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大人婚
新聞の社会欄に大人婚という記事を見つけた。
お互いが培ってきたものを尊重し合いながら、相手に求めすぎない結婚の形が増えている、みたいな内容だったと思う。
その時、私は40代の最後の年で独身だった。
その年齢まで、どうしても結婚をしたいと思えずにいた。
なぜ みんな結婚できるんだろう
父がとても多忙な家庭に育った。
家族の行事を家族みんなでやった思い出が、ほぼない。
両親が笑顔で会話しているところをほとんど見なかった。
母の姿が幸せそうに見えなかった。
私が20代の頃は、結婚をクリスマスケーキに例えて、25歳を過ぎるともらいてなくなるよ、と言われる時代だった。
周りは20代半ばで結婚していった。
友達がみんな結婚しても、自分の結婚は全くイメージできなかった。
母が幸せじゃないのに、私が幸せになっちゃいけないって思いがあったのかもしれない。
本音を出せない家庭で育ったから、近い関係の家族を作るのがこわかったのかもしれない。
20代後半になって、母から結婚を勧められても、どうしてもその気にならなかった。
「今はいいけれど、将来泣いても助けてあげられないよ」
と言われた。
20代の最後の年に転職をした。
長く働ける仕事に就こうと思った。
男女雇用機会均等法が制定されて数年経っていて、結婚していなくても色々言われない時代に変わりつつあった。
30代半ばに家から離れた地域に転職をして、一人暮らしを始めた。
母から勧められて、ローンを組んで中古の一軒家を購入した。
今まで両親の不仲を気にして暮らしてきたから、一人になれてほっとした。
30〜40代は仕事に趣味に没頭していた。
充実していたから、結婚のことを考えなくても済んでいた。
職場に独身の人が多かったのも救われていた。
長く働けば、責任も重くなっていく。
40代後半、とても忙しい立場になった。
自分の時間が全くなくなった。
このままじゃわたしの人生、仕事しかなくなる、と思った。
そんな時に目にしたのが、冒頭の新聞記事。
50代を目前にしていた私は、
「50代で結婚しなければ、きっと一生結婚しないだろう。
思い切って婚活してみよう」
という気に、突然なった。
自分を好きになろう
大手結婚相談所の門を叩くと、アドバイザーの女性から
「あなたなら必ず結婚できますから、大丈夫」
と笑顔で言われた。
自信満々に言われた言葉に圧倒されたけれど
「せっかくの機会だから、楽しんで活動してみよう」
なぜか急に、すごく前向きになった。
婚活には出会いのバリエーションが様々あった。
いろいろな出会いを経験した。
そしてわかったのは「自分を好きにならないと結婚できない」ということ。
自信がなくて、人からの評価を気にしがちだった自分。
深く自分に向き合うとつらいから、思考停止していた自分。
いろんな自分が見えてきた。
でも、だからここまで一人でいられたのかもしれない。
夫との出会い
結婚紹介所は、自分の希望を出して、それに合った人が紹介され、写真や経歴を確認して会うのが普通だった。
けれど、活動して色々な人に会ううちに、そんなことに意味のなさを感じて、希望をどんどん減らしていった。
活動を始めて1年、趣味のテニスつながりで紹介されたのが今の夫。
私は趣味にテニスと書いていたが、実は何回も挫折していた。
うまく打てなくて、「すみませ〜ん」とあやまってばかりだったし、勝負するが苦手だった。
でも、数年経つとまた始めたくなるのがテニスだった。
テニスが趣味の彼は、バツイチで独立した子供が3人。
住んでいる地域も離れていた。
最初に会った時のあふれんばかりの笑顔と、一生懸命話してくれる姿勢に、最初から惹かれた。
つきあいが始まり、テニススクールに一緒に入り、テニスってコミュニケーションスポーツなんだ、と目覚め、ちょっとしたコツがわかると打ち合いが楽しくなった。
いつの間にか、結婚することが自然なこととして自分の中に芽生え、51歳で結婚した。
両親のこと
結婚して2年後、母が、癌の手術をしたことをきっかけに、アルツハイマー型認知症になった。
父は高齢になっていたし、実家前の道路拡張で、建て替えが始まっていた。
身の回りのことができなくなっていた母を見て、私は仕事を辞めて介護に専念することにした。
仕事に限界も感じていて、辞めてリセットしたかった、という本音もあった。
久しぶりに実家に戻ってみると、父は昔とは別人のようになっていた。
無口で、私とは年に数回しか話すことがなかった人が、笑顔でよく話すようになっていた。
そして、母の面倒をよく見て、母も父に頼るようになっていた。
私は、家庭を顧みない父をそれまで恨む気持ちがあったが、両親と一緒の時間を過ごすうちに、その気持ちがだんだん溶けていった。
子供が見ていた親の姿は一面で、子供にはわからない親の事情がいろいろあっただろう。
その時はつらかったけれど、その経験があったから、今の自分がいる。
大人婚でよかった
両親を見送り、今は夫と一緒に田舎暮らしをしている。
社交的で熱血な昭和男子の夫と私は意見が合わないことも多い。
喧嘩をすることも度々あるが、意見をぶつけられる相手がいるのはしあわせなことだと思う。
遅い結婚だったけれど、大人になってから結婚してよかった。