無職で美容院へ行くと何話したらいいかわからない
初めての美容院へ行くときにとんでもなく緊張する。
きれいになれるしサッパリするので楽しみな反面、日にちが近づいてくると「どうしよう。何を着て何を話そう…」と考えてしまって、考えすぎて行くのが嫌にすらなってくる。
◇
これまで髪の毛は友人美容師に切ってもらっていた。
だから緊張することもなかったし、お互いの近況報告がてら髪も切ってもらえるので楽しみで仕方なかった。
さらに友人の腕は抜群だ。
だけど友人の美容院は自宅から結構遠い。
無職なので時間は存分にあるとしても交通費が2千円近くかかる。
前までは友人に会えるしそのくらい、と思っていたけど無職になってからの2千円は大きい。
あんまりケチケチしたくないけど働かずにギリギリの生活をしているいま、お金のことを考えずに暮らしていたら数日で路上生活の幕開けである。
友人は事情をわかってくれているので
わたしは家の近くに美容院を探すことになった。
◇
そんな経緯があって無職になってから行った美容院が4店ある。
1店目で「よし、ここに通おう!」と決まったらよかったけど、なかなか決まらず完全に美容院難民になってしまった。
なぜ2回目も行かなかったのかというと
1店目→閉店
2店目→美容師さんとの会話が合わなかった
3店目→思ってた仕上がりと違った
本当にざっくり書くとこんな理由。
美容院難民になったことで、美容院へ行くのもだんだん億劫になってきた。
まずおしゃれでイケてるお店に入ること自体勇気がいるし、おしゃれでイケてる美容師さんと話すのも緊張する。
それならダサい美容院に行ったらどうだとも考えたけど、やっぱりそれは嫌だ。
緊張するからってわざわざダサい美容院を選んで行こうとは思えない。
せっかくならおしゃれな髪型にしてもらいたいしきれいになりたい。
そこでおしゃれな美容院を探すわけなんだけど、美容師さんの顔写真とか見ると
「こんなおしゃれで可愛い人となにを話したらいいんだろう…」と思ってしまう。
さらに現在無職ということもあり余計会話に困る。
まず無職を打ち明けるかどうか悩む。
自分からわざわざ、無職なんです!とは言わないので、仕事のことを聞かれたときに言うか言わないかという意味で。
無職って隠してるわけではないけど、説明が結構めんどくさい。
無職だと打ち明けると大体その流れで、
どうして仕事辞めたの?とか、前職はなにしてたの?とかいろいろと聞かれることになる。
これは相手が悪いわけではなくて本当に自然なことなので仕方がない。
自分だって相手から「いま仕事辞めて無職なんだ」と言われたら
「ふーん、そうなんだ。で、今日どうする?」とは返さない。同じように質問すると思う。
そしてこれまでの経歴に加えて現在の状況、
これから何がしたいのか、いつから働くのか、など話すことになり、そうなると結構深い話になってくる。
関係性ができあがっていたらもちろん話すし話したいけど、初対面の相手にそういったことをぜんぶ話すのは非常にエネルギーを使うし正直めんどくさいと感じてしまう。
実は以前美容院で打ち明けたことがある。
アシスタントさんからシャンプー中に「お仕事は何されてるんですか?」と聞かれたので
無職で訓練校に通っていることを伝えた。
すると「訓練校って何ですか?」と聞かれ訓練校について説明。
他にも質問してくれたので訓練校に通うことになった経緯や、何を目指してるのかもお話しした。
シャンプー中の10分間で自分の人生のあれこれを随分話したと思う。
シャンプーが終わり、担当者に髪を切ってもらっているときもやっぱり「今日はお休みですか?」から仕事の話になり、いまは仕事をしてないことや訓練校に通っていることを話した。
美容院の滞在1時間の中であれやこれや深い話をして、帰り道にはなんだかぐったりした。
聞かれることもこたえることも、いやではないけど疲れてしまった。
面接みたいにこれまでの経歴や、訓練校の志望動機などを話して、自分が何者なのかを必死で説明してるようだった。
でもこれは美容師さんが悪いわけではないのもわかってる。
「今日はお仕事お休みですか?」と聞いた相手が無職だとは想定外だろうし、
「いいですね〜、お出かけ日和ですね〜」で終わるはずの会話が全然終わらないし気を遣うしで美容師さんも大変だったはずだ。
だからこそ、こんな話してすみません…って思うし、そう思うくらいなら初対面でいちいち何でもかんでも話さなくていいんじゃないか…と思うようになった。
しかも通わなければまた会うことは滅多にない。
これっきりのお客にここまで気を遣わせるくらいなら言わない方が美容師さんのためでもある。
◇
そんな想いを抱えたまま今日4店目の美容院へ行ってきた。
朝起きて、何を着よう…と悩み、何を話そう、無職って言った方がいいの?でもなあ…とか考えてる間に予約の時間が近づき、バタバタと美容院へ向かった。
担当してくれた美容師さんは、とにかくおしゃれで可愛い。
わたしなんかが指名してすみませんって謝りたくなるくらい可愛かった。
流行に敏感で垢抜けてるキラキラ女子って感じで、こんなにおしゃれで可愛い方を前にしてどうしたらいいのか…なかなか目を合わせられないくらい緊張してた。
だけど穏やかで聞き上手な方だったこともあり、お話ししてるうちに癒されて後半はすっかりリラックスすることができた。
髪型も思った通りにしてくださり、るんるんになってしまう帰り道だった。
次回もこの人にやってほしいなあ。
そう思えたのはこの方が初めてだった。
ようやく美容院探しの旅に終止符を打つことができそうでうれしい。
◇
そして無職を打ち明けたかどうかだけど
会話の流れで仕事のことを聞かれたとき、咄嗟に「オフィス系です」とこたえてしまった。
正直に言えばいいんだけど、あれこれ話すのがやっぱりなんだか億劫だった。
自分の目指す仕事はデザイン、編集、ライター系なので、ざっくりオフィス系といえばオフィス系だけど……
それにしてもカルテ記入のとき職業欄に【無職】という項目もあったのに
【会社員】にマルをつけたのは大嘘である。
次に美容院へ行った際、「訂正します。やっぱり無職なんです」とは言えるわけもないので
「オフィス系の会社員」を装うことになる。
あんまり仕事について掘り下げられないことを願っている。