うしなったもの。

息子が学校を休みたい、行きたくないと言ったとき、私や妻が彼になにを言ってきたか。

それは、不登校になりそうな子にとっては全く理解のない言葉ばかりでした。

とくに2学期になり、足の痛みから行きしぶりを見せはじめた頃。

「足が痛くて歩けへん」

「なに言ってんの。お医者さんは歩くのは大丈夫って言ってたやろ」

「でもほんとに痛いねん」

「じゃあバスに乗ってでもええから行きや」

「。。。」

たしかに整形外科の先生からは、歩くぐらいのことは問題ないと言われていました。それよりも休むことで授業が遅れてしまうことを心配されました。

また、なにか学校で嫌なことや行きにくい理由がある?とも聞かれました。

息子の返事はノーでした。

それで、本来は徒歩通学しか認められていないところをバス通学させてもらえるよう頼んで、しばらくはバスで通うようになりました。

その頃はまだ、行ってしまえばどうということはなく、友人と仲良く帰ってきたりもしていましたので、一時の気の迷いだろうと考えました。

ところが、足の痛みがなくなってから、学校へ行くことをますますしぶるようになります。

具合がわるいのか?→(首を横に振る)

頭いたいのか?頭痛薬のんだか?お腹は?どこも痛くない?足は?

友達となにかあったのか?クラスでいじめられてるのか?

つい、質問ぜめにしてしまいますが、いずれの答えもノー。

だったら何で行きたくないんだ。勉強も遅れるし部活もあるだろう。宿題は?提出物やってるのか?休んだら美術や技術の制作、音楽の実技もできないし成績にも響くしテストはどうするんだ??

これらの言葉を、立て続けに息子へ浴びせてしまっていました。

これが正しい説得だと思っていたのです。いまはそれが完全な悪手であるとわかっていますが、当時はまったく理解していませんでした。

「学校へ行く理由がわからない」

そう言われたときも、中学生は義務教育なんだ。いま勉強しておくことが将来のためになるんだ。警察になりたいんじゃなかったのか。そのために今はわからなくても勉強しなきゃならない。

こんなことを言っても、納得するはずありませんよね。

やがて、登校の時間になっても玄関から動けず、頭をかかえて座り込むということが増えました。

それでも、行きなさい早く遅刻するでしょどうするの行かないつもりなのみんな普通に行ってるのにあんたはなんで行かないの一体なにがイヤなの

夫婦で息子ひとりにこんなことを言っていたのです。

頭をかかえる息子が答えられるはずもありません。

「授業がわからない」

息子が落ち着いているときに、ポツリと言ってきました。

そのために、授業を受けていることが苦痛なのだと。

担任の先生に相談しました。担任は数学担当。

これまでも注意して見てくださっていたようですが、今後はもっと声掛けなどして、先生のほうからわからないところはないか?と質問しやすい環境を整えてくださるということで、理解度が上がれば行きにくさはなくなっていくだろうという判断でした。私たちもそう考えました。

それと同時期に、市が開催する学習サポートというものに参加させました。

これは市が塾講師を派遣し、公民館などで無料の講義をうけられるというもの。

塾へは行かせたいが、まだどの塾が良いか決めかねていたので、これは有り難いことでしたし、息子も機嫌よく通ってくれました。

しかし、それでも授業の内容はさっぱりわからないと言います。

わかるところも少しはあるけれど、わからないところのほうが多い。

わからなければ、わかるまで質問すればいいと言うと、なんども同じことを聞くのは先生に申し訳ない。だから、わからないけどわかったと言ってしまう。

こんな自分は、なにをやっても無駄だーー

10月~11月ころでした。

自己否定のような言葉を口にするようになりました。

完全に自分に自信をうしなっていたのです。

これまで、もっと違う態度で接していれば、こうはならなかったのでしょうか。

今となってはわかりません。

私は息子が自信を取り戻せるように、なにができるかを考えはじめました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

次回に続きます。

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