ピストルズとスミス
1970年代のピストルズと80年代のポストパンク、スミス。モリッシーはネオ・リベラリズムのマーガレット・サッチャー政権批判、イギリス王室批判、バンド・エイド批判をおこなった。バンド・エイドを独善的と述べ、アフリカの貧困をサッチャーや女王に訴えるのではなく、もっぱら無職の音楽ファンから金を巻き上げているとして非難していた。モリッシーのシニカルなねじれた歌詞は英国の若者に熱狂的に受け入れられた。ジョン.ライドンもモリッシーも王室批判をしたが、
ジョン.ライドンは「God save the Queen」はイギリスを愛していたがゆえに書いた歌だ、と後年語っていた。私がもし英国にあまたあるロックバンドから最も影響を与えられたバンドを二つ選べ、と問われたならば躊躇なくピストルズとスミス、と答える。
以下はサッチャーが亡くなった日(今から7年半前)のブレイディみかこさんのエッセー「Anarchism in the UK」から。
「生きているときの彼女は、俺の敵だった。だが、死んだ彼女は俺の敵ではない。俺は彼女の墓の上で踊る気はない」
というジョン・ライドンの発言は、現代の英国の所謂"ザ・レフト"の人びとには評判が良くないようだ。それは、「悪い魔女は死んだ」と歓喜して踊るパーティ・ピープルの士気を盛り下げる言葉だからである。セックス・ピストルズのジョニー・ロットンは、ザ・スミスのモリッシーのようにべたべたに直球のアンチ・サッチャー声明を発表しなかったので、肩透かしだったそうだ。
しかし、わたしには、それがピストルズとザ・スミスというバンドの役者の違いだったように思える。
死人を相手に、勝ち誇ったような顔をしてパーティをしてどうする。
誤魔化されるな。真の敵と戦え。