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ある日の あの日〈1〉

プロフィール…プロフィール…
そんなことを考える機会がこの夏あって、
私は自分がどんな人なのだろうと、
思い返すことになりました。
けれど、私には、
一般的なプロフィールらしいプロフィールに
書けるようなことは何ひとつなく…。

大学も、ということはもちろん“美大”へも
行かなかったし、
素晴らしい賞を取ったこともない、
関連した職を経てきたわけでもない…。

デパートの掃除のアルバイトをしたり、
都会の真ん中の駅でサンドイッチを売ったり、
突然、山の麓でパンを焼いてみたり、
弁当屋に、居酒屋に、カレー屋さん…
自動車工場でバンパーをはめたり…
なんてことも、ありました…。
右に曲がって、左に曲がって、
まわり道に、遠回り。
どの道を歩いても無駄にはならない!
…ことは知りました。

でも、さあ、困った…。
「プロフィール」……。

右に曲がって、左に曲がって、
まわり道に、遠回り…そんな中でも、
なぜか私は、
いつも絵を描いていました。
大作とは言えない小さな絵だけれど。
そして、
いつも手紙を書いていました。
誰にも出さずに捨てる手紙も。

私はどうして、今日もこうして、
絵と文字をかいているんだろう?
思い返すと…
今も絵を描く私は、
小学校のあの日で、できていました。
今も言葉を探す私は、
毎日毎日、捨てる手紙を書き始めた
あの日が、続いているのです。

学歴、職歴、受賞歴…
何も書けないプロフィール…
「私はある日のあの日で、できている人です」

…………………………………

ある日の私が今日の私につながり、
ある日は「あの日」になります。
生きていると良い日もあるけれど、
悲しく切ないある日も、たくさんあります。
だからこそ、その「ある日」が、
いつか、どうか「大切なあの日」に
なっていきますようにと、
思います。願います。
それもきっと、どこかのある日が、
今の私にそう思わせているのだろうな、
と思うのです。

この夏のある日が、いつか、
どうかすてきな「あの日」に
なりますように。

絵はがき〈2016年8月〉

この夏
彼の見た空は
彼に絵筆を持たせ
彼の休んだ木陰は
彼に木を植えさせ
彼のとなりを飛んだトンボは
彼に共に歩くたのしみを与え
彼が素足をつけた川は
彼にもうひとつの流れをつくり
彼のきいた鳥のさえずりは
彼にうたう喜びを知らせ
彼の踏みしめた土は
彼に次の一歩を教え
彼に降った雨は
彼にセカイを沁みこませ
彼に吹いた風は
彼の背中を押す

彼の一生分の鼓動に
そそがれてゆく
この夏

めぐりあう夏
そして ある日「あの夏」と
呼ばれる

めぐりくる夏の空よ
どうか すこやかであれ

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