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フィードバックは玉手箱

フィードバック第二弾です。イラストも「え?」で揃えてみました♪

前回、フィードバックで指摘された訂正箇所は47ヵ所と言ったのですが、最終的に訂正したのはそれ以上になりました。数えていなかったので実数は不明ですが、訂正作業自体は2時間ほどでサクサク終了。

増えた一番の理由は、複数の名詞を漢字からカタカナ、またはカタカナから漢字に直したこと。訂正指定箇所だけだと全体の整合性がなくなるので、その名詞が登場する箇所をすべて書き換えました。こうすることで、今後、翻訳支援ツール上に表示される該当単語の訳語が統一されるはずです。

最も面白かったのが、日本語のレビューを担当したエンジニアさんの記述に、「えっ、そんな訳になるの?」と驚愕するほど原文からは遠く離れた文言が含まれていた点。訂正用に送られてきたPDFの注釈を見る限り、その方は英語が達者ではないようなので、私の翻訳から“正しい言い回し”を導き出したようです。

これを見て、遠い昔に邦楽メインの音楽雑誌(かなり前に廃刊)の編集をしていた知り合いが、とある日本人バンドのインタビュー記事を担当したときのことを思い出しました。

当時、日本人アーティストはイメージ戦略もあって、インタビュー記事の原稿を掲載前に必ずチェックしていました。Q&Aスタイルのその記事、件のバンドから戻ってきた原稿は、読み進めるたびに「そんなこと言わなかったよね?」と呟くほど書き換えられていたそうです。当然、記事は書き換えられた原稿が掲載されました。それがそのバンドの求めるインタビュー記事なのですから仕方ありません。

今回のフィードバックでも、エンジニアさんが日本語訳から導き出した正しい言い回しは原文からは絶対に翻訳できない文章で、上のバンドによるインタビュー全文書き換え事件に限りなく近く、逆に面白いと思ってしまいました。

今回のケースは、専門家であるエンジニアさんと門外漢の翻訳者の私が協力して一つの翻訳を完成したことになり、文芸翻訳でいうなら、このエンジニアさんは訳文を校正する編集者と同じ立場です。私には知り得ない彼ら共通の言い回しや言葉遣いに整えてくれた有り難い存在と言えます。

彼らにしてみれば普段から見慣れている文字の並びに従っているだけなので、漢字やカタカナが読みにくいほど長く連なっていようが、文字数の多いカタカナの「・」の位置が不規則だろうが、大きな問題ではないわけです。そして、黒子である翻訳者はそれを尊重せざるを得ない状況に心の中で涙するだけ……。

ある類いの文章に関しては、背景に何らかの意図があってワザと読みにくい文字の並べ方をするのではないか?と、最近は若干疑っています。人に伝わらなくてもいい文章というか、それを書いた人もしくは同業者だけが理解できればいい文章というか……排他的で視認性低し。

文芸翻訳に関わっていると決して「伝わらなくてもいい」とは考えないのですが、実務翻訳ではそういうケースが多々あるようです。伝わらなくてもいい文章……これはこれでちょっと面白いです。でも、それなら、どうして文章にするのか? う〜む、謎です……。

あ、ちなみに今回のケースでは「and/or」の訳が「及び又は」になっていました。ここは見事に直訳で「ふ〜ん、そうなんだぁ」と思いましたね。ちょっとした発見でした♪



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