国際列車 タンザン鉄道の旅 その3
国際列車の旅の2日目は、朝からあいにくの曇り空で、時折、激しく雨が窓を叩きます。
今日はいよいよ国境を越えて、タンザニア入国です。当初の予定では、朝の早いうちに突破するはずだったのですが、地図で確かめたところ、国境まではまだかなり距離があるようなので、私たちは朝食を摂ることにしました。
列車がゆっくりならば、車内のサービスもゆっくりで、食堂車で
「いつから食事がはじまるの?」
と訊ねるとたいてい
「1時間後」
と応えが返ってきて、実際はそれ以上に待たされます。けれども時間の有り余っている乗客たちは文句も言わず、いつか運ばれてくる食事を、おしゃべりをしながら気長に待ちます。
それにしても、国境が遠すぎる。しかも、どういうわけか列車はだんだんと速度を落とし、やがて停まってしまったのです。
それから1時間、列車はびくともせず、一体何が起きたのかと車掌に訊ねると、行き違う列車を待っているのだと応えました。
さらに1時間が経ち、もう永遠に動かないんじゃないか?と心配になった矢先に、列車は再びノロノロと走り始めたのですが、しばらくするとまた、停まってしまいました。
今度は何事?と訊ねると、
「エンジンが動かない」
と返ってきました。
「エ、エンジンが動かない?」
そんなバカな、と思うのは日本の常識で、ここではふつうにあり得るのです。もちろん、乗客には何の知らせもありません。私たちはただひたすら待つばかりです。
それからずいぶん経ってから、何をどうしたのか分かりませんが、おもむろに列車は動き始め、ようやく国境へ辿り着きました。
それぞれの国の出入国審査のためにどれほど時間がかかったかは、これまでのいきさつから察して、語るまでもないでしょう。
結局、私たちが朝の8時ぐらいに降車予定だった駅に着いたのは、夜の11時でした。
実に、36時間の列車の旅です。
なかなか価値のある経験でしたが、我が人生において、一回で十分だと強く感じました。
もし、タンザン鉄道に乗ってみたいと考えている人がいるならば、いつも以上に、時間に余裕をもって挑まれることをおすすめします。