『度胸星 続編もどき』_第19話「武田の漢気」
scene_船外の度胸と武田
度胸が押し戻されているのを見た武田が機内から外に飛び出す。
その前にクルーにこう言い残して。
武田「いいか、よく聞けよ。俺の代わりに三河を乗せるんだ! いいなぁ!」
――ウイーーン、ザアッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ガシッ
武田は奮闘する三河の隣でローバーに手をかけ、肩で押し返す。
武田(無線)「お前一人だけだったあんときとは違うぜ・・・」
水中での無重力環境訓練のときモジュールの下敷きになった回想シーンが挿入される。
「・・・一緒に前輪を持ち上げて、向きを変えるぞ。」
そう言うと、バンパーの下に手を入れてローバーを持ち上げる。
度胸もそれに倣う。
武田(無線)「三河ァー、俺はお前に何度も命を救われてる・・・」
「このまま助けられっぱなしじゃ、ヤクザがすたるぜ。」
二人が持ち上げるローバーは「ギュイーン、ギュイーン」とうなりを上げたまま方向を変える。
と同時に、武田がドアを開け、ローバーの中に乗り込む。
度胸(無線)「な、何をするんだ! 武田ァーー!」
武田(無線)「いいから行け! お前は仲間という荷を積んで地球に帰るんだ!」
「いいかァ! 俺に恥をかかすなよ!」
そう言って武田は自動から手動へと切り替え、ローバーのハンドルを切り返し、スピードを上げてテセラックのほうに突っ込んでいく。
ERVから「早く来い! 出発するぞ!」と叫んでいる筑前の姿が映る。
武田はテセラックの注意を惹くかのように、ぶつかる直前でターンしたりドリフトしたり派手な運転を繰り返している。
度胸は後ろを振り返りながらERVまで全力疾走し、筑前に引き上げられる。
急いでハッチが閉じられ、この騒動のなかERVは離陸する。
ブロンソン「メインエンジン、点火。」
「・・・推力100%到達を確認。離陸する。」
――オン、オン、オン、オン、グオン、グオン、グオン、ゴゴゴゴゴゴゴ
武田は何度目かの突進の際にテセラックにとらえられ、そのまま姿が見えなくなる。
度胸「武田ァーーー!!」
武田(心の声)「・・・俺は結局、暴力から逃れられなかったが・・・三河、お前は・・・お前の信念で世界を変えてくれよ。」
ERVは上昇を続ける。
ブロンソン「・・・機首を方向修正し、M1ランデブーポイントに向かう。」
scene_M1とのドッキング
ERVで向かい合って座る四人の画。
茶々「・・・武田君は昨日からずっと何かする気だったようだけど・・・まさか三河君の身代わりになろうと考えていたなんて・・・」
筑前「あの武田がねえ・・・」
度胸(心の声)「武田、すまない・・・」
【場面スイッチ】
度胸たちが乗るERVが航行する宇宙空間にM1の姿が見えてくる。
M1はERVを追いかけるような形で近くまで来ると、軌道修正用スラスターを噴射させて軌道を変え、減速していく。
軌道制御コンピュータを操作するハリコフの画。
エンジンが点火していることを示すランプが点灯し、「ゴーーーッ」という音が船外から聞こえる。
ERVも同じく減速を始めている。
ブロンソン「エンジン・システム、すべて正常」
筑前「推力に問題なし」
次第に近づいていく両船。
ほぼ平行に並び、相対速度がゼロになったところで停止する。
その距離はおよそ100m。互いの機体がぶつからないように大事をとった距離だ。