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【神様、世間様/尾崎世界観】本語り#07

はじめに

クリープハイプの歌詞が好きだ。
「世界観」が好き。物事の切り取り方が好き。女性目線な歌詞も好き。たまにちょっとエロいのも良い。

加えて、ギター弾き語りもしているので、コードが比較的簡単な曲が多いのも初心者の頃はとてもありがたかった。

バンド・クリープハイプのギターボーカルを務める尾崎世界観さんは、文筆の才能もあることは以前から存じ上げていた。
2020年『母影』で第164回 芥川賞の候補となり、2024年は『転の声』で、第171回芥川賞候補となった。

そんな尾崎世界観さんの文章に、久しぶりに触れた。
それは『ベスト・エッセイ2022』に掲載されていた。
近頃エッセイを読むことにハマっている私は、『ベスト・エッセイ』を月に1冊ペースで読もうと心に決めている。
そんな『ベスト・エッセイ2022』の中の『マイ・ベスト・エッセイ』は尾崎世界観さんの作品だ!と断言する。



心に残ったフレーズ

別れ際を気にしてしまう

子供の頃から人との別れ際に苦手意識を持っている。
友達の家で遊んで帰る間際、別れ際、さっきまで隠していた表情を見せるんじゃないか、本当は自分と遊んでいてつまらなかったのではと疑いの目を向けてしまい、あっちを向き切るその表情が気になる。

夏休み、田舎のおばあちゃんの家まで遊びに行った帰り、空港で見送りの際。

収録、雑誌の撮影を終えると、いつもスタッフの方が見送りに来てくれる。エレベーターが閉まるまで頭を下げてくれるスタッフの方を、こちらも頭を下げながら気にしてしまう。ドアが完全に閉まり切るより先に向こうがスイッチを切る瞬間を見たくないからだ。

神様、世間様/尾崎世界観

「別れ際」を気にする着眼点。
クリープハイプの歌詞にも、「そこを切る取るのかー!感服!」と思う箇所が多々あるが、文章にも通ずるものがある。
「そこは気にしない方が、生きるの楽なのに」と思いつつも、気になってしまう人は多いのではないだろうか。

私もその一人。
鍵を閉める時のガチャッいう冷たい音が苦手だ。
田舎育ちて鍵を閉める音にあまり縁がなかったが、今は賃貸物件に住んでいるので、鍵をかける側になってしまった。
配達員さんが来て扉を閉めた後、自分が閉める音も実は気になっている。

苦手だと心の中では思いつつ、そっと蓋をして気にしないふりをしていたが、尾崎世界観さんに痛い部分を掘り起こされてしまった。
こういう、日常で見過ごしてしまう部分をキャッチしてしまうのが、さすがである。

実家に行って帰る際、両親はわざわざ外まで出て、見えなくなるまで手を振ってくれる。
よほどのことがない限り、必ず外に出てくる。
雨の日も、雪の日も。
そういう些細な部分に感謝せねばという思いと、そんな両親に育ててもらったという自信が湧いてくる。
私も両親のように、別れ際最後の最後まで気を抜かない人でありたい。

送られる側も、最後の最後まで気を抜かないようにせねば。


別れ方だって上手じゃない

思い返せば、上手に別れた事がない。恋人とはぐちゃぐちゃになり、ほとんどのアルバイトを逃げるように辞め、長年住んでいた家もバタバタと出ていった。つくづく、自分は終わらせ方が下手だと思う。

バンドメンバーとの関係もそう。今まで野球チームを作れるほどのバンドメンバーが辞めていった。その都度、こじれ、ねじれ、諦め、不貞腐れる。それでもバンド本体を解散せずどうにか続けてこられたのは、別れ際に対するこの不信感があったからだと思う。

あれだけ人生を懸けて打ち込んだ夢が、こちらに対してスイッチを切る瞬間を見るのが怖かった。自分はこんなものに懸けていたのかと、絶望するのが嫌だった。それからだってバンドを辞めてしまえるタイミングは何度もあったけれど、その度に思いとどまった。

神様、世間様/尾崎世界観

ぐさぐさきた。あー、ぐさぐさきた!
私も、別れ方は決して上手ではない。
恋人とキレイに別れるなんてなかなかできない。

そして問題は、趣味に関してだ。
一つのことにガッとのめり込むタイプであり、飽きっぽい。
熱中している時は周りが引くほどの熱量でその物事に取り組むのに、飽きると一気に冷めてしまう。

一人でできる趣味であれば良いが、他人が関わっていることは大いにある。
そんな時、「もう辞めます」とキレイさっぱり言えれば良いのに、言えない。
誘われると、なかなか断れない。
そして結局迷惑をかける。
良くない。絶対に良くない。と言うかむしろ余計に迷惑をかけている。

上手な終わらせ方を知りたい。
自分の気持ちだって全部分かるわけじゃないから、白黒つけるのも難しい。


最後に

尾崎世界観さんについて調べてみると、まだ手に取ったことのない本が何冊も刊行されているようだ。
マイ積読タワーがさらに高くなった。

そして、よもやま話として「クリープハイプの歌詞」についても書こうと思っていたのですが、思いの他長くなったのと、エッセイ本についても触れたくなったので、別の記事で近々公開いたします!

ではまたー!


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Mii
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