『度胸星 続編もどき』_第11話「世の中で一番度胸あるヤツ」
scene_地球の三河家とジャーナリスト林がNASDAで出会う
三河家のリビングルームでくつろぐ二人。
前回よりも緊迫感が感じられる。
愛嬌「母さん、さすがにやばいんじゃない・・・?」
「何ヵ月も連絡しないなんて、いくらなんでも度胸らしくないぜ。」
しのぶ「・・・・・」
「NASDAに電話してみたけど、教えてくれないのよ。」
「息子さんはNASDAを退職されてます・・・の一点張りでねぇ。」
愛嬌「・・・んなら、直接NASDAに行ってみっか? 母さん。」
しのぶ「・・・そうね~~、モヤモヤしたまま過ごすよりよさそうね。」
「うん、そうしようか!」
【場面スイッチ】
NASDAの事務所内。応接室から出てくるしのぶと愛嬌。
二人とも納得のいかない表情で、愛嬌は怒っている。
愛嬌「くそっ、あいつら。判で押したような返事しかしやがらねーぜ。」
「三河度胸さんは現在NASDAの職員ではないのでわかりかねます、って。」
「まったくの無駄足だったな、母さん。」
しのぶ「・・・・・」
そこへ偶然通りかかる「実話セブン」ジャーナリストの林。
振り返って二人に声をかける。
林「あんたたち、ひょっとして宇宙飛行士の三河さんのご家族かい?」
【場面スイッチ】
NASDA内のカフェテリア。
林「いやぁ、NASDAが三河・・・いや息子さんのことを教えられない事情はわかるが・・・」
「息子さんからも何も伝えられてないとはねぇ・・・」
しのぶ「度胸が生きているかだけでも教えてもらえませんか?」
林「いや実は俺も息子さんに助けられたことがあってね・・・」
「それだけ口の堅てぇやつの家族だから特別に打ち明けるけど、それには条件をつけさせてもらうよ。」
愛嬌「なんだよぉ~~、その条件ってぇのは?」
林「なぁに大したことじゃない。息子さんから連絡があったら、その内容を俺にも教えてくれってだけのことさ。」
愛嬌「なんだよ。いいぜ、そんなの。なぁ、母さん。」
しのぶうなづく。
林「じゃあ、よく聞いときなよ。他言は無用だぜ・・・」
【場面切り替え】
NASDAから帰るトラックの中。運転席の愛嬌と助手席のしのぶ。
愛嬌「まったく、度胸はだせぇよ。金にも名誉にもならねぇのに火星なんか行きやがって!」
「かっこいい筑前さんを助けたなんてことがニュースになりゃ、度胸の株もあがるのによぉ~~」
しのぶ(心の声)「度胸・・・死ぬんじゃないよ・・・」
(四郎を回想する)「世の中で一番度胸あるヤツってぇのはなぁ、火星まで荷ぃ運べるヤツさぁ。」
しのぶ(心の声)「父ちゃんも言ってるよ。」
「トラッカーなら荷を運んで帰ってくるまでが仕事だぞ・・・ってね。」
scene_ローバーで出発する筑前
【M1火星到着予定の6週間前】
ローバーに乗り込もうとする筑前とそれを見送るブラッドレー、ブロンソンの二人。
筑前「じゃあ、行ってくるぜ。」
ブロンソン「気をつけろよ、筑前。」
ブラッドレー「本当に俺も一緒に行かなくていいのか?」
筑前「いいって、いいって。」
「あんたが来ると、すぐに頭に血が上ってテセラックを刺激しそうだから、来ないほうが安全なんだよ。」
ブラッドレー「なんだと! このヤロウ!!」
筑前「ほら、それだよ(笑)」
全員「ワハハハハ」
筑前はローバーに乗り込む。
――バタン、プシュー、ガロン、ガロン、ギュロロロロロ
砂埃をあげ去っていくローバーをいつまでも見送る二人。
ブラッドレー(心の声)「必ず帰ってこい、筑前。テセラックなんかに屈するんじゃないぞ・・・」