージである。

そして、「鳥が羽ばたくように腕を動かす」というイメージひとつをとっても、これだけではあいまいだ。
もっと肉付けしてなるべく具体的に考える。
例えば「鳥」が「白鳥」「鷲」「スズメ」などでも羽ばたきはまったく違うから、そうなると動きの質感が変わる。
「水が流れるように」というイメージも、「どんな水がどこでどういう風に流れるのか」とイメージを具体的にすることにより、動きの質を、自分が理想とするものに近づけていく。

これらのイメジェリーはピラティスなどでも応用できるが、人によってイメージの持ち方は違うからそこは注意。同じイメージを共有できるとは限らない。感覚やイメージは個々でかなり違うからだ。
「おせんべいを噛んだときのかりっとした感覚」なども、その人の経験によって感じ方は違う。そもそもおせんべいを噛んだことがない人(外国人など)には通用しないキューイングだ。

しかし、このイメジェリーを使うことは、必ず脳を使う。体を動かすとともに、脳も機能させることが大切なのだ。
ぼんやりスクワットするよりも、今わたしが膝を曲げた時、どこの筋肉が使われているのか、そしてちょっと足裏の感覚を頼りに体重を前にかけたときと後ろにかけたときにはどういう違いが出るか、など、本当に小さなことを意識しながら動くと、自分の体に対する繊細さがめきめき上達すると思う。

小さなことに気付けるようになれば、自分の体の異変に気付きやすくなる。

私たちは自分の体とともにある。その身体の仕組みを知り、もっと良くすることが、よりよく楽しく生活することにつながる。

フランクリンメソッドは今までになかったわたしの新しい考え方の窓を開けてくれたのだ。

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