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【読書レビュー】80歳の壁

 三十年以上に渡って高齢者医療の現場で携わってきた精神科医・和田秀樹先生の「80歳の壁」。
 2022年の年間ベストセラーです。

 帯には「老いを楽しく乗り越える、高齢者のバイブル」とありますが、読み終えて本を閉じてから「若いからこそ読んだ方がいいのでは」と、そう思いました。

本書に興味を持った理由

 母が見ていたYouTube動画で紹介されていたからです。つまるところ、自分のために買った、というよりは親のために買いました。

 でも折角買ったんだからわたしも読んでみようか、の心持ちで手に取りました。

 いざ開くと、文字が大きい。

「わ、読みやす……!」

 つい口から出ました。

 レイアウトがノンストレス。
 年配の方向けだからでしょうか。本自体は文庫サイズなのに、通常の文庫より文字が大きく間隔も広いので目に負担なく読めます。

 また、専門的でありながらも寄り添ってくれるような優しい文章のなのでゆったりと読むことが出来ました。

 そして、いざ読んでみると得心の連続でした。

信頼できるお医者さんを探す

 詳細はこちらの記事にて。

 実を言うと。
 あの時の自分の選択が正しかったのか。本当にそんなお医者さんが他にいるのか。わたしがたまたまそんなお医者さんと会ってしまっただけなのか。ずっと頭の端で引っ掛かっていました。

 しかし本書を読んで、「わあ、本当にいるんだ……」と、つい苦笑が漏れました。
 同時に他人事に思えませんでした。

 「医療難民になる前に。
  ドクターショッピングで、信頼できる医師を探す」
 「医療の自己決定。
  それはどう生きるかの選択です」
 「どんな医師を選ぶか。
  それが晩年の幸・不幸を左右する」
 「嫌な医師とは付き合わない。
  自分にとっての「明医」を探す」

和田秀樹「80歳の壁」幻冬舎新書,p47,51,55,58

 いざ自分が病気になった時、どんなお医者さんと付き合っていくのか。
 これは年配の方に限らず、全世代通じて関係してくることだと思っています。

考え方の転換

 人間の脳は、二つのことを同時に考えることが苦手なんだとか。

 「心を安定させるためには
  悪いことより、良いことを考える」

和田秀樹「80歳の壁」幻冬舎新書,p132

 これも老若関係なく言えること。
 精神医学の観点から解説してくださっています。

 昔にあった嫌なことって、どうしても考えちゃいますよね。ひょんな時に頭を過っては、忘れようとしても余計に忘れられません。

 学生時代。
 保健室のカウンセラーさんに通って克服できた過去もあります。

 しかし、皮肉にも過去とはまた積み重なるもので。
 傷のない人はいないとよく言いますが、過去は良いこと悪いこと躊躇なく重なります。

 治ったと思った矢先にまた傷付く。
 治ったと思っていたのにまたぶり返す。

 どうしたものかと頭を悩ましていた矢先だったので、まさに渡に船。早速実践しています。

まとめ

 正直なところ。十代、二十代前半は同い年や近い年の人と話すのが楽しくて、年配の人と話すと「また自慢話か」「いつまで続くんだろう、これ」と思ったことが少なからずありました。

 しかし、不思議なもので。
 二十代後半になってくると、自分の親世代やもう少し上の年の方々の意見や経験、アドバイスを欲することが多くなりました。

 今では、バス停でバス待ちのおばあちゃん(初対面)と五分でも十分でも話すのが楽しみになっています。

「こんな年寄りの話を聞いてくれてありがとうねえ」

 よくそう言われますが、他愛無い話の節々に培われた知恵や生活の知恵、考え方、また自分が知らない時代の話を聞けるのは貴重な機会だと思っています。
 
 いつか、自分もおばあちゃんになる。
 人間、自分の将来は分かりませんので、本当にその歳まで生きられるかは定かではありませんが、「生きていく」ということに変わりはありません。

 わたしなんかは家族から「心配を自分で作ってる」なんて言われるタイプなので、尚のこと。人生をどういう心持ちで歩いていけば良いのか。

 本書にはそのヒントが散りばめられていると感じました。


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