人間味のあるデザイン展:マル秘展に行ってきました。
マル秘展に行ってきました。日本・デザイナーズ家具探訪を始めてからより行きたくなった展示会。なんというか、ただ、世にあるプロダクトの原画を見るだけではなく、それを生み出した人たちの人となりや、想い、そして、これからの未来への継承など、とても人間味を感じられる展示でした。
全てのプロダクトはもちろん異なり、創り手のアプローチも全く違う。同じなのは、『思考』と『試作』の連続、『諦めない気持ち』。
メモ、スケッチ、日記、手帳などアイデアを描く形も、文章なのか、スケッチなのか、ラフスケッチなのか、緻密なスケッチなのか、展示の仕方にも個性が溢れていて、一人ひとりの性格まで窺い知ることができました。(想像ですが)
ここで、たくさんの展示と多岐にわたるプロダクトの中でも、私が気になったいくつかをまとめてみようと思います。
柏戸イスの模型
天童木工・1961年
当時活躍していた横綱の名を冠した作品。重厚な存在感もさることながら、寄木による成形であることに上品さも感じられて、美しい佇まい。
ヤクルトの容器
ヤクルト・1968年
元々はガラスの瓶で、今も存在するヤクルトレディー達に配達されていたそう。プラスチックに変えたことで、どこでも気軽に買えるようになり、流通の拡大、作業の削減、とビジネスインパクトは大きかったはず。
松本哲夫(建築家・インテリアデザイナー)
そもそも大学が同じで親近感が湧いてしまったのと、毎日息子とお世話になっているヤクルト容器が時代と共に変わっていることに身近さを覚えた。これからは脱プラスチックの時代。また新しいヤクルト容器が登場するのだろうか・・・。
Suica改札機プロトタイプ
東日本旅客鉄道株式会社・2001年
当時、『世界に先駆けて』という言葉をよく聞いていたと思い出した原画。タッチ面を13.5度手前に傾けたデザイン、というのは意識していなかったけど、それによって私たちの手にフィットしたスムーズなタッチを実現していることに感動。ユーザー視点の大切さを改めて知る。
山中俊治(デザインエンジニア)
この人のスケッチはとても美しくて繊細。リアルなものがすぐにイメージできるくらいの完成度の高いスケッチに魅了されている人が多かった。ここに展示されているスケッチの前段階がまだまだあるのだろうか・・・。そう思うほどに思考の途中段階であろうスケッチまでも美しい。
高輪ゲートウェイステーション
隈研吾(建築家)
折り紙からインスピレーションをうけて様々な思考と試作を繰り返してきた様子が窺える。スケッチではなく、文章と模型でのアプローチがメイン。ここにはきっと一部の展示だろうと想像すると、ものすごい数のプロトタイプがあるんだろうな。大御所なだけに、唯一一人だけの溢れんばかりのメモの展示に圧倒されました!
カプセルホテルのプロセス
9h ninehours ・2007年
カプセルユニットの製造とアメニティなどを開発。女性ならではの感性で、コロンとかわいらしいデザインに惹かれます。
柴田文江(プロダクトデザイナー)
オムロンの電子体温計や照明デザイン、クラシエのシャンプーボトルなど、全体的にコロンとしたフォルムが印象的なデザイナー。少し北欧っぽさを感じられるデザインは、女性心をくすぐるのできっとファンが多いはず。
身近なロゴたち
松永真 ( グラフィックデザイナー)
写真に収まりきらなかったが、たくさんの身近なロゴデザインを手掛けている。独自の手帳(超分厚い!半年で一冊)を作って、そこにアイデアを書き溜めているよう。手帳からその思考の連続を垣間見れる。
メモのスクラップブック
鈴木康広(アーティスト)
隣り合ったイメージが思わぬアイデアを誘発する。という考え方が面白い。アイデアがなかなか浮かばない中で、こうやって試行錯誤して作っている過程はとても参考になる。ちなみに、ページを半分に折ると、時系列を超えてメモが出会う仕組みで、さらにアイデアを飛躍させることができる。
完成したものだけを見ていると、どうも無機質だったり、どうしてもそこに人間が関わっていることを感じられなかったりする。そしてそれは、完成度が高いほどそんな風に感じたりもする。今回の展示ではまさに裏側を見ることができて、『ひと』を思いっきり感じることができました。これからは、ひとが生み出している一つ一つのものにもっと使い手としての責任を持とう、と思います。
ではまた。