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ちょっと長めの図書紹介⑫

「ウェルビーイング追求時代における
 教師の仕事」──という
サブタイトルを新たに付加し、
生まれ変わった四訂版である。

教育制度や経営を中心に扱った
教職課程(教育行政論)のテキストとして
2015(平成27)年に初版
2017(平成29)年に新訂版、
2020(令和02)年に三訂版と続き、
2023(令和05)年3月に四訂版が刊行された。

各章立ては、
教育基本法の条文と
リンクしているため、
「日本国憲法の精神にのっとり、
 我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、
 その振興を図る」ための
重要なテキストとしてわかりやすい構成である。

しかし、
「家庭教育」「政治教育」「宗教教育」
(第10、14、15条)への言及はない。
教育行政論の範囲外(?)という話や、
別の領域で扱うべき内容(?)という話は
解説することができない素人だが、
その感覚からいえば、
ぜひコンプリートしてほしかった(笑)。
それでも
「私立学校」(第8条)は
制度・経営の射程内に入れてもよい
雰囲気はあるだろう。

執筆は、
編著者2名と
分担者7名の合計9名で
11章をそれぞれ担当している。
分担こそしているが、
本文の構成(小見出し)は縛りを設け、
【しくみと法律】【変遷】【課題】
そして【考えてみよう】という演習の
4項目でまとめられているため、
統一感のある流れを感じることができ、
学習者視点として
理解しやすい構造となっている。

また、
理解しやすいといえば
身近な問題から
教育行政を学べる構成になっている部分も多く
大学の授業テキスト(学生)だけでなく、
通信教育系のテキスト(社会人も含め)や
独学で教養を高めようとするひとなどにも
おススメできるだろう。

たとえば──
第5章 教職員では、
【しくみと法律】の部分で
長時間労働の問題における
「変形労働時間制」や「教職調整額」に
触れていたり(p.75)、
第9章 学校の経営では、
【変遷】部分で
地域に開かれた学校から
地域とともにある学校への変化、
【課題】として
「ウェルビーイングの土台」(p.122)
としての学校づくりにも触れられていたり、
第4章 地方教育行政でも
【考えてみよう】において
「新型コロナウィルス感染症の拡大により、
 公立学校」への影響を調べる(p.66)
などがある。

「ウェルビーイング」──
単語そのものの意味としては〈幸福〉だが、
「国際機関である経済協力開発機構は、
 個人や社会がともに多様な領域において
 多元的に満たされる状態」(p.3)とし、
世界的に推奨され、
それがグローバルスタンダードとも
いえる時代になっている。
ウェルビーイングの追求時代において
教師が学ぶべき領域の基盤と
その世界観的アップデート機能までが
盛り込まれている一冊である。

参考資料として巻末に
大日本帝国憲法と
教育基本法(旧法)の条文が掲載され、
ともに収録されている日本国憲法と
教育基本法(現行法)との
比較が容易にでき、たいへん便利である。

また、
地方教育行政の組織及び運営に関する法律
学校教育法、いじめ防止対策推進法も収録──
どれもググればヒットするが、
条文を参照しながら本文を読みたいとき
巻末資料に指を挿みながら
読み進めるひとは、多いだろう。

教育課程の教科書ということもあり、
欲をいえば法律だけではなく
実務に直結する政令や省令といった
命令の一部も用意されていると
より使いやすい教科書に
なるのではないだろうか。

いずれにしても
[四訂版]まで重ねているテキストであり、
使いやすさはお墨付きであろう。
教育行政論の教科書選定に悩んだら、
迷わず選ぼう──「新・教育の制度と経営」

編集担当・若染雄太さま、
ご恵贈ありがとうございました。

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