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【読書】選択権を持たない子供たちの海外駐在帯同〜『Masato』を読んで

こんばんは。12月に海外駐在帯同予定のmiiです。

所属している駐在ファミリーのオンラインコミュニティで、
『Masato』(岩城けい)という本を紹介して頂きました。

これがまあ、私の心にズサズサズサズサと刺さってきたので、
今日はこの本を読んで考えたことについて書きます。

【あらすじ】

主人公は小学5年生のMasato。父の海外駐在に帯同してオーストラリアにやってきた。言葉や文化の違いによるいじめや差別に、もがき苦しみながらもMasatoは自分の居場所を作っていく。しかし、Masatoの家族もそれぞれが異文化、異言語での苦しみを抱えている。
異国で学校や家庭での葛藤を経験してMasatoが成長していく物語。

【感想】

1,選択権を持たない子供たちの海外駐在帯同

主人公のMasatoはオーストラリアに来て、まったく英語が話せない状態で現地の小学校に通います。はじめは言葉も分からず、見た目や文化の違いをクラスメイトにからかわれたりしていじめにあうが、徐々に仲良くなる友達も出来たり、言葉も理解して話せるようになることで、居場所を作っていきました。

まず、この入学~友達出来るまでの時期の描写が読んでいて辛いです。
これ、「子どもはすぐに馴染んで言葉も話せるようになるよ。」ってよく言われるけど、それは大人から見える部分でそうなだけであって、実際は簡単じゃないと、しっかりと心に留めておこうと思いました。

大人は辛い時にそれを表現する言葉を持っているし、
これは自分がいるべき場所ではない、自分の心がもたないなど、自分で自分の様子を評価する判断力もあります。
なんだったら自分の力でその状況を変えられるし、変えられることを知っています。

でも、子どもは上記のような力や知識が未熟です。
それに、もし上記のような力や知識があったとしても、決定権を持つのはいつも大人なのです。

とても耳が痛いです。
私は、今回夫の駐在帯同に行く判断に子供の意見は含んでいません。
私達大人が考えて、「家族で一緒にいた方が良い」「海外経験は子供たちの発達にプラスだ」と考えて駐在帯同を決めました。
我が家の子供たちは3歳と2歳です。
「外国」の存在さえ知らない彼らにこの相談をすることはできません。

だから、大人たちが大人たちの考えで下した判断に、なんの事情も知らされずに巻き込まれる選択権を持たない子供たちに、私は最大の感謝と尊敬を持って接していこうと思います。
せめて、彼らの現在の笑顔を、渡航後も出来る限り守れるように。
彼らの気持ちから目を逸らさずに、成長を見つめていきます。

2,主人公と、母親のどちらにも共感

今回は小学5年のMasatoが主人公なので、そちらに感情移入をしながら読みました。

Masatoは、休日に親友から誘われたサッカークラブに行ってサッカーがしたい。

でも、Masatoの母親は、将来のことを考えて休日に日本語の補習校にMasatoを行かせたい。

この両者の気持ちのぶつかり合いがすごくリアルでした。
現に起こってそう。

そして、大人って勝手だよなって思いました。
(自分も大人の一員なのに)
現地語になじめるかと不安になり、それが軌道にのったかと思いきや日本語を忘れまいかと不安になる。
でも、Masatoの母には「そうだよね~。」と、私は渡航前の身にもかかわらず共感しまくりでした。

ただ、自分の「好き」を潰された子供はどうなっていくんだろう。
やっぱり挑戦しよう、やってみよう、やりたい、っていう気持ちが湧きにくくなってしまうのでしょうか。

子どもの「好き」を尊重したい。
いや、全部は無理かも。でも、できる限りは……
と、私も葛藤は続きそうです。

3,日本の友達と疎遠になっていく切なさ

両親の擦れ違いからケンカに発展し、「まさとは日本に連れて帰りますからね!」と叫んだお母さんに対して、Masatoが叫んだシーン。

「いやだ!」
 ぼくはひとことそう叫ぶ。(中略)
来年はこのままここで、みんなとハイスクール行くんだ、って言いかけてやめる。
来年は、補習校もやめて、サッカーにもどるんだ、って言いかけてやめる。
翔太も拓也もメールしたってスカイプしたって、ぜんぜん返事がこない、ぼくのことなんかとっくに忘れてる、もう友だちじゃない、こっちの友だちが友だちだ、っていいかけてやめる。
いままでみたいに、嬉しいとか悲しいとか、それからさびしいとか言っても恥ずかしくならない、澄んだ声が出ない。帰るんなら、お母さんひとりで帰ってよ!って叫んでぼくはリビングのドアを思いっきり閉めた。

本文より

日本の友だちともだんだん疎遠になっていくところが、辛い。

わたしがMasatoみたいな寂しい気持ちになったのって、もっと大人になってからだったように思います。社会人になって、高校や大学の頃の友人とだんだん連絡が少なくなっていったあの切なさ。

でも、子供の頃の別れの方がより残酷なのかもしれない。
日本の同級生の子たちも、日常の刺激に目が向いて、遠くの友だちのことには目が向かなくなっていてしまったのでしょう。

それから、本文の「っていいかけてやめる」っていうところも、切ない。
今まで本人の中で感じて貯めていた寂しさや怒りを、言葉に出すことではっきりさせてしまうことが嫌だったのでしょうか。
また、お母さんに伝えても仕方ないって思ってしまったのでしょうか。

どちらにせよ、自分の気持ちを言葉にして認めてあげられていないところが、自分で自分の気持ちを癒せていなくて辛い。
「自分で辛い時は辛いって言っていい」とすることの大切さを最近身に染みて感じている所だったので、とても心に残りました。

【まとめ】

この本を紹介してもらったオンラインコミュニティの中で、
「この本は海外駐在家族の必読本なんじゃない?!」と盛り上がりました。
ほんと、起こりうる問題が次から次へと出てくるんですよね。面白い。

それから、続編の『Matt』という本も出ています。Masatoが17歳になり、状況がよりシビアになったことで、文章がさらにズサズサ突き刺さってきます😢
ぜひ、メンタルが整っているときに読みましょう。


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