こぼれ落ちて季節は
こぼれ落ちて季節は 加藤千恵
一個前の失恋カレンダーもこの本もまとめて買った本のうちの一冊。
とても失礼ですが、加藤千恵さんという小説家を存じ上げておりませんでした。この本を読んで、私はなんて勿体ない時間を過ごしてきたんだろう。と。もっと早くであっておきたかった。と強く感じました。
この本は2人1組で話が進んでいき、最後には登場人物が絡み合って着地点に落ち着く読みやすいし、スッキリ読める本でした。
この2人1組で話が進んでいくことが初めての出会いでした。年を取ってきて、10代20代前半と違って、この人には同じ景色がどんな風に見えているのだろうと感じることが増えてきて(これが年をとると勢いがなくなると言われる原因なのかなとも思う)。それを小説にしてくれたのがこの本。
男性目線と女性目線どちらも登場して来るので、偏りは若干ありつつも、バランスよく読める感じがとっても楽しいです。読書初心者の人にもおすすめ。ただ、登場人物は結構出て来るので、あんまりきっちり人間関係を抑えようとせず、心の動きに注意しながら読んだら本当に楽しいと思います。
同じサークルの男の子に弄ばれちゃう女の子が出てきて、三角関係みたいになったりとか、小悪魔な女の子に振り回される男の子が出てきたり。そんな小悪魔な女の子はバンドマンに熱をあげているのに本気になってもらえてないとか。同じ出来事を複数の観点から見ることができる。視点を考える上でとても面白い作品でした。
本当はもっと細かくいろんなことを書きたいんだけど、これは読んでもらってはじめて感じるものが多いと思うから読んでほしい。
あの人も私の好きな人のこと好きなのは薄々感じる。でもあの二人の今までの関係性を聞くのが怖い。とか。いつも教室で一人でいる女の子は他の女の子から陰口みたいなこと言われてるけど、本当は羨ましい。とか。思わせ振りな態度されてるのにそれ以上進まないとか。本当にごくありふれた生活や経験を綺麗に書いてあって読んでいてつっかかりがない。気持ちがいい。でも考えさせられることはたくさんある。そんな小説でした。
私が見ている世界は私だけのもので、他の人が見ている世界とは感じ方も考え方も違う。人と人が付き合うのは何かの縁であるけれども、そこにはタイミングも存在しているんだよと最後に突きつけてくれる。そこまで自分が待てるのか、それとも他の縁を自ら探して掴みにいくのか。どっちがいいのかは正直よくわからない。けど、自分の世界だけを考えて動くことは良くないみたいな風潮もある中で、自分の人生一度きりだから他者の視点を知りつつも自分の気持ちに素直になってみることも大切なのではないかと考えました。確かに、自分勝手は良くないけど、人の顔色ばかり伺って自分の思った通りに行動できないっていうのはとっても勿体ないことだと思った。そして、今の日本が窮屈になり始めてしまっているのは、そういった人たちに寛容じゃないこと。自由に羽ばたいている人たちが羨ましくて落とそうとしていることなのではないかと感じた。皆がもっと自由な世界で生きられたらいいのに。
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