カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の法則
以前サブスクリプションの本を読んだことももちろんですが、消費者にとって一番良い形でビジネスができるという観点から、カスタマーサクセスにとても興味があったので読んでみました。
章ごとに簡潔にまとめていきます。
第1章
定期収益型ビジネスモデルにおいて、力がベンダーから顧客に移った。
クラウド以前はソフトウェアが買い切り型だったため、購入時点での金額を最大にする必要があった。
しかしサブスクリプションモデルや従量課金モデルは、最初の取引における金額だけではなく、むしろその後のLTVが重要になる。
LTVの最大化のためには、①自社の顧客を続けてもらうこと、②自社からもっとモノを買ってもらうこと が課題となる。
またSaaSでは、従来のようにメンテナンス契約に縛られないため、顧客が選択権を持つようになり、その結果チャーンの問題が生じるようになった。
新規顧客の獲得には高いコストがかかるため、獲得した顧客を手放さないこと=ロイヤルカスタマーの存在が重要になる。
ロイヤルティとは①行動ロイヤルティ、②心理ロイヤルティ に分けられ、特に心理ロイヤルティは維持するのが難しい。
カスタマーサクセスとは、この心理ロイヤルティを生み出す手段であり、LTVの最大化にもつながる。
第2章
最高のカスタマーエクスペリエンスとは、必要なときに手助けされることではなく、助けが必要になる頻度が減ることである。
カスタマーサクセスに力を入れることで、問題の源流に遡って分析し、次の顧客が同じ状況に陥らないようにすることができる(=最高のカスタマーエクスペリエンス)
第3章
顧客価値の3つの階層=ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ
従来、Eメールは顧客の獲得が目的だったが、今やカスタマーサクセスに近づいている、つまりテックタッチモデルによって即座にカスタマーサクセスをもたらせる時代となった。
第4章〜第14章
カスタマーサクセスの実践における10の原則のうち、特に重要だと思ったところや面白いと思ったところを書き留めておきます。
- 正しい顧客に販売する
自社のプロダクトやサービスでは「成功」できない顧客はチャーンにつながる可能性が高く、そこから良くない口コミが広がる(二次被害)こともある。
また、間違った顧客を無理に成功させるためにつぎこんだ人材やコストは無駄となる。
- 顧客が期待しているのは大成功だ
顧客にとっての成功は何なのかを理解する必要がある。
1 どのように成功を測っているのか
2 その指標から見て、顧客は成功しているか
3 成功への過程における期待していること
- 絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する
カスタマーヘルス=顧客の将来の行動を示す日々の指標 において、低い点数が出た際に顧客をマイナスの道から切り替えるよう働きかける。
- ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める
自社運用型ソフトウェアと比較してSaaSの提供モデルは、顧客がどのように製品を使っているかをあらゆる面で測定できる点で優れている。
第15章
最高顧客責任者(CCO)が営業やマーケティングも管理するようになる。
例えば営業においては、CSMはアップセル見込み客の最高の情報源であり、営業自体がカスタマーサクセスに向かっていく。顧客の成功を中心に組織が再編成されるようになる。
単なる四半期売上目標を達成することよりも、長期的なリテンションやカスタマーサクセスを優先するとトップダウンで組織に浸透させないといけない。
第16章
カスタマーサクセスのための行動につながる情報を一元化することで、あらゆる顧客とのやりとりが追跡可能となり、やりとりする優先順位が決まる=最適化される。
またシステムを活用することで、行動の再現性も高くなる。
第17章
SaaS以外の分野でもカスタマーサクセスの重要度が上がり続ける
→カスタマーエコノミー…顧客の力がさらに強くなる
→どの業界でも顧客に有利なように破壊が進むため、顧客への配慮に対してコスト・労力をかけなければならない
消費者の購入体験をつかんで、サブスクリプションと似たところまで拡大する
→ロイヤルティプログラム…実際にはベンダーが利益を得ているときに、消費者本人も利益を得ているように感じられるようにする
感じたこと
今たくさん買ってもらいたい!というマインドは、アパレルの店頭に立つ人の多くが持っているだろうし、会社の方針としても日・週・月・年の売上目標が最も大事だということになっているケースが多いだろうと思います。
しかし、私はそのような考え方に強く疑問を抱いています。
短期的な目標数値よりも、いかに長く顧客でいてもらえるかの方が重要なのではないか?
買ったら終わり、ではなく、サポート体制やカスタマージャーニーの最適化こそ重要視すべきなのではないか?
なぜお客様が来ないのか、買ってもらえないのかを、天候要因などではなく、もっとデータを活用して分析すべきなのではないか?
こういった私の疑問に、この本は答えのヒントを与えてくれたように思います。
心理ロイヤルティの創造は、私が勤める紳士服チェーンではもちろん取り組んでいますが、こういった別領域の事例からももっと学んで活かしていく必要があると強く感じます。
また、消費者の期待する「成功」のレベルはどんどん高くなってきており、消費者のほうが力が強くなっているという本書の指摘はどの業界でも、もちろん私のいるアパレル業界でも当てはまると思います。
そのレベルに応えなければ自社が選ばれることはないのだという事実をまっすぐ受けとめ、どうすれば自社のサービスやプロダクトを使い続けてもらえるのかという、サブスクリプションモデルの視点を持つことが、これからますます求められるのだと感じました。
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