秋のヒ
段々と秋めいてきたな、などと考えていたら一気に気温が下がって慌てて長袖を出してきた。
四季がグラデーションで変わると思っていたのは気のせいだったらしい。まるで階段を降りるかのように、夏の段から秋の段へとストンと落ちた。
この間まで張り切っていた太陽が急に臍を曲げたかのように地上はひんやりとしている。本当ならば「秋の匂いだ」と言えばいいのだろうけれど、頭に思い浮かぶのは母校の行事。
ちょうどこの頃が準備期間で、特別な時間割になる。秋晴れの下で練習する日々はいつの間にか僕の人生に染み付いていた。
始まった頃にはまだまだ長いと思っていた1日が、気付けば10月の本番の頃にはあっという間に暮れてしまう。
秋深まると言うにはまだ早すぎて、かと言って夏の終わりと形容するには少しひんやりとしすぎている、そんな秋の日々だった。
嫌でも思い出す。日に日に早まる日の入り。正門を抜ける頃にはもう殆ど日は暮れ切っていて、外灯がぼんやりとあたりを照らすだけ。
制服は冬服に変わり、羽織ったブレザーの下にカーディガンを着るかどうか毎朝悩んでいる。
冬になって、冷え切ってしまえばもうどうでもいいのだけれど、夏にまだ未練があるままではどうにも釈然としない。
近頃はどうにも秋が苦手だ。かと言って、真夏の暑さにも耐えきれない。大人になってようやく春が心地いいと思えてきたのに、どうにも上手くいかないなとため息をつく。
純粋に季節の変わり目が苦手なのか?とも思ったりする。もとい、気温が下がることに対して体がついていかないのかもしれない。
吐く息はまだ見えず、汗を拭う夜もある。ずっと続けばいいと思っていた夏も、やはり終わりが来る。
「今日が夏の終わりです。明日から秋です」とは誰も教えてくれない。きっと決めるのは僕で、僕が夏を終わらせなくてはいけない。
夜、外に出てふと「涼しいや」と感じた。今日が、その日なのかもしれないと、秋の陽が沈んだ街を1人歩きながら思った。