#37 太鼓のひびき
開山二日目午後2時頃になると、それぞれの目的を達成した人・断念した人登山客が次々と下山して来た。鳥居をくぐり踵を返して一礼をしてバス停方向に行く人、駐車場方向へ向かう人の後に、5人ほどのグループがやってきた。腰には直径50cmほどの太鼓のようなものを左腰にぶら下げている。そのうちの一人が鳥居に向かって拝礼をして、「ドドド―ン、ドドドド・・・・」と太鼓を打ち鳴らし始めた。登山者・観光客の姿も途切れていたので演奏を聞き入ることにした。心地よいひびきだ。演奏は1分くらいで終わり、一礼をすると仲間の待つベンチへと向かった。
わざわざ太鼓をもって登山するとは?と思い質問してみた。「山頂まで行かれたのですか?」 「はい、登りました」 「その太鼓は?」 と質問すると、待ってましたとばかりに「コロナウイルスの早期退散と登山者の安全祈願の願いを込めて、山頂と混んでいない山小屋で叩いてきました」と。よく見ると和太鼓ではない。「日本の太鼓ではないですね?」 「はい、日本の和太鼓ではありません。私の生まれた国の太鼓です。伝統あるこの太鼓が好きなんです」と流暢な日本語で説明してくれた。「なるほど、伝統ある太鼓と言われましたが、どのくらい昔からあるのでしょう?」 「千年以上の伝統があります」と胸を張って答えてくれた。「千年以上ですか、すごい!。感服しました。ありがとうございました」と礼を述べテントへ向かった。
「太古(太鼓)の昔から・・・」じゃなかったんだ。