『霧のむこうのふしぎな町』児童書紹介① 私のバイブル本
〝児童書〟という定義は難しいなと常々感じる。
児童書といって連想するイメージは、人によって千差万別ではないかと思おう。絵本を思い浮かべる人もいれば、『かいけつゾロリ』『ズッコケ三人組』といった文字が大きく、子供向けに書かれた本だという人もいるだろう。中高生向けのYA(ヤングアダルト)文学などもその一つ。広義で言えば、『ハリーポッター』シリーズも児童書であるが、そのジャンルの枠を越えて愛され続けるだけの力を持っている。
そう、ジャンルを超えて愛され続ける本。
私はそうした本が好きで、子供の頃から読み親しんできた。
大人になったいま読んでも新たな感動と気づきがあり、世代を超えて一人でも多くの方に読んでほしいという願いを込めて、このnote連載をスタートします。
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第一回で紹介するのは、『霧のむこうのふしぎな町』(著・柏葉幸子)。
この本は私の人生のバイブルといってもいい本であり、その存在は常に胸の奥の隅に常にあり続けているような感じがする。それほど絶大な影響を受けてきた。
いまは「青い鳥文庫」シリーズとなり新装版になっているが、オリジナルの竹川功三郎さんのこのイラストの単行本が大好き。
はじめて読んだのは、小学校低学年の時。
たしか、塾の国語の問題に一部抜粋されていて、「もっと続きが読みたい」と思って図書館で借りた気がする。
文章問題のほうはもう覚えていないが、傘を追って不思議な町に迷い込むこと、そこで怖いおばあさんに出合いながらも、ひと夏過ごすことで成長していく主人公の姿に、なぜか強烈な憧れのような思いを抱いていた。
私も不思議の町に行ってみたいなぁと思い続けていた。
そして、作者の柏葉幸子さんの他の本を貪るように読み進めるようになった。もう一冊、柏葉さんの作品の中でとにかくお勧めなのが『りんご畑の特別列車』。これも国語の文章問題の中に抜粋されていた。
主人公が電車に乗っていると、なぜか乗客がりんごの皮をむき始める・・・という冒頭の部分が文章問題になっていた。(この記憶は鮮明にあるので、もしかしたらこの本をつたって『霧のむこうのふしぎな町』にたどり着いたかもしれない💦)
これでもう、私は柏葉さんの作品の虜になってしまった。
余談だが、読書好きだったにもかかわらず、私は小学生の時は完全に理系だった。公式を当てはめて理詰め解ける算数と理科が得意で、暗記の社会は苦手。国語も文章問題で抜粋される部分の続きが気になって問題が解けないのだと、母が言っていた。
(ちなみに、この物語の続きが気になるというのは大きくなってからも変わらず、高校生の時に教科書に載っていた夏目漱石の『こころ』の続きを創作した記憶がある。)
本題に戻り、『霧のむこうのふしぎな町』について。
主人公の女の子が、初めて読んだ当時の私と年齢が近かったこともあり、一人で不思議な世界に行き、様々な出来事が起こることにとてもワクワクした。そして無理難題を解決していく姿にとても勇気をもらった。
そして、私が小学3年生の時、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』が公開になった。なぜか父と2人で見に行き、心から感動し、ワクワクが止まらなかった。この2つの作品に影響を受け、確か小学3年生の時に私も物語を創作した。(いま読み返すと、完全にオマージュ作品で、不思議な世界に行って成長して戻ってくる話。そして、その世界が夢でなかった証をもって帰ってくるという点まで同じだった(笑))
大人になって、『霧のむこうのふしぎな町』が『千と千尋の神隠し』に影響を与えていると知り、なるほど、と妙に感動したことを覚えている。
いま改めて読み返すと、こんな人が出てきたんだ、こんな話もあったのか!といろんな気づきを得ることができた。
この町では「働かざる者、食うべからず」の精神で、皆が何かしらの仕事を担っている。短期滞在する主人公も例外ではなく、働かないと止めさせてもらえない。
一週間ごとに様々なお店に出向き、そこでお店や周りの人々の抱えている問題を主人公の持ち前の明るさと前向きさで解決していくのが面白い。ここは魔法使いの子孫が住んでいる町で、動物が喋ったり、外の世界からお客さんがやって来るのは当たり前。だから何が起こっても面白く読めてしまう。
個人的には、トケのおかし屋さんのお菓子は食べても太らない。でも虫歯にはなる。というくだりがあったことを改めて知り、いいなあと思った(笑)。
あとは、これは私の好きな本に共通していることかもしれないが、本に出てくる世界の地図が書いてあると、とてもワクワクする。こんな町があるんだと、いろいろな想像が掻き立てられる。
この本も表紙の裏にこんな地図が載っている。
長く愛され続ける本の多くは、何か教訓じみたことや伝えたいメッセージが明確に書かれておらず、純粋に受け手の捉え方にゆだねてる点も好きなところ。
本の面白かった点、気づきや学びは自分次第。逆に言えば、自分の想像力次第で物語はいかようにも面白くなる。
これは私の本の解釈なので、ぜひ一人でも多くのお子さん、大人に手に取って読んでいただきたい一冊です。