理不尽で遊んでみよう!
世の中には理不尽が溢れていて、私はどちらかと言うと理不尽に対してカッカカッカと怒ってしまうタイプだけど、一度理不尽を使って遊んでみることにした。
その時のお話。
コロナになってからもう所属劇団のイベントに関わるのみとなったが、私は個人でもインプロ(即興芝居)のイベントを企画していた。
インプロとは
即興演劇のこと。台本がない中、役者はお互いに関わり合いながら物語を紡いでいく。
私の企画の原動力は
”世の中にこの人を届けたい”だ。
私自身が大好きで、友達にも思わず話したくなるような人をキャスティングしている。
この人と出会ってハッピーな気持ちになったり楽しい時間をもらえるようになった人間(私)が既に一人いるんだから、彼らと出会ってハッピーになる人が世の中に他にもいるでしょ!
という気持ちから始めた。
そして、私の企画に出てくれた人の中に、
「そんなことあるかい!」と思わず突っ込みたくなるような理不尽によく見舞われている男の子がいた。
数ある理不尽歴の中でも、最高に意味がわからないと思ったのが、
「大学生時代、昼間都内を歩いていたら、近づいてきた原付の男の人に『お前東京もんじゃねぇだろ!』と叫ばれた」
というエピソードだ。
彼は、"生まれも育ちも横浜だし確かに東京の人ではないけど、毎日東京に出てきてるから微妙だなぁ"と思いつつ「はい」とだけ返すと、原付男は何も言わず去って行ったらしい。
以前アップした記事の
で述べたとおり、私は田舎者に見られるかどうかを察知するセンサーを常に働かせていたような人間だが、彼を見て田舎者っぽいとは全然思わない。
もはやネタとして彼は話しているし、私も聞いてて笑ってしまったが、実際同じことをやられたらかなりムカつくしちょっと怖い。
しかし、原付男も同じ人間。
他の人が到底理解できないような内容だとしても、その行動には原付男なりの理由があるはずだ。
理不尽だとしても、やっている本人の中には正義があったり、本人が後で後悔するような八つ当たりでも、そこに至る背景はあるのだ。
真意が何かなんて、原付男に行き着くことができなければ分かりようがない。
が、フィクションでいいから、その原付男の物語をインプロで演じてみたらどうだろう?
イベントの稽古の中で提案してみた。
その中から、本当にそうだったのかもと思えるような理由が出てくるかもしれないし、あり得ない内容でも面白がれれば”理不尽なエピソード”が”面白い物語を生んだエピソード”に変わる。
その日の稽古の参加者は私を含めて3人。
それぞれが原付男を演じ、3つの物語を生んだ。
①東京から東京出身者以外を出て行かせないと悪の組織から命を狙われしまう原付男
②妹を東京出身の男に傷付けられた原付男
③…なんだっけ
もう2年も前のことなので正直正確には覚えていないが、こんな感じで物語を作って、3人でガハハと笑っていたことは記憶している。
とにかく楽しかったし、フィクションの物語とは何も関係ないけど、ちょっと原付男が愛おしくもなった。
毅然と立ち向かわねばならない理不尽も世の中にはある。
しかし、面白おかしく昇華できるものはそうしたい。カッカと怒る時間よりも笑える時間が大事だ。
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