日々、というところに 今日も〈12〉
床に猫のひげが落ちていると、
拾い上げて…
捨てられないのです。
拾っては、貯めておきます。
ある日我が家にやってきた
トラのぬいぐるみ。
ある日このトラに、
猫のひげが刺せることがわかり、
ひげを拾うたび、
ここに一本一本刺していくことにしました。
いつの間にか、気が付けば…
トラはずいぶんと立派になりました。
なにしろ、本物のひげですから。
(場所が…ちょっとずれております…
そして方向がバラバラですが…)
この間、
かわいいカタチをした木の入れ物を、
100円ショップで見つけました。
値段は550円でしたが、
見ると…
猫のひげを入れておくための入れ物でした。
猫のひげを拾って貯めておくこと。
その日常が、
あちらにもこちらにもあること。
それが証明されたようで、
なんだか嬉しくなりながら、
この商品を提案した方の熱い思いを、
勝手に感じていました。
「カタチにならない大事な思いを、
カタチにしたい」
そういうもののようにも思えて。
抜け落ちた猫のひげを拾って、
大事に貯めている…
そんな景色。
そんな、猫との日々。
世界のあちこちに。きっと。
ささやかなうれしさと共にある日々。
ささやかなうれしさを思い出せる日々。
ささやかなうれしさを保てる日々。
それは、簡単なようで、難しく、
でも、大きくなく、ささやかだからこそ、
なんとか自分の中から消さずに置いておけるもの
でもある、気がして…
ささやかなうれしさが、
世界中にぽつぽつと。
でも、たくさん。
どうか、消えることなく、消されることなく
誰の日々にもありますように…
ささやかで、
とてつもなく壮大な、
猫のひげです。
あなたのひげの先は
風と同じ季節を生き
足のうらは
土とうまれた時からともだち
からだは
若芽と一緒に伸びをする
そして
そのほほえみは
今日わたしがここにいることを
許してくれた
あなたがいつも
しあわせに暮らせるように
わたしは
あなたのしっぽの先でゆれる
葉っぱになろう
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