傍目八目
ゲームが得意ではない。「嫌い」とか「よく思っていない」という意味ではなく、純粋に上手くできない。
僕の家は何かを制限されるという事はあまりなかった。本もマンガもアニメも、特に咎められる事はなかった。ただ、僕の小学校入学を待たずにテレビが故障してから、新しいテレビは現れず同級生の会話について行く事ができなかった。
確かDVD-もといVHSを再生する機器はあったが、当時はそれをインターネットに接続するなどという発想はなく、仮にそういった機種があったとしてもネットフリックスもTVerもないので意味はなかった。
その内、そのモニターはいつの間にか使われる事もなくなり、とうとう家に据え置きのゲーム機が現れることはなかった。
DSだけは持っていた。しかしそれは専らパワプロ専用機と化していて、ひたすらにサクセスをやり込むか、ペナントを進めるかしかなかった。
友達も野球好きが多く、皆で遊ぶといえばパワプロ一択だったし、一部にはPSPなるものを手にしている奴らもいたが、僕はその輪には入れず寂しく白球を追いかけていた。
だから、実を言うとスマブラを初めてやったのも高校生くらいだった。
だから、上手くできないのだ。家にゲームがある生活を経験していないせいで、ゲームをやる習慣がない。すると一向に勝てない。勝てないと嫌になる。ますますやる気が起きない。以下無限ループである。
「悔しい」という気持ちがない訳ではない。しかし、勝てないのだからどうしようもない。
友達はみんな優しくて、手加減をしてくれたりもするが、そのハンデをおして勝てない。4人でやっていて、運良く最後の2人になれたとしても一対一では歯が立たない。
そして段々彼らの優しさも「体育の授業の時に手加減してくれる部活勢」みたいに見えてきて自分が居た堪れなくなってしまうのだ。
じゃあ、別のゲームならどうなんだ、という話になる。
これが厄介なことに、僕はスマブラに限らず多種多様なゲームが下手である。
代表的なものがオセロだ。数手先を読む力が全くない。これはきっと現実でもそうだからだ。
そしてそれが最も必要とされるゲームの一つ、将棋に関しては本当に手も足も出ないのだ。
将棋自体は好きだ。解説を聞くと面白いし、駒の動かし方くらいはわかる。しかし自分では全く上手くいかない。
一手詰めの詰将棋をやってみても上手くいかない。かといって一局やりきる集中力もない。悔しいけれど、どうにもならないのだ。
上手くなろうとゲームに対して少しだけ前向きになったのに、「なんだ、やっぱりダメじゃないか」と心の中の自分が笑った。
ふと、そんな話を友達にした。
「最近、囲碁やってんすよ」
決まった。次にやるのは囲碁だ。