音楽家は”労働者”なのか??ギャラ編
ギャラのお話。
とある市の演奏会の投稿で…
-「気軽に質の高い音楽に親しんでもらうために」
ふむふむ。
-「ロビーコンサートを開催しております。」
ええやないか。
-「それゆえ、出演者のオーディションをします。」
おぉ、選ぶわけか。
-「クラシック音楽で10分程度、ピアノ独奏や声楽については暗譜。」
まぁ”質の高い”と言ってるだけあるわな。
-「応募資格は音大卒業等レベルの方。」
そりゃそうなるな。
-「公開オーディションです。結果は後日郵送します。」
録音審査じゃないのか。こりゃしっかりしとる。
-「なおご出演いただく際、出演料の支払いはございません。」
ございません……
ございません?!!?????笑笑笑笑笑笑
これを友人がSNSで紹介したところ大いに炎上しているみたいでして、
コメント欄でも良い具合の世間のズレが観察でき、
なるほどなぁと思ったり。
で、今回の”音楽家は労働者なのか?”というお話。
先日、こんな投稿をしまして↓
様々な社会人と関わると色々な見方が増えて、
”音楽って素敵”
という結論にしたわけですが、
この社会人経験の道中、
やまほど世間とのズレを痛感します。
”そのズレを自身の成長剤に変え、より良い音楽家を目指そうじゃないの。”
と綺麗に締めくくりたいところ。
ですが…
音楽家=労働者、と認知されるのも非常に難しいのが現実。
「え?音大行ってたの?じゃぁ裕福なんだね」
と言われても怖い顔をしちゃいけないんですよ。
そうです。一般的に考えてめちゃくちゃ恵まれています。
「恵まれているから世間の厳しさとか知らないよね笑」
はい。だから社会人になって痛い目見ましたとも。
それでも音楽を続けるのは音楽家の使命。
恵まれているからこそ、音楽という手段でしか人を喜ばすことが出来ないのかもしれない。
と、謙虚に考えたいものですが…
「ギャラないのは困りますねぇ」と主張をしてしまうこともあります。
「いやいや、お金稼ぎたいなら普通に仕事しなよ笑」
がキラーカードです。絶対勝てないです。
だから私は現在旋盤と溶接しながら音楽に没頭しております。
…
「この楽団は世界全国から愛されているんですよ!」
「それなら公務員じゃなくても今以上に自身でも稼げるやろ」
とド正論をかまされて
一つの大きなプロ吹奏楽団が消えたことがあります。
もう時代ですよ。納得してますよ。
音楽家=労働者と認知されるのは大変なことです。
「え?好きなことをしているのにギャラいるの?」
という感覚。
「よく分からない曲を長々と聴かされてチケット5000円もすんの!?」
という感覚。
クラシック音楽家の宿命です。
J-POPと比べてみましょうか。
この間Youtubeで”YOASOBI”のライブ動画を観ていまして、
「あぁ…こりゃお金払うなら絶対こっちの方がいいわ…」
と思った私がいます。
まず演出がめちゃくちゃ凝っている。
派手でカッコよくて、魅せるところがたくさんある。
で、お客さんも満席なわけです。
お金があれば演出も凝れるんですよ。集客もあればスポンサーもつきます。
そこに「歌がなぁ」とか「口パクがなぁ」という人もいます。
しかし、人気商売は人気になれば勝ちです。
アニソン主題歌を勝ち取ればたーくさん稼げます。
そして今のJ-POPは歌うまいです。めちゃんこレベル高いです。
これは決して簡単な道ではないです。
はい、クラシック音楽はどうでしょう。
お金をたくさん与えて、何が変わるでしょうか。
インスタントに人を喜ばせることが出来るでしょうか?
ホールにレーザー飛ばして映える曲目があるでしょうか。
どこで需要を勝ち取るべきでしょうか。
”音楽”の価値観は皆平等に持っていると思います。
”No Music No life”って書かれたTシャツみたいなもんです。
問題が起きる時は大体”主張”するときの内容の強さです。
「なんかフワっと気軽に演奏会やっているから良かったら立ち寄ってね♡」
という無料演奏会と、
「演奏会やります。チケット代◯◯円です。」
だと、なんとなく受け取り方が変わります。
”表舞台に出ている人ほど謙虚、謙遜を持ってお客様に対応してもらいたい”
という社会的な理想像と、
”私の素晴らしい演奏を聴いてしっかり対価を払って欲しい”
という謙虚どころか承認欲求の塊にしか見えない姿。
”商売”として考えるとどうやってもぶつかる問題です。
今回のロビーコンサート出演料なしの話だと、
運営側は「演奏する機会を与えてあげよう」という気持ち。
それに対して演者は「ギャラないなら無理よ」と思う気持ち。
「お米が余ったからオニギリあげるね」と渡されて、
「美味しくないならいらないわ」と言うような。
「あなたのためにオニギリ作りました」と渡されて
「誰が食べたいと言った?」と言うような。
なんかうまいこといかんなぁという感覚。
「音楽家は生活費を維持するだけでも大変!ギャラ交渉はするべき!」
と、フリーランスの音楽家達が必ず通る道。
確かに全額負担はきつい。せめて交通費でもくれとは私でも思う。
が、
「なーにが大変だ!働け!!」
となるのも当然である。
今は”インフルエンサー”と呼ばれる方々がいますね。
インスタグラムフォロワー100万人です。と言えば、
「あぁ只者じゃなさそうだからちゃんとギャラ払うか」
となるかもしれません。
大事なのは演奏の良し悪しより”影響力”が”商売”に繋がります。
運営側の「演奏する機会を与えてあげよう」という中に、
「この催し物で名前が売れるから良いよね?」が含まれているかも。
演者側は「オーディションまでしてギャラなしってバカにしてる?」
と思うのも当然。
多分バカにしているんじゃなくて”知らない”んだと思う。
知らないことは罪ではない。
だからこそ交渉をするのだ。
で、まともな”交渉術”が出来るのか?って話。
その辺の一般職の営業マンですら”交渉術”が完璧ではない。
しかしノルマがあったり上司から目をつけられている分、
頑張らないといけないのだ。
これは自身の生活のため、給料をいただくための”努力”なのだ。
しかし…
音楽家はズレているので交渉も下手なのだ。
だから余計に扱いにくいというか、
「もうこの書面で納得いく人だけ来てくれ」とお役所仕事になる気持ちも
とっても分かる。
偉そうに名刺だけは作ってヘラヘラしている人。
納得が行かない時、露骨に機嫌が悪くなる人。
自分さえ稼げれば他はどうでも良い人。
自分の”主張”しか出来ず、相手の気持ちを飲み込む気がない人。
で、演奏に自信がない人。依頼が来たからやってあげたみたいな人。
「あぁ、これだから音楽家は…」
という姿を作っているのも音楽家なのである。
そもそも現代、
誰かに舞台を作ってもらった上に演奏だけでギャラを貰おうという考えは、あんまりよろしくない。
演奏できる場があるだけでも、ありがたいと思わないといけない。
それが嫌なら自費で会場を押さえて自分の好きな演奏会をすれば良いのだ。
そうすると集客やスタッフやお金の重さに気付くと思う。
”持ちつ持たれつ”という感覚。
音楽家でどうしても”主張”をしたいなら音楽でね。
それしか方法がないのよ。
最後に、一応私も音楽家なので言い訳しておきますと、
どちらの敵でも味方でもないです。
安請け合いはするもんじゃない。音楽家に限らず。
”友達が美容師だからって無料で髪切ってくれ”ってお願いする話の賛否と同じ。
お金の話になると大体は揉めるもんですな。
また別の記事で続きを書くかも。
とりあえず一旦ここで終わっておきます。
読んでくれてありがとう。
それではまた👋