日常を描く映画『ショーイング・アップ』
『Showing Up(ショーイング・アップ)』という映画を観た。
ただシンプルに日常を描いている映画だった。
と、言っても主人公の職業は芸術家だ。
主人公リジーは、彫刻家で、もうすぐ個展が開かれるという設定。
こう聞くと、どんなイメージだろう。
芸術家と聞くと、何となく洒落ているキラキラとした印象を抱く人もきっといるだろうとは思う。
しかしながら、創造する事は地道な作業の組み合わせで、特別派手な訳ではない。
拘りがあるからこそ、ちょっとした状態の変化で出来栄えがいとも簡単に変化してしまう、繊細な彫刻という根気がいる作品づくりをリジーはしているのだ。
これが現実の「ものをつくる」という事である。
リジーが住んでいる街は、大都会ではない。しかし、それもなかなか現実味がある。
芸術を愛するものは、喧騒から離れた静かな場所で創作したいと感じる人も多い。
集中したいからだろう。
それを証拠に、デジタル機器からの情報を遮断している時間が多いと分かる。
何か産み出すためには、雑音をなくし自分と向き合う時間が必ずいるのだ。
大切なことを伝えている映画に感じる。
個で行う作業が主とはいえ、多くの人々との関わりあいも描いていた。
ああ、こういう事っていかにもありそうだなという描写が続き、ちょっと懐かしく感じた。
私はアート作品を観るのが好きな人だ。
なので西豪州住んでる間も、州立専門学校のアートギャラリーの展覧会とか、良くチラ見しに行っていた。
私の通った大学がここと提携していたので、私も在籍していたから、ちょっとした時間にギャラリー近くを彷徨いて、展示を観るのが好きだった。
展示会が開かれると、無口な人。懸命に作品を説明しようとする人。いろんな人がいて、話を聞いているのが好きだった。
派手じゃなくても、手作り感が良かった。
何となくこの映画の雰囲気が当時の様子を思い出す感じで、リアルに作ってるなと。
本当に色んな人がいて、コミュニケーション方式も趣味も好みも違って、、けれどなんとか共同作業をしなくちゃいけないフラストレーションとそれを処理する過程とか。
そういうのが、ギャラリー近くでも良く散見されたし、私の学業生活でも、グループで行う事はあったため、現実としてそんな時も多かった。
あるあるだよねぇと妙に懐かしい気持ちに。
リジーの身に立つと、大変だろうなあと。
自分の作品は、ある意味自己を投影するものだし、それが不完全に表現されるって嫌な事だろうなとか…
締め切り大変だろうなとか…
メディアの手にかかると、宣伝のために装飾されるので、華やかな世界に見えがちなアートだけど、現実は地味な日常の繰り返しと産みの苦しみがある世界。
実は、派手な世界とは対極にあるし、儲からなくてもただ作るという人もいる世界なのだ。
けど、そういう事も大切なことで、創作がそこから産まれる事もある。
私が関わってきた、ものづくりの世界と交わる部分も多く親近感を抱いた。
もしかしたら、単調で退屈に感じる人もいるかもだけど、日常を描写している点で優れている作品と思う。
『ショーイング・アップ』は、リアルを確認するという点で良い映画だなと思いました。
雰囲気が分かると思うので、トレーラー貼っときます。
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映画を観ることは、英語学習にも役立ちますので鑑賞後はレビューも書いています。