『度胸星 続編もどき』_第20話「意識での会話」
scene_茶々、漂流する
ERV内では全員が宇宙服内の圧力を下げるプリブリーズを行う。
それが終わると、ブロンソンと筑前は1台しかないセルフレスキュー用の小型推進装置SAFERを用意する。
ブロンソン「さあ、SAFERを使ってM1まで移動するぞ。」
「予定どおり筑前がSAFERを背負い、三河に私、市原を順番に運んでもらう。」
筑前「なあに、M1までは直線移動だから難しくはねぇさ。」
「1回か2回の噴射で十分だろう。」
M1のハッチが開き、宇宙服姿のハリコフが現れる。
ハリコフはハンドレール(船外で飛行士が移動を安全に行えるようにつかめる手すり)に命綱をかけ、万が一に備える。
筑前がSAFERを背負い、度胸を抱えるような形でスタンバイする。
筑前「よし、度胸ちゃん、行くぞ。気持ち切り替えろよ。」
度胸「筑前、よろしく頼む。」
ERVを踏み台にしたジャンプとSAFERの噴射でM1までの軌道を確保する。
しかし、ERVはその反動で少し傾いた状態になってしまう。
途中でもう一度スラスターを噴射し、筑前と度胸はM1の船外ハッチで待ち受けるハリコフに抱えられるように到着する。
ハリコフ「よくやった。グッジョブだ。」
そう言って、筑前と度胸のハーネスに命綱のカラビナを装着していく。
――カチャリ、カチャリ
筑前はERVに戻る。
次は同様にブロンソンを運ぶが、飛び出すときの反動でERVがさらに傾いてしまう。
不安そうな茶々の姿が映る。
筑前とブロンソンがM1にたどり着き、度胸にこう声をかけられる。
度胸「急いでくれ、筑前! ERVの体勢が崩れた。少し遠ざかっているようだ。」
筑前「わかった。すぐ行くぞ、茶々!」
筑前はスラスターの噴射を最大にし、ERVのほうへ向かう。
なんとか命綱の範囲でERVの茶々を回収することができる。
筑前「すまない、待たせたな。」
そう言って、茶々を抱えてスラスターを作動させる。
だが、スタスターは最大出力で噴射され、バランスを崩した筑前は茶々を持つ手を放してしまう。
筑前「アッ、茶々!」
慣性のまま予期せぬ方向へと流されていく茶々だが、筑前はスラスターが効かず、真空ではどうにもできない。
すると、それを見た度胸の目がクソ度胸モードになる。
茶々の行く先に狙いを定め、M1の船体を蹴った推力で助けに行く。
ハリコフ「三河、危険だ、やめろ!」
ウインチで命綱を引っ張られながら、
筑前(心の声)「そりゃ無茶だぞ、度胸ちゃん。」
そう思いつつも「届け! 届け!」と叫んでいる。
scene_テセラック現る
度胸は正確に茶々の行く手に向かって前進しているが、命綱が残り少なくなってくる。
度胸(心の声)「まずい・・・このままだと命綱の長さで止まってしまう。」
「そうなると、もう真空じゃ推力が得られないぞ。」
そう考えた度胸は、命綱が尽きる手前で、命綱をつなぐカラビナを外すことを選択する。
一瞬、武田の顔が脳裏をよぎる。
カラビナを外したあと少し進んで、茶々をキャッチすることに成功する。
ヘルメット越しに見つめあう度胸と茶々。
茶々の安堵の表情が映る。
だが、その勢いのまま二人はクルクルと回転しながら、M1から遠ざかってしまう。
ブロンソン「どうする、ハリコフ。M1で回収できそうか?」
ハリコフ「・・・やってみるしかなさそうだ。希望は持てないが・・・」
しかし、そのときテセラックが漂流していく度胸と茶々のそばに姿を現す。
M1にたどり着いた筑前がつぶやく。
筑前「いったい何をする気だろう、テセラックは?」
scene_テセラックの意識
テセラックの内部の視点から度胸と茶々が映し出される。
二人の身体は光るひも状の素粒子の集まりのように描かれる。
茶々の意識が素粒子となってテセラックのほうに向かってくる。
それは「助けて」という切実な願い。
度胸は身体の中心に強い光の塊がある。
そこから放出されているのは「絶対に助ける」という胆力の素粒子。
テセラックの意識「・・・なんだろう、この力はなんだろう? 穏やかでとても力強い。」
「感じたことのない不思議な振動だ・・・」
テセラックは漂流する二人を取り込んでいく。
テセラックに気づいた茶々が静かに念を送る。
茶々の意識「テセラック、私たちを助けて、お願い。」
するとテセラックの意識からの返事が感じられる。
テセラックの意識「助けるってどういうことかわからないけど・・・こうなりたい自分たちの姿を思い描くといいよ。」
【場面スイッチ】
次の瞬間、度胸と茶々はM1内部にいた。
テセラックがM1に瞬間移動したようである。
テセラックはだんだんと小さくなっていくのが茶々には知覚できる。
【場面スイッチ】
ハリコフ「おい、これを見ろ!」
二人が帰還していることにモニターをとおして気づくハリコフ。
そして、船外で歓喜し、かつ戸惑っている筑前、ブロンソン、ハリコフの画。