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お金の本質と「半沢直樹」批判|『御上先生』第5話
はじめに
毎週、放送されたドラマの感想をまとめて書いていますが、今回も『御上先生』第5話の感想を単独記事にしました。
第5話ではこれまでの重い雰囲気から少し変わり、「お金」というテーマが前面に押し出されました。政治や教育といった社会的な問題を扱ってきたこのドラマが、今回はビジネスコンテスト(ビジコン)を通じて経済や投資商品のリアルに迫る展開に。お金をどう扱うか、お金とは何か――そんな問いが物語の軸となり、新たな視点を提示してくれました。
回を重ねるごとに変わるテーマ性、揺れ動くキャラクターたちの心理描写、そして時事問題を絡めた巧みなストーリーテリング。『御上先生』は単なる学園ドラマの枠を超え、視聴者に鋭い問いを投げかけ続けています。
前回の第4話では、「教科書検定」を巡り、戦争の歴史認識や教育の在り方について激しく議論が交わされました。御上先生(松坂桃李)が政府の圧力にも怯まず、「それぞれの正義」について問いかける姿勢が、視聴者の心にも強く響いたのではないでしょうか。理事長や文科省の圧力が強まる中で、御上先生と生徒たちはどのように次の一手を打つのか、緊張感が高まる展開でした。
そして迎えた第5話。今回は今までの「政治」「教育」「正義」といったテーマから一転、「お金」というテーマにスポットが当たりました。ビジネスコンテスト(ビジコン)を通して描かれる経済の仕組み、資本主義社会のリアル、そして「お金=信用」という概念。ここまでストレートに金融の話が出てくるとは予想していなかったので、少し驚きましたが、政治とお金が密接に結びついていることを考えれば、避けては通れないテーマだったのかもしれません。
また、神崎(奥平大兼)と弓弦(堀田真由)の関係性にも大きな進展がありました。弓弦の過去が徐々に明らかになり、彼女が抱えてきた痛みと向き合う展開に。神崎が彼女とどう向き合い、どのような言葉を紡ぐのかが見どころのひとつでした。そして物語の終盤には、御上先生の兄に関する新たな火種が……。次回以降の展開に向けて、大きな伏線が張られた回でもありました。
今回は、そんな第5話の内容を振り返りながら、物語のテーマやキャラクターの成長、そしてドラマが投げかける問いについて深掘りしていきたいと思います。
どうぞ最後までお付き合いください!
▼過去の記事はこちら
ドラマ「御上先生」について
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TBS 日曜夜9時
文科省のエリート官僚が高3の担任教師に!
“官僚教師”が行う独自の授業とは!?
令和の18歳と共に日本教育に蔓延る腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリー!
主演:松坂桃李
出演:吉岡里帆、岡田将生、迫田孝也、臼田あさ美、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
第5話のあらすじ
神崎(奥平大兼)が御上(松坂桃李)と共に、ついに弓弦(堀田真由)と面会できることに…。明かされる弓弦の過去。心を閉ざす彼女に神崎はどう対峙するのか!?
一方、3年2組は高校生ビジネスプロジェクトコンクールに向けて動いている。しかし、ここにも大人社会の権力の構図が影響していた。生徒たちは、忖度をもぶち破るプレゼンを目指して議論を深めていくのだが…
生きていく上で、考えなくてはならないことが詰まったエピソード、そして、御上に突きつけられる試練…
第5話の振り返り
第5話、テーマや雰囲気がガラッと変わりましたね!?
今までは「教科書検定」を通し、原爆投下へのアメリカと日本においての扱いの違い、「それぞれの正義とは何か」を痛切に訴えていました。
日本教育や文部科学省に物申したのも前回。
分かりやすく喧嘩を打ったので、理事長も文科省側の人間も、次の御上先生や生徒たちの動きに注意を払っていました。釘もさしていましたね。
そんな流れもあり、今回は御上先生、静観しているシーンが多く感じられました。
第5話は、御上先生の助言や活躍というよりも、「御上先生から影響を受けた人々」の活躍が目立ちました。
生徒たちはもちろん、是枝先生に、神崎くん。
神崎くんに至っては、「あとは自分たちで考えられるよね?」って言い方もトーンも、御上先生が乗り移っているかのようでした。
今回の大きなテーマは「お金について」
今まで、「教育」「政治」「正義」ときていたので、いきなり「お金」が出てきたのには正直驚きました。
政治を語っているわけですから、「お金」と切っては切り離せないのは、そりゃそうですよね。
今までとても重い空気で進んできましたが、第5話は生徒たちによるビジコンのシーンが多く、今までよりもポップな雰囲気でした。
中盤ということで、これから最終話まで駆け抜けるために、一度ガス抜き的な回だったのかもしれませんね。
とはいえ、一般的なドラマの小休止とは違い、休止はしていません。全然していません。
「1秒たりとも無駄にしねぇぜ」精神が守られつつの、少し力抜いて観られるようにしてる感じ。さすがです。
神崎と弓弦がついにご対面
弓弦のシーンはさすがに重め。
神崎くんと弓弦が対面したことで、弓弦の過去が紐解かれます。
神崎くんが冴島先生のゴシップ記事を出したのは、父親を見返すため。
弓弦の父親はDVだった。そして弓弦が殺した受験生も、過去に父親からのDVを受けていた。
神崎くんと弓弦は、どちらも父親に対して憎しみの気持ちがあるのでしょう。
そんな2人の前で御上先生は、少年テロリストの話をします。
ピザを買ったことのない貧しい少年が加害者で、たまたまホテルに居合わせた少し裕福な人たちが被害者。
だけれど本当に悪い奴はそこにはいない、と。
大勢の人を虐殺することはもちろん悪いこと。でも、なぜそうなってしまったか?考える必要があります。
殺されてしまった生徒は裕福で幸せに見えていたのかもしれないけれど、彼も父親から酷い扱いを受けていたことを、被害者の母親は知って欲しかった。
だとすればなおさら、冴島先生がいなくならなかったら、この悲劇も起きなかった可能性が高いと思うので、冴島先生が本当に不倫をしていたのか、それともハメられたのかは重要なポイントになりそうです。殺されてしまった生徒は裕福で幸せに見えていたのかもしれないけれど、彼も父親から酷い扱いを受けていたことを、被害者の母親は知って欲しかったのでしょう。
だとすればなおさら、冴島先生がいなくならなかったら、この悲劇も起きなかった可能性が高いと思うので、冴島先生が本当に不倫をしていたのか、それともハメられたのかは重要なポイントになりそうです。
神崎くんの「でも、自分の責任だって思わないと、進めないから」と言う言葉がとても頼もしかったです。
弓弦の心にも響いたのではないでしょうか。
御上「でもつらかったよね?唯一信じていた母親に裏切られ、母親がいなくなった家で父親になじられ続けた。彼の性質を考えると、暴力があったかとしれない。つらくないはずがない。」
神崎「渋谷加奈子さん、分かりますか?会ってきました。伝えて欲しいって言われたんで。『今、1番憎い人は誰かと言われたら、間違いなく、真山弓弦と答えると思います。息子のいない部屋で、あなたの極刑だけを願い、私は生きながら死んでいます。だから、あなたに言いたいことなんて、何もないと思ってた。ただ、消えてくれればいいと。でも、神崎くんに、何か言いたいことはないかと聞かれた時に、どうしても、伝えたいことがあると気付きました。新聞やテレビを通して、あなたがどんな境遇で生きてきたか知った時、私は、どうしてあなたがあんなことをしてしまったか、分かったような気がしてしまったのです。あなたがいた場所は、私とゆうすけが、逃げ出してきた場所とすごく似ていたから。弓弦さん、あなたが刺した人の背中には、父親が押しつけた、タバコの跡があるのよ。私は、それをどうしてもあなたに伝えたいと思ったのです。そしてこの手紙を書きながら、あなたがなぜそんなふうになってしまったのか、考えずにはいられません。考えたくない。でも、考えずにはいられない。多分、これからも、ずっと。』この人が考えてる、考え続けてる。だから、僕たちは辞めて良いわけはないんです。」
弓弦「偉そうに。がきが。」
神崎「偉くねぇよ。俺も、あんたも、同罪だっつってんだよ!」
御上「ある映画で、公共ホテルが少年テロリストに占拠され、客が次々に殺された。でもその虐殺の最中、テロリストの少年が、客の買い残しのピザを食べるんだ。多分、生まれて初めてのピザだ。彼はそのあまりのそのうまさに、無邪気に笑い出す。自分が虐殺した死体の前で。本当に悪い奴は、きっとそのホテルにはいない。そこにいるのは、ピザを買ったことのない貧しい少年と、たまたまそこに宿泊した、人よりちょっと金のあるだけのただの客だ。」
神崎「本当に悪い奴は、ここにもいないって言ってくれてるんですよね。でも、自分の責任だって思わないと、進めないから。俺も、弓弦さんも。弓弦さん、冴島先生は本当に、不倫してたと思いますか?僕は信じてます。僕が知ってるあの人は、そんなことする人じゃない。」
リーマンショックと父親への思い
父親に対する思いと貧困について語られた後で、生徒たちのビジネスコンテスト出場の話へと続きます。
ビジコンに出たいけれど、歴代優勝者には偏りがある。
大人の事情ってやつが絡んでいる。
そんな中、優勝するためには、忖度をも圧倒するアイディアが必要。
良きアイデアを出すために、今回も生徒たちによる話し合いが行われました。
今回は、お金に対してのアレルギーを持っている、是枝先生がファシリテートを務めます。
こんなに優秀な学校に勤めている先生が、そこまでお金アレルギーってことある!?今時もう少し投資とかしてるのではないか!?
私でも、知識はそこまでないけど、投資信託してるぞ!?というツッコミは抑えつつ。
是枝先生の「お金はただの紙だけれど、お金をお金たらしめているのは信用」という言葉がとても良かったですね。
お金として使えるからこそ価値があるし、そのお金を渡すということも、そのサービスや人を「信用」している証。
信用しているからこそ、お金を渡すことができる。
是枝「私、こないだみんなと話してて気付いたことがあって。これをお金にしてるのは、私たちなんだってこと。だってこれ、ただの紙じゃないですか。紙で作ったもので、物が買えるようにできたのは、それがまたお金として利用できるっていう約束が守られると信じてるからなんだなって。私これまでずっと、お金って汚いものと思い込んでました。でも、信じるってことの具現化なんだなって思ったら、何かお金って、人間ってすごいなって。」
是枝先生から促され、冬木は、父が外資系の投資銀行でマネーゲームのど真ん中にいて、リーマンショックの渦中にいたことが明かされます。
そして、ビジコンで金融商品を作りたい理由を、「父親の思いを叶えるために、金融商品を作りたい」と述べました。
冬木「金融は本来の使命を忘れてしまったって。俺の父親は、その一商人になってしまったことを後悔していて。もし俺たちが、良い金融商品を作れたら、ぜひ協力させてほしいって言ってた。父親の思いを叶えるためにも、金融商品作りたいなって思ったんだよね。」
リーマンショックについての説明は下記の通り。
正直リーマンショックの詳細は知らなかったー!勉強不足……!!
冬木
「俺の父親は、外資系の投資銀行で、マネーゲームのど真ん中にいた人だったんです。」
「リーマンショック、分かるよね。あれで大きな損害を出して、日本法人自体がなくなっちゃったんだよね。」「2000年代最初の頃のアメリカは、住宅ブームだった。本来なら住宅を変えないサブプライム、返済能力が低い人たちって意味なんだけど、そういう低所得層の人たちも、普通より高い金利を払えば、住宅ローンを組めるようになった。それがサブプライムローンなんだけど、不動産が高騰してるから、もし返せなくなっても、売れば返済できるでしょ。そこに投資家が目をつけた。」
「つまり、サブプライムローン自体を投資商品化したってわけ。借りた人の金利が、投資家のリターンになる仕組みなんだけど、絶対損しない投資商品ってことになって、どんどんどんどん市場が膨れ上がっていったんだよね。なのに住宅バブルが弾けて、家が売れなくなった。それでサブプライムローンを組み込んだファンドに、多額の投資をしていたリーマンブラザーズの業績が悪化して、倒産した。それに連鎖して、世界の金融市場が冷え切ったんだよね。」
前回の「教科書検定」の時もそうだけれど、今回も、「父親の仕事を見て、父親の悔しさを晴らすため」という理由が根幹にありました。
父親への憎しみを原動力にしているのではなく、父親の悔しさを原動力にしています。
今回、ずっと親の話が出てきているので、神崎や弓弦と比較してしまいました。親への思いが変わっていれば、未来もきっと変わっていただしょうね。
ビジコンでの『半沢直樹』批判
隣徳高校は初の快挙で、無事に最終審査を通過します。
決勝プレゼンの内容もビジコンの内容も他を圧倒し、見事優勝することができました。
以前の『金八先生』批判に続き、今回は『半沢直樹』への批判は、視聴者の心に残ったでしょう。私の頃にも残りました。
「金融の本当の意味を教えてくれない」と批判しています。
エンタメとして、『半沢直樹』は素晴らしい作品ですし、大好きで毎週観ましたけどね。けれど、確かに、金融の知識は増えませんでした。
その上で、「金融の本来の意味、それは、信用と助け合い」と訴えます。
「投資先でどのように使われているのか。果たして社会にとって良い商品やサービスなのか、きちんと考えようよ」と伝えました。
『御上先生』『金八先生』『半沢直樹』この作品はどれもTBS制作。
どれも名作であり代表作とも言えるようなドラマですが、自社制作のドラマを立て続けに批判するとは!!!
「ただのエンタメにはしないよ」という意気込みを感じます。意気込みだらけのドラマだな!
冬木
「金融マン同士で倍返しし合ってる場合ではありません。学校も、金融ドラマも、僕たちに金融の本当の意味を教えてはくれない。金融の本来の意味、それは、信用と助け合いです。お金とは、信じることが形になったものなんです。僕たちは、金融の1番始まりに立ち戻りたいと、そう思い、このプランを作りました。」
暗い表情の御上先生と次週への布石
そんな大喜びの生徒たちや是枝先生なのに、御上はとてつもなく暗い顔。
裏がある顔していた!その顔は怖すぎなのだが!
あんなに闇抱えた顔できる??
そんな御上先生の様子に気付きつつ、神崎が声をかけます。
神崎
「昨日、父親からきいたんだけど。明日、あんたの兄さんの件、雑誌に出るって。」
御上「もう、終わったことだ。」
神崎
「終わってないでしょ。俺があんただったら、そんな簡単に終われない。俺はもう大丈夫だから。だから次は、あんたが。」
冴島先生や、弓弦、そしてクラスメイトとのやり取りも通して、神崎くんめちゃくちゃ成長してますね!!!
今まで、父親が社会で感じた悔しさや果たせなかった思いを胸に、生徒たちは原動力として動いてきたわけで。
そうなるとやはり御上も、兄が果たせなかったことを果たしたいという気持ちがあるのでしょうか。
来週は、御上先生が兄のことについて、生徒たちに打ち明けるよう。
兄には一体どんな闇があったのか。どんな果たせない思いがあったのか。
とても気になります。
神崎くん始め、生徒たちや是枝先生がとても頼もしく成長しているので、そんな生徒たちに、御上先生が逆に救われるパターンもありそうですね。
来週もとても楽しみです。
ドラマ記事まとめマガジン
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