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overdose ~致死量を超えた恋~

___本当は分かってた。
いけないことだったって分かっていたのに……。

この手から伝わる温もりが全て愛だと錯覚した。

朝目が覚めると、部屋には私一人しかいない。
酔いが治まらない感覚に頭を抱えながら、気だるい体を起こした。昨夜脱ぎ散らかした服を拾い集めると、水を求めて台所へ向かった。

コップに注いだ水を飲み干して一息つくと、殺風景な自分の部屋を見渡した。自然と昨夜ここであったことが思い返された。

あなたの隣で同じ朝を迎えたことは一度もない。

その口にする甘い囁きも、本当は嘘だと知っている。けれど不意に押し寄せてくる不安をかき消したくて、いつも気づかないふりをする。

もしあなたが指輪をつける前に私たちが出会えていたら、今頃二人の運命はうまく交わっていたのだろうか。

そんなことを考えてもただ虚しいだけなのに、一人取り残された部屋でまたすぐにでも会いたくなる衝動に駆られる。
そんな気持ちに蓋をしたくて、今日もまた酒の力を借りようとグラスにワインを注いだ。

ほどよく酔いが回ってきた真夜中、ふと鏡に映る自分の姿に目をやる。
そこに映された顔はひどく醜くて、急に夢から現実に引き戻された気になる。その頃には、満たされた気持ちに溺れた少し前の私はもういない。

そうして枕を濡らしては朝を迎えてもう何度目だろう。こんな関係はもう断ち切ろうと、鏡に映る自分に語りかける。このやり取りも幾度となく味わった気がするけれど、朝になるとまたその決意は揺らいでしまうのだ。こうして未だに負のループから抜け出せない自分が惨めで仕方がない。

___Overdose、君と二人。
あなたへの想いは致死量を超えているのに、未だに曖昧な関係でしかいられないことにやるせなさを覚える。こんな実らない恋に一喜一憂し続けるくらいなら、いっそ全て夢で終わらせたい。

あなたの左手の薬指で光る輝きが、この関係を早く終わらせなきゃいけないのだと釘を刺しているように見える。
分かっている……だけど……。
この恋が行く末なきものだと頭では理解しているはずなのに、今日も私は懲りずにあなたを部屋に迎え入れる。

孤独に苛まれる夜を過ごして、あなたから離れようと決意しては同じような朝を迎えてを繰り返す。いい加減そんな自分に嫌気がさしてくる。それなのに、あなたという沼にはまって抜け出せない。そうして今日も抗うことを忘れた私はあなたと二人、また甘い一時に溺れてしまう。


~あとがき~
なとりさんの『Overdose』をショートストーリ風に表現したくて書いてみました。
この曲を初めて聞いたとき、(きっとなとりさんの思惑通り)まんまとしばらく脳内再生の中毒に陥りました。笑
個人的な解釈ですが、終わらせなければいけない恋愛に翻弄される主人公の気持ちが描かれた印象を受けました。楽曲のタイトルが『Overdose』なだけに、曲自身にとても中毒性が感じられます。よければぜひ一度聞いてみてください♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました。











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