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僕の青春/僕のベトナム戦争/マンハッタン

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2022年2月の記事一覧

ジロラーモ・ダイナーのナオミ#02

ジロラーモ・ダイナーのナオミ#02

ところが。ある日、猛烈に怒っているナオミに出食わした。アビゲイルが妊娠したのだ。
「あんなにいつも言ってたのに! アタシがロクでもない男のせいで、どんなに苦労したか話してたのに! まったく同じアナに堕ちるなんて信じられないよ。"愛してるから"なんぞと言うんだ。まったく薄ら馬鹿なTVや映画のせいさ。そんな話を信じさせて、あとは野となれ山となれだかンね。
アタシはいつも言ってたんだ。男が愛してる"から

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ジロラーモ・ダイナーのナオミ#01

ジロラーモ・ダイナーのナオミ#01

80年代の初め。92st.のアパートメントホテルが立ち退きになって、僕は行き場所を失った。ウエストサイドは開発の手が入り始めて、少しずつ住みやすい場所ではなくなっていた。紹介してくれる人があってアルファベットst.トンプキンスパークのアパートを見に行ったが「この近くをね、銃を持たないで歩くのはやめたほうが良い」と言われて、さすがに諦めた。家賃はべらぼうに安かったけど。そのままマンハッタンブリッジの

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ジブリールダイナーのナオミ#03

ジブリールダイナーのナオミ#03

「すごく馴れ馴れしく話しかけてる人が出て来たんです。他のウエイトレスがあの人ナオミのことが好きなのよ、と言って笑ったけど、そんな風には思わなかったんです。だから普通に接客していたんですけど、そのうち好きだとかデートしようと言うようになって、仲間のウエイトレスに断るならきちんと断らないとコジれるわよって言われたんだけど、そのままにしちゃいました。そしたらついには仕事が終わるのを店の前で待ち伏せされた

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ジブリールダイナーのナオミ#02

ジブリールダイナーのナオミ#02

14st.は地下鉄Lが横に走っている。ブルックリンとマンハッタンを繋ぐ通勤路線である。あまり豊かな人々は乗って来ない路線だ。マンハッタン区内で働くブルックリンで暮らす人々が利用する路線である。あるとき、14st.駅構内でナオミを見かけた。僕は思わず声をかけた。「これから仕事?早いね」日本語だった。ナオミは微笑みながら返してくれた。
「母に頼まれものがあって、ウチの近くじゃ買えないから」そこはかとな

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ジブリールダイナーのナオミ#01

ジブリールダイナーのナオミ#01

グリニッジヴィレッジが好きだ。僕がアパートを8ave.と14st.の交差点のすぐ裏に選んだのは、通りにでればそのままグリニッジストリートが斜めに走るショートカットとして6ave,E6st.に繋がっているからだ。まだ家内と出会う前だ。僕が恋したのNYCは、92st.の西の外れにあったボロアパートメントホテルとロアーマンハッタン/ナッソーのボロアパート、そしてこのグリニッジヴィレッジの西の外れの・・こ

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