積極的傾聴
ロジャーズでいう3原則
1.共感的理解
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること。
2.無条件の肯定的関心
相手の話を善悪の評価や好き嫌いの評価をせずに聴くこと。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景を肯定的な関心を持って聴くこと。それによって、話し手は安心して話ができる。
3.自己一致
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認すること。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。
https://kokoro.mhlw.go.jp/listen/listen001/
これを頭の中で理解した気になり、クライエントの話を聞いていたつもりだが、ある日なにも理解が出来ていないと思わされる出来事があった。
まだ私が精神医学や心理学へ転向をしてすぐのころ、今思えばこっぱずかしくなるような間違いを犯したことがある。
当時は精神疾患について本を読み漁り講義を受け、その入り口に立ったばかりだったのだが、知らないことがどんどん自分の中に入ってくる感覚が楽しくて、文字通り「知った気になって」見当違いなアドバイスなどをしていた。
そのクライエントはよく体の痛みを訴えていた。
心身症との診断があり、実際に精神科、整形外科、内科、婦人科などの複数の診療科にかかり文字通り山ほどの痛み止めを内服していたが、傷みは一向に改善せずカウンセリングの席ではひたすら痛みと怠さ自分の不幸さやだれも痛みをわかってくれないことを訴え続けていた。
私は血液データや画像を見て「わかったつもり」になり「聞いた気になり」その痛みに対しての対処法を必死に考えていた。例えば温罨法だとかストレッチだとか。
しかし全く改善しないどころか、こちらが考えた方法を試そうともしてくれない。
困った私は何度かのセッションを行ったあとで、SVと話す機会を持ち相談した。私の手には負えないと感じてリファーを出すべきなのかを悩んだのだ。
SVは「クライエントの話のなにを聞いているの?あなたはカウンセリングをしているのではないの?」と一蹴。
なによ!!と腹も立てたが、同時に頭をスパーンとはたかれた気にもなった。
「あ。私は聞いてないな。」と感じたのだ。
これまでの看護師の経験なのか私の頭でっかちのせいなのか、データや画像で原因の見えない疾患=気のせい。みたいな思い込みが確実にあり、彼女の痛みの程度や苦しみや不安や悩みをそっちのけでただ目の前の「痛い」という言葉しか見てなかったのだ。
理解されないと感じた人がアドバイスを実行するはずもなく、傷みの起こる状況を説明してくれるわけもなく見当違いな独りよがりのカウンセリングもどきをしていたということに気が付いた。
このクライエントとの信頼関係は築くことが出来ず、結局他の方へ変更をしたわけだが、この出来事は私の「積極的傾聴」の姿勢とカウンセリングへの意識を大きく変えた出来事となった。
先日まったくもって自分ではうまくいっていないと感じているクライアントに「うまくいっていないかもしれません。それでも先生と話すことを続けたいです」と言われた。
心の問題に寄り添わせてもらうとき、正解はわからない。よくなったかと思えば一瞬で悪くなり不安定な水の上を歩いている感覚にもなる。
自分の言葉がどう影響を与えるのか?影響なんか与えないのかもわからないが、話したいと言ってくれるならもう少し続けてみようと思えた瞬間だった。