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なぜ子育てナッジなのか?【子育てナッジ#2】

なぜ子育てに悩む家庭が増えているのか

どうしてこんなに子育てに悩む家庭が増えているのでしょうか?その理由は、インターネットにあります。いや、正確に言えば、インターネットを使えるデバイスの急速な普及です。スマホ、タブレット、パソコン、こういった機器が子どもの生活に入り込み、親も子どももみんなネットの世界に飛び込んでいるのです。

参照:こども家庭庁/こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について(令和5年)

データを見れば一目瞭然です。どんな機器でもインターネットに接続できるようになり、しかも子どもがそれを使い始める年齢がどんどん下がっています。気がつけば、幼稚園児がタブレットで動画を見ている時代になっています。私たちが子どもの頃は、テレビのチャンネルだって親が握っていましたよね。でも今はどうでしょう?子どもがタッチスクリーンで好きな動画を自分で選ぶ時代です。

ここで問題が出てきます。親の出番が減ってしまうのです。なぜなら、子どもたちはインターネットを使って、何でも自分で調べてしまうからです。「お母さん、この恐竜、ジュラ紀じゃなくて白亜紀に生きてたよ」なんて言われた経験、ありませんか?(それはないか)
昔は「どうして空は青いの?」と聞かれるのが親の役目でしたが、今はネットで簡単に答えが出てしまう時代です。

さらに、インターネットに早くから触れることで、私たちが使ってきた育児の方法が、もはや通用しなくなっています。つまり、昔の「お前もそのうちわかるさ」という言い方が、今では通じなくなってきているのです。なぜなら、子どもたちは「分からないこと」をその場でググってしまうんですよ。もはや、親よりもネットが詳しいなんてこともあり得ます。

参照:こども家庭庁/こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について(令和5年)

物はどんどん豊かになり、生活は便利になっているのに、どうして私たちの心は余裕を失ってしまったのでしょう?特に、子育てに関して悩む家庭が増えています。奇しくも、インターネットの普及と比例するように、児童虐待の相談件数も増えているんです。この背景には、さまざまな要因があります。

まず、インターネットを通じて、性的な情報が簡単に手に入る時代になりました。その結果、若くして子どもを産む人たちが増え、準備が整っていない中で親になるケースも少なくありません。親自身が「どう子どもを育てたらいいのかわからない」と感じ、子育てに困難さを覚えることが増えているんです。

それだけではありません。インターネットが普及する一方で、地域での助け合いや人との関係性が希薄になっているのも事実です。かつては、近所の人や親族が子育てに協力してくれたり、子どもを見守ってくれたりする環境がありましたが、今ではそういったサポートを期待できる場面が少なくなっています。核家族化が進み、孤独な子育てをしている親が増えているのです。

さらに、インターネットは現実から逃避する手段としても使われています。子育てがうまくいかず、ストレスを感じるとき、ついついスマホやPCに手を伸ばし、ネットの世界に没頭してしまうこともありますよね。これが良くないのは、ネット上で他の人の生活が「キラキラ」して見えることです。SNSなどで他の家庭の楽しそうな姿を目にするたびに、「どうしてうちの子はこんなに言うことを聞かないの?」「どうして私はこんなにうまくいかないの?」と感じてしまい、自己嫌悪に陥ることがあるんです。これがさらにストレスを溜める原因になっているんですね。

結局のところ、時代が変わったんです。昭和の時代とは違います。昔は、家族や地域全体で子どもを育てるという感覚がありましたが、今はそれぞれが個別に、しかも膨大な情報に囲まれた中で子育てをしています。だからこそ、今の時代に合った新しいサポートの形やコミュニケーションの取り方が求められているのかもしれません。

参照:こども家庭庁/こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について(令和5年)

最後にもう一つ、不登校の子どもの数が、年々増えているということです。これは、親にとっても大きな心配の種ですよね。「なぜ学校に行かないのか?」「どうしたらいいのか?」と悩み、何が正解か分からないまま、孤独に不安を抱える親も多いのではないでしょうか。

この不登校の増加も、時代の変化を映し出しています。昭和の時代には、学校に行くことが「当たり前」であり、子どもたちもそのルールに従うのが当然でした。しかし、今の時代は社会全体が多様化し、学校以外にもさまざまな価値観や選択肢が広がっています。そういった背景の中で、子どもたちは自分なりの居場所や学び方を模索するようになり、学校という一つの選択肢だけに縛られなくなっているのです。

それに加えて、現代の子どもたちは以前よりも精神的に複雑な悩みやストレスを抱えることが多くなっています。学校での人間関係や勉強に加えて、将来への不安やプレッシャーを感じることも増えています。昭和の時代には、周囲の大人たちが「それは普通のことだ」「そのうち慣れるよ」と言っていたようなことでも、今の子どもたちは敏感に反応し、自分なりの行動を選ぶようになっています。

もちろん、不登校が増えることが一概に悪いこととは言えません。学校以外にも子どもが学べる場所や、安心して過ごせる環境を見つけられるのなら、それは良いことかもしれません。
ただですね。親としては、どう向き合い、どうサポートすればいいのか悩むんです。これを無責任に「大丈夫大丈夫」「フリースクールあるでしょ」という言葉だけで片付けるのは違うと思うわけです。

なぜ子育てナッジなのか?

「昭和の子育てはよかった」という声を聞くことがありますが、それは少し違うと私は考えています。昭和の時代は、体罰が当たり前、メディアでは女性へのセクハラが笑いになり、飲酒運転さえも「仕方ない」と見過ごされていた時代です。何度も言いますが、その昭和と同じ尺度で居続けようとすることがナンセンスです。令和の子育てには、今の時代に合った新しいアプローチが必要だと考えます。

そこで登場するのが『子育てナッジ』です。ナッジとは「軽く背中を押す」という意味。強制や叱責ではなく、子どもが自然に成長できるように、親がちょっとした工夫をする。それだけで、子どもが自発的に行動し、親も無理なく育児ができるようになります。この本では、最新の行動科学に基づき、親も子どももストレスなく、より良い日々を送るための方法をお伝えしていきます。

また、『子育てナッジ』は「叱らない子育て」として誤解されがちですが、甘やかして放任するわけではありません。叱らないというのは、子どもを自由にさせるだけではなく、親が適切にサポートし、導くための手法です。環境を整え、明確な評価基準を設け、適切なフィードバックを与えることで、子どもは自らの力で考え、行動することを学んでいきます。

不登校だ、インターネットだ、子育てナッジだ、情報は山ほどあって、なんだかもう頭がいっぱいかもしれません。

でも、ここで一つ言えるのは、「大丈夫」です。育児の方法に正解なんて一つもないんです。なぜなら、子どもも親も、みんな違うから。もちろん、今は昔と違う時代です。昭和の頃と同じようにはいかないこともたくさんあります。でも、それって悪いことではなくて、むしろ新しい可能性が広がっているってことなんですよね。

この連載が、少しでも「子育てってこんなに肩の力を抜いていいんだ」と思ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。次の記事では、今お話しした「ナッジ」って一体何なのかについて解説していきます。

肩の力を抜いて、次の記事でお待ちしています。

今日はここまで。ありがとうございました。


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