🎥映画記録『ゆれる』 (2006.西川美和監督)
映画の感想はあまりシェアしない派なのですが
ミーハー心にテーマ投稿というのをやってみたく
書いてみました。笑
『ゆれる』
夜も深まる時間帯に観始めてしまいました。
選出理由は特になく
以前マイリストに入れていたものをまだ観ていなかったということと
強いて言うなら、最近時効警察を観ていてオダジョー熱が高まっていたことくらいです。笑
ストーリーの概要
ある夏の日に
田舎の町から上京した弟(オダギリジョー)が
慕っている兄(香川照之)の連絡を受けて
母親の一周忌に参列するために地元に帰ります。
2人には幼馴染の女の子(真木よう子)がいて
彼女は兄の切り盛りするガソリンスタンドで働いています。
弟の久しぶりの帰郷に、3人が共に出かけた渓谷で起こった出来事を中心にストーリーは進みます。
兄のみのるは非常に温厚で気が利く青年?中年?で
家族からもバイト先のアルバイトからも慕われています。
弟は東京でフォトグラファーとして活躍し
都会で順風満帆に暮らしています。
弟は田舎の退屈な日々が肌に合わず
堅物の父親とはぶつかりがちではあるものの
自分を大切にしてくれる兄のことは慕っていました。
「あの日」の出来事自体は登場人物たちの揺れる思いの一アウトプットでしかなく
そこから見える兄弟の心情が丁寧に描かれています。
感想文
まず心を掴まれたのは
冒頭のオダジョーの行ってきますのキス。笑
テンション上がりました。ありがとうございます😇
ここから真面目に書きます。
ストーリーの中で出てくるシーンは
同じような風景ばかりです。
しかしながらそれでいて飽きが来ないのは
登場人物の心情が常にゆらゆらと揺れ動き
その心情によって見える景色が色を変えるからではないかと思います。
人と人との関係は絶妙なバランスで保たれていて
関係性が近ければ近いほど
「差」というものが生む溝は深いものになりがちだと感じます。
シーンが進む中で各人の思いや考え方も揺れ動き
それは事象として発生したものへの解釈までも変えていきます。
それは特別なことではなく
私たちは普段から見たものや聞いたことに
自分でも気付かないうちに自分の思いに影響された解釈を与え
色のついた事実へと書き換えてしまうのでしょう。
私ははじめ、弟の兄への言葉や態度から
色んな想いはあれど何よりも弟は兄のことを一番大事に思っているんだ
と思いながら観ていました。
しかし彼のすべての言動の根本には
兄への優越感があるのだということをだんだんと感じ
すると全ての言動に対する納得感が増しました。
兄はそうした微妙な感情を本人以上に繊細に捉え
劣等感と嫉妬心を常に穏やかさの裏に秘めていたことがみてとれます。
この関係性は日本の一般家庭の長子と末っ子のそれとして
想像しやすいものでもあったようにも思います。
私には二つ上の兄がいて
兄が私とは逆の控えめな性格なこともあり
少し自分と重ねてみたりもしました。
数年前に私が一歳の時のホームビデオを初めて見た時
兄は元来から控えめなのではなく
兄の持つ控えめさというのは
私が生まれたことで創り出してしまったのかなと
申し訳なさなのか切なさなのかなんとも言えない感情を抱いたことを思い出しました。
3歳に満たない兄が幼いながらに何かを諦める
それは末っ子の私にはあまり経験のないものでした。
この兄弟が最終的にどうなったのかは描かれていません。
映画も小説も結論が誰がみても同じというようなものは好きではなく
受け取り側の余白が残っているものが好きです。
その点でも非常に好みの映画でした。
映画レビューの閉め方がわかりませんが
おしまいです。笑