諱(いみな)と字(あざな)

字は通称だが、諱は主君や親以外が口にすることはきわめて非礼だとされた。
有名なのは坂本龍馬直柔、龍馬が字、直柔が諱だが、当初は直陰だった。諱を改名したのは一説には寺田屋事件後、寺田屋主人、お登勢がゲンを担いで勧めたという。

私の名前は美樹という。れっきとした男だ。電話で名前を言うと、必ずと言っていいほど「ご本人ですか」と言われる。「和民」の創業者、渡邉美樹は両親の美智子と秀樹から一字づつ取ってつけられたそうだ。
僕には弟と妹がいて、真樹と百合香という。全員父が名付けた。百合香という名前はアルキメデスが王から金細工師の詐欺を証明できないか、と問われ、風呂に入っているところ偶然にもそれを発見して「ユーリカ！」(ギリシャ語で「わかった！」)と叫びながら裸で通りに飛び出した、というエピソードから取ったらしい。
美樹は男優の森美樹から付けたそうだ(イオンの取締役に森美樹氏がいるが、「よしき」と読む)。男優の森美樹は坂本龍馬役など、主に時代劇に出演していたが、自宅のガス事故で僕が生まれる三か月前に26歳で亡くなった。彼と恋愛関係だったのが山田五十鈴の一人娘、嵯峨美智子だ。彼女は森美樹の事故死に非常にショックを受け、その後、俳優の岡田眞澄と婚約したが二年後に解消している。酒と薬に溺れ、晩年はクラブのママにおさまったが、滞在先のバンコクでクモ膜下出血のために57歳で客死した。