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中小企業向け「小さく始める営業DX」を支援する|株式会社SIMPLATT 【会員インタビュー】

いま、国を挙げて推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)。経済産業省による定義は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。企業の発展のためには避けて通れません。しかし、デジタルに強い人材が社内にいる会社ばかりではないでしょう。そんな会社に伴走してくれるのが、「株式会社SIMPLATT(シムプラッタ)」。2020年8月、札幌に誕生したITソリューション企業です。北海道への思いと会社のいまとこれからについて、代表取締役の藤野友希さんにお聞きしました。


営業DXで企業と顧客の良好な関係性を築く

-主な事業についてお聞かせください。

株式会社SIMPLATTの主力事業は、営業DXを中心としたCustomer Relationship Management (CRM)事業です。適切なデジタルツールを活用し、企業と顧客の関係性を良好に保ちながら、売上・利益の向上とコストの削減を実現しています。

具体的には、「Salesforce(セールスフォース)」や「HubSpot(ハブスポット)」といったプラットフォームの導入からオペレーションまでを支援しています。要件定義などの上流設計から手がけており、まず、企業様のニーズに合わせたシステムのカスタマイズを行い、次に、デジタル化した営業プロセスにデータクレンジング(データベースの最適化)を加え、さらに、メールマーケティングやインサイドセールス、ときにはテレマーケティングを組み込むことで、効率的な営業DXを実現しています。設計段階のプロジェクトマネジメント(PM)を起点に、オペレーション運用で伴走しながら浮き彫りになる課題に対応し、より洗練された仕組みへと循環させ、本当に必要なシステムへとブラッシュアップしていくのが私たち役割です。

また、オペレーションを組み込むことでBPaaS(Business Process as a Service)のような形で、目的に合わせて業務対応を行っております。企業様は、リソースをコア業務に集中させることができるとともに、強化したいセクションを柔軟に補完することが可能です。

-どのような業界のお仕事が多いのでしょうか。

特定の業界が多いという傾向はなく、さまざまな業種の企業様と取引があります。例えば、マスメディア業界では、業界紙を発行している新聞社のCRM設計やマーケティング支援、インサイドセールスを通し、広告や展示会など多岐にわたる営業プロセス設計や集客を手がけています。

また、大手学習塾では、「集客の強化と差別化」というニーズから、マーケティングの運用設計とインサイドセールスの支援を開始しました。ところで、学習塾の集客は独特で、入塾するのは子どもですが、保護者の意向も大きく関わります。そこをよく理解したうえで、教室ごとの特色も考慮しながら、営業プロセスの設計からオペレーションまでをお任せいただいています。

▲SIMPLATT代表取締役 藤野友希さん

資格取得と実務経験で、スタッフの市場価値を上げる

-SIMPLATTは、ひとことで説明すると、どんな会社ですか。

僕を含めて、いかにも役員、いかにも上司という人はいなくて、わりとフラットな会社だと思います。スタッフの年齢が30代前半から50代前半が多いというのも大きいのかも。

社名のSIMPLATTは、simulation(シミュレーション、模擬実験)のSIMと、スウェーデン語で「平」を意味するPLATTを組み合わせたものです。フラットなところから、スタッフみんなが平等にチャンスを得て、新しい価値を創造していくという思いを込めました。都市経営シミュレーションゲーム「シムシティ」で、街ができていくイメージに近いかもしれません。主役は住民のシム、もといわが社のスタッフたちで、みんなでいろいろと話し合いながら、仕事に取り組んでいます。

▲ミーティング中の藤野さんとスタッフのみなさん。大きな窓の向こうには北海道大学キャンパスが広がり、オフィス環境も良い(写真:SIMPLATT)

あと、スタッフのことをいちばんに考える会社でありたいです。彼らの市場価値を上げ、どこでも活躍できる人材になってもらうことが、僕の仕事だと思っています。そこで、資格取得を支援し、会社の指定している資格を取ると資格手当が付く制度を設けています。スタッフたちには、自分の能力を高めるために、易きに流れずに努力する力を身につけてほしいのです。努力する人の周りには努力する人が集まります。その努力を会社としても表現していければ、新しい仲間を集めるとき、本気で成長したいという思いのある人が来てくれるのではないかと期待もしています。

-どのような資格の取得を義務づけているのですか。

取得するべき資格は、所属グループと担当業務ごとに設定しています。例えば、弊社はSalesforce正式認定パートナーです。なので、Salesforce導入のコンサルティングを担当するためには、「認定アドミニストレーター」「認定上級アドミニストレーター」「認定Sales Cloudコンサルタント」「認定Service Cloudコンサルタント」などの資格取得を必須としています。
そのほか、インサイドセールスのメンバーにはセールス系の資格、メールマーケティングのメンバーにはマーケティング系の資格です。弊社はシステムベンダーではありませんが、情報システムの構築や運用を担うために最低限必要な知識として、IPAが推奨する資格取得も推進しています。また、最近ではAIをオペレーションに組み込むため、新たな必須資格を設定する予定です。これらの資格取得にかかる費用は会社が負担して、資格が取れたら資格手当を支給する仕組みにしています。

複数の資格と実務経験が組み合わさると、そのスタッフの市場価値はぐんと上がります。職種によっては大幅な収入増も夢ではありません。スタッフたちには、自分の市場価値を上げる努力をするように伝えています。みんなの市場価値が上がれば、SIMPLATTの企業価値も上がりますから。

札幌への恩返しと、「お客様よりお客様であれ」という理念の実践

-会社設立の経緯をお聞かせください。

会社設立は、全く計画しておらず、いろいろなタイミングが重なった結果です。前職は大手電機メーカーのグループ企業で事業運営本部長として、札幌に勤務しながら、日本各地で展開しているBPO・テレマーケティング事業、HR・派遣事業などを担当していました。そんなとき、役員に昇格するために親会社への出向を打診されます。ただ、出世にはそれほど興味がなく、また、海外勤務ならチャレンジしてみたいと思いましたが、国内での転勤には魅力を感じませんでした。諸先輩方にも助言いただきまして、サラリーマンとしてできることはやり切った思いもあり、思いきって退社することにしたのです。引き継ぎの関係で2020年7月に辞めて、翌月8月に会社を設立したので、かなり慌ただしいスタートとなりました。

-北海道で創業した理由は?

札幌での創業を決めたのは、生まれ育った街に恩返ししたかったからです。以前から、ニアショア(地方企業への外注)先とされる北海道のままで良いのか?という思いをもっていました。首都圏よりも固定費を低く抑えられるため、コスト削減が図れるのは、発注側にとっては良いことですから、事業活動としては当然のこと。ただ、あくまでもビジネスプロセスの一部分を担当することが多くなり、作業的な意味合いが強く、付加価値的な要素が少ない。仕事のボリュームと個人の対価のバランスに、納得感ともどかしさのどちらも感じていました。そこで、本社を札幌に置いて、全国的に見ても市場価値の高いデジタル人材を育てることが、この街への恩返しにもなるのではと考えました。

-理念として掲げていらっしゃる「お客様よりお客様であれ」とは?

「お客様よりお客様であれ」は、仕事をするうえで、僕がずっと大事にしている考え方です。顧客志向とはちょっと違って、顧客ニーズを最優先するというよりは、お客さまの一員になりきり、お客さまの立場に立って思考しましょうと。
例えば、Salesforceを導入するだけでも、お客さまのニーズはある程度満たせます。ただ、うまく使いこなせなければ、宝の持ち腐れです。納品して終わりではなく、運用をお任せいただき、お客さまに伴走しながら、お客さまのイメージ以上にCRM・SFA(Sales Force Automation)を事業に役立つシステムに育て、売上や利益の向上に貢献したいと考えています。お客さまの事業に深く関わるわけですから、信頼関係を築き、安心して仕事を任せていただくためにも、お客さまの一員として「お客様よりお客様であれ」は重要な考え方だと思うのです。

営業DXは小さく始めて、数字に現れる効果を目指す

-これからの展望をお聞かせください。

これからは、型化した営業DXとMicrosoft365を全面に押し出していきます。ちょうど1年ほど前、創業3年目にしてはじめて新規開拓営業に乗り出しました。それまでは、ありがたいことに前職からのご縁でいただいた仕事が多く、人員を割く余裕がなかったのです。ようやく新規案件を手がけられるようになり、お客さまとともに試行錯誤を続けてきました。そのなかで、例えば、Salesforce導入のコンサルティングから顧客の獲得・育成までの一連の導線をつくるなど、サービスの型が定まってきました。SalesforceやHubSpotなどのプラットフォームの導入と、僕たちの強みである営業やマーケティングのオペレーションをパッケージ化して展開していく予定です。

また、Microsoft365の導入も同様で、とくに地方の中小企業はまだまだ紙文化というところも少なくありません。導入すれば終わりではなく、お客さまのこれまでの課題を見極め、インフラとして活用できるようにつくり込んでいくまでが、私たちの仕事であると思っています。ここも必要とされる型化ができてきましたので、CRM・SFA、インフラにオペレーションを組み込み、BPaaSとして展開していこうと考えています。

-ビジネスの場としての北海道の可能性は?

DXの推進という観点からすると、北海道は厳しい市場なのかもしれません。とくに中小企業は、IT投資が進んでいるとはいえない状況です。それは当然かもしれない。経営体力のある大企業ならともかく、中小企業が、投資対効果の明確ではないものに何百万円とかけるのは難しいはずですから。いま思い返してみると、前職のときは、僕もそこまでIT投資に積極的ではありませんでした。

でも、中小企業だからこそ、DXを進めたほうがいいとも思っています。そのため、いま、イニシャルコストとランニングコストを極力抑えて、まずは第一歩を踏み出せる、導入しやすいサービスを考えています。それと同時に、投資対効果を数字でしっかり見せられるように工夫を重ねています。例えば、新しいシステムの導入コストは◯◯円です、でも、これらのノンコア業務にかかっているコスト、自動化によって削減できるコストはこのくらいで、一方、コスト削減やコア業務への転換で生み出せる利益はこれです——と、具体的に説明できるようにしたいのです。そして、IT投資に躊躇している北海道の中小企業にも、スモールスタートで営業DXに着手してもらえるように勧めていきたい。その入口に立てれば、あとは、僕たちが伴走しながら営業とマーケティングをうまく回していくことで、投資に対する効果を実感していただけるのではないかなと。
また、少しでも企業様の負担を減らすためにも、DX推進の補助金・助成金をフル活用するつもりです。弊社には「株式会社明治通り会計社」という頼もしいグループ会社がありますから。

北海道でもったいないと感じているのは、東京のIT企業に多くの大型案件が流れていってしまうこと。一企業だけで対応しきれるかというと難しいのが正直なところですが、道内の企業のリレーションが強くなれば、ITの地産地消が実現するのではないでしょうか。そのためにも、僕たちは北海道で、北海道のデジタル人材を育てていかなければいけませんね。


インタビューのなかで、藤野さんが繰り返し口にしたのは、「スタッフたちの市場価値を上げたい」。その言葉の背景には、北海道のデジタル人材の存在感を高めたい、引いては、SIMPLATTをはじめとする北海道のIT企業の価値を上げたい、北海道でITの地産地消を実現したいという、北海道への深い思いが感じられました。自分たちの知見やスキルを地元に還元するため、株式会社SIMPLATTが用意したのが、スモールスタートの営業DXサービス。投資対効果が見えづらく、なかなか容易には進まないDXの切り札になるのではないでしょうか。

(取材日2024年5月14日/北海道IT推進協会 広報委員会、ライター 一條 亜紀枝)

[企業プロフィール]
株式会社SIMPLATT
札幌市で創業したITソリューション企業。北海道企業のDX化を担うため、資格取得支援制度を設け、社員教育に力を入れている。
・代表者/代表取締役 藤野 友希
・設立年月/2020年8月
・事業内容/CRM事業、SFA事業、営業DX事業
・所在地/〒060-0809 札幌市北区北9条西4丁目10番地3 ガレリアビル2階
・URL/https://simplatt.jp
・北海道IT推進協会入会日/2023年10月18日


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