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#それでもスポーツで生きていく・#11
~各論【第1章】
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
こんにちは、スポーツエッセイスト・岡田浩志です。
小休止を経まして、また連載を再開します。今回は、各論【第1章】と名付けまして、連載第6号・本論【第1章】のつづきを書き綴って参ります。
≪ 自立のための5つの行動原則 ≫
1. 存在すること自体に価値を認める
(Being Management)
2. 本心からやりたいことだけをする
(気の進まないことはしない)
3. 過去と決別して今ここに集中する
(今できることに専念する)
4. ダメなことを理由に頑張らない
(高すぎる理想を掲げない)
5. 内面の想いと表出行動を一致させる
(インテグリティを持つ)
これから当面は、上記5つの原則のうち、1番目の『存在すること自体に価値を認める』というテーマを掘り下げていくことになります。
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
連載6号の投稿の最後で、「スポーツ界に存在する様々な組織やキーパーソンの信念や理念を、追いかけていきます。実際に取材も行う予定ですし、定点でスポーツ界の組織や人に密着していくことも考えています。」と書きました。
スポーツの『存在目的』(Why) ≒「存在そのもの」(Being) に耳を傾ける、というのは、具体的には、スポーツに関わる人の信念(Belief)や理念について話を伺う、と捉えて頂けたらよいかと思います。
そして、この「存在目的に耳を傾ける」という言葉は、2018年1月に日本語版が発行された『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(フレデリック・ラルー著・英治出版) の第6章にインスパイアされたものです。
タイトルだけを拝借するつもりでなく、こちらの章では、「耳の傾け方」についても丁寧に触れられています。そのエッセンスについて、僕なりの理解ですが、ここに纏めていきたい、と思います。
ミッション・ステートメントを持たない
『ティール組織』第6章では、ビュートゾルフというオランダの非営利在宅ケア組織について、ケーススタディの話が書かれています。その組織運営について、特徴的な話が以下の文章です。
興味深いことに、ビュートゾルフはミッション・ステートメントという形で会社の存在目的を表現したことがない。ヨス・デ・ブロックは、いつも仲間たちと会社の目的について対話している。しかし、常に口に出して表現することで存在目的は生き生きとするし、(書かないからこそ) それが拘束力にならずに済んでいることに彼らは気がついている。(中略) 書かないことで目的は進化する。進化し続ける。
『ティール組織』第II部・第6章 存在目的に耳を傾ける | p.337
本当の「存在目的」というのは、ミッション・ステートメントという文章一行で表現され、それが鉄の掟として機能するようなものではない、ということを述べているのだと理解します。
つまり、僕がこれから、スポーツ界の『存在目的』に耳を傾ける上でも、明らかに着地して欲しいものを、あらかじめ想定して、聴きにいくこと、は断じて慎まなければならないと感じたのでした。
答えはこれから探すもの、ということです。こうした理解からも僕はこれからの作業を『旅』と名付けました。
イノベーションは常に組織の末端で起こる
自主経営組織では、変化はそれを必要と感じている人が起点となって起こる。こうした現象は、まさに自然が過去数百万年にわたって機能してきた方法と同じである。イノベーションは、組織の中心から計画に従って起こるのではなく、常に組織の末端で起こる。しかも組織内の有機体環境変化を感じ取り、適切な反応を見つける実験をしたときに始まる。
『ティール組織』第II部・第6章 存在目的に耳を傾ける | p.341
組織の『存在目的』、つまり理念を聴きに行くのならば、企業や組織のトップに話を伺いにいくのが、その常套手段と考えてよいでしょう。しかし『ティール組織』流の考え方は、それとは真っ向から対立するものなのです。
「イノベーションは、組織の中心から計画に従っておこるのではなく」という一文、当連載6号にも取り上げたサイモン・シネック氏のゴールデンサークル理論にも似たようなくだりがあります。
彼はアメリカの市民権運動で著名な、1963年のキング牧師の演説を引き合いに出し、このような解説をしています。
キング牧師の話に集まった25万人の人々。これらキング牧師のために集まった人は、恐らくゼロです。みな自分自身のために集まったのですから。彼ら自身がアメリカのために信ずること、そのために8月のワシントン炎天下に集まったのです。(中略) その中で彼は「私には夢がある」と演説したのです。「私には計画があります」という演説ではありません。
イノベーションを起こしたのは、キング牧師一人の計画ではない、25万人の人々にあった信念なのだ、ということ。
これからスポーツ界の『存在目的』に耳を傾ける旅をする上で、話を聴きに行くのがトップである必要性は必ずしもない、と私は確信しています。
正しいチャンスは外部からの働きかけ
自分の使命に従うと、人生が適切なタイミングで正しい機会をもたらしてくれるような気がしてくるーそのような経験をした人は多い。組織レベルでも同じことが言えるようだ。企業が自社の存在目的を明確にしていると、外の世界の方から会社のドアをノックしてチャンスを運んでくる。
『ティール組織』第II部・第6章 存在目的に耳を傾ける | p.346
極端なことを言えば、この「スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅」。#それでもスポーツで生きていく、という主題だけで、どこまで旅ができるか、というチャレンジなのです。僕のなかに一切の答えや、計画を持たない旅ということ。
どこに答えへのドアがあるかも想定しないし、僕の思惑と全然違うところに着地するかもしれない。
もしかしたら、繰り返し上げている5つの行動原則が、どこかで壊れる可能性もあるかもしれない。そんなことも起こったら、それもまた楽しい発見なのではないか、と。
『存在目的』に耳を傾ける旅、3つのエッセンス
1. ミッション・ステートメントを持たない
( 対話から存在目的は進化する )
2. イノベーションは常に組織の末端で起こる
( 変化を必要と感じている人が起点となる )
3. 正しいチャンスは外部からの働きかけ
( 自分の使命に従うこと、明確にすること )
以上、シンプルな3つのエッセンスを意識しながら、いざ旅に出ます。
まずは今日8月10日、自らの地元・豊田スタジアムからスタートし、明日11日は、岐阜・長良川競技場に出掛けてきます。
スポーツエッセイスト
岡田浩志
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