まだまだいける!戦略としてのデザインで、アメリカ人のハート💜をゲット
こんにちは。ニューヨークでデザイナーをしている mihomi です。今回は、今年二月、ニューヨークのジェトロにて、早稲田MBA教授と学生の皆さんに発表させていただいたプレゼンです。ニューヨークで活動するプロフェッショナルからの目線で何か、と言うリクエストをいただきました。初めての登壇で困惑しながらも、デザイナーとして私がニューヨークで知り得たものを、ビジュアルを使い、楽しく、わかりやすく、まとめてみました。
アメリカ進出を目指している日本企業の方、スタートアップの方々へ、少しでもプラスになればと思いアップします。そしてこの素晴らしい機会を与えてくださったジェトロの中沢さん (当時) に心より感謝します。
皆さんこんにちは、ようこそ!
mihomiデザイン ファウンダー、チーフデザイナーの宮田と申します。
唐突ですが、皆さんは今アメリカにどのくらい日本の企業があるかご存知でしょうか?わからないですよね、私もわからなかったんですよ。で、調べましたところ、外務省の統計で、2017年で約8600社。で、民間のデータによりますと、去年は約4000社もの日本企業がグローバル化を目指し、新規でアメリカに進出し、その数は年々増えているということです。増えてはいるんですけれども、アメリカに住むいち消費者として、それを実感することはあまりありません。
なので本日は "まだまだいける!戦略としてのデザインで、アメリカ人のハート💜をゲット" と題しまして、日本企業がアメリカで更なる発展を遂げる為の重要点を、デザインやマーケティングにポイントを絞って、楽しく、わかりやすく、説明させていただきたいと思います。
1. 見た目が大事!
What you see is what you get = 額面通り
先ず、いきなり一つ目の重要ポイントです。見た目が大事、と 言うことですね。
アメリカ人が良く使う言葉で、”What you see is what you get” という言い回しがあります。直訳すると、見たものが手に入るもの、ということです。
これは、元々 IT 用語だったのですが、今ではその域を超えて、普段の会話の中でも広く使われるようになりました。
アメリカ人とっては、分かりやすくてロジカルなものが腑に落ちる、という事ですね。日本の ”空気読もうよ” という文化とはかなり違います。
ぶっちゃけ何が好き? アメリカ人の好みを理解しよう
じゃあアメリカ人が好きなものって何なの?と言うことですが、で、こちらをご覧ください。かなりインパクトのある二人ですね。こちらは、ジェニファー・ロペス と シャキーラさん と言う、アメリカのシンガーです。ラテンアメリカンですね。
Wow ですよね。お二人は、今月の初め、アメリカ最大のスポーツイベントであるスーパーボウル、国民的行事と言われます、アメフトのファイナルですね、こちらのハーフタイムショーに出演しました。このど派手な衣装と、このど派手な女性のパワーを盛り込んだパフォーマンス。ここに、一般的なアメリカ人の支持する要素がすべて凝縮されている、と私は思います。
では、どう言う事かと言いますと、
こちらです、
• 理解しやすい
• 見た目がアピーリング: Entertaining, Controversial, Eye Catchy
• カラフル
• 大胆: Cool, Sexy
• ソーシャルムーブメントへの理解: Politically Correct, Diversity, Female Power, Equality, etc.
• ポジティブなメッセージ性
で、具体的にこのようなキーワードが、企業のプロモーションでどのように使われているのかを見ていきましょう。
こちらはエンゲージメント率がとても高かった、タックスリターンをサポートするソフトウェア会社のコマーシャルです。今年のスーパーボウルで放映されました。このスーパーボウルのコマーシャルのエアースポットは、獲得するのがとても難しくかなり高額です。30秒で6億円とも言われています。
で、このCMには、私も、僕も、あなたも、我々はみんな納税者ですよ〜 と言うメッセージが込められています。
まずはご覧になってください。
。。。はい、いかがですか?かなり洗脳されますよね。英語が母国語でない人にでも、このキャッチーな音楽、アメリカではジングルって言うのですが、にユニークなダンスをコンバインして、効果的に使っているかと思います。健常者や、そうでない方、いろんな人種の方が含まれています。そして先ほどの重要ポイント、アメリカ人が好きなもの、が全て含まれています。
では、もう一つ、分かりやすいサンプルを見てみましょう。こちらはコカ・コーラ社のホームページです。ランディングページと言われる最初のページでとても重要なものです。左が日本で、右がアメリカのものです。
同じ会社でありながら、アプローチが全く違いますね。日本のは、日本の女優さんを使ったほんわかした優しい印象で、アメリカのは、アメリカでは大人気の(日本ではあまり人気ないですよね)チェリーバニラコークを全面に押し出した、大胆でわかりやすいアピールになっています。
で、これは、アメリカのコカ・コーラ社が、日本とアメリカのマーケットの違いをかなり意識して、日本人ウケするホームページを作った、という事ですね。つまり、アメリカ進出される企業は、これの逆、アメリカ人受けするものを作る、ということが大切です。それには、アメリカ式のマーケティングとブランディングの重要性、必要性を知る、という事に繋がります。
2. まだ日本式ですか?
知らないでは済まされないアメリカ式マーケティングと、
ブランディングのアドバンテージ。
高品質だけでは生き残れません。
私はマーケターではないので詳細については触れません、というか、触れられません。正直、皆さんの方が私よりお詳しいと思います。でも、一般的に ”日本のマーケティングとブランディングは、アメリカのそれと比べるとかなり遅れている" と言われています。私が以前働いていたニューヨークのテックカンパニーでは、マーケティング部はCMOを筆頭に、合計12名、で構成されていました。
また、現在のお仕事で、スタートアップやスモールビジネスへのブランディングはもちろんのこと、最近ではソーシャルメディア向け、のパーソナルブランディング、なども案件に上がって来るようになりました。それだけこちらでは、ブランディングの重要性が広く浸透しています。
でも、日本ではまだその、重要性の認知度、が低いようです。では具体的にはどう言う事でしょうか?
WHY マーケティング?
マーケティングは、商品やサービスを売ること、儲かる事を目的に、売るための製品開発、市場調査、ブランディング、広告・販売から物流まで、全てを含めて顧客が買いたくなる気持ちを駆り立てる戦略・戦術を立てること。
そもそもマーケティングとは、物やサービスが売れる仕組みを作り出す、という言うことで、逆に言えば、マーケティングなしでは、売上、利益の向上はありえない、と言うとても重要な戦略です。
しかし、日本ではそれがうまく機能していない、と指摘されています。こちらがその理由です。1から4までたくさんあります。
日本企業におけるマーケティングの実態
1. ものづくり大国日本の歴史において、プロダクトありき、広告に限定されたマーケティング戦略が中心
2.「顧客多様化時代」に最適化したマーケティングの欠如
3. 人材不足によるデジタルマーケティングの普及とインフラ構築の遅れ
4. マーケティングにおける良いデザインの必要性軽視
日本では、経営戦略にデザインはあんまり関係ない、と思っている企業が多い、ところが気になります。
で、次は、ブランディングの重要性です。
まず一番大切なのが、ブランド力が上がると、世の中により広くに認識され、 企業価値も上り、その結果、収益が伸び企業価値が更に上がる、と言う、正のスパイラルがおきてきます。
こちらは最新のアメリカのインターブランド社、世界最大のブランディング会社"、なんですが、による "世界企業ブランドランキング2019" からの上位10社です。これは、世界的ブランドの収益性・価値・カリスマ性など、そのブランドが持つ価値を金額換算し、ランキングしたものです。アップルのブランド価値は、約26兆円と、とんでもない数字になっております。
そして上位50社の内訳を調べましたところ、日本企業は一社だけ、と言うのは気になります。日本経済が低迷したとは言え、まだ世界でGDP三位の経済大国です。にもかかわらず、一社だけというのは、日本企業がブランド価値を上げることにかなり苦戦していることが伺えます。
世界企業ブランドランキング2019上位50社国別内訳
アメリカ:29社
日本: 1社
ドイツ: 8 社
フランス: 4 社
スウェーデン: 2社
スペイン:1 社
アイルランド、イタリア、韓国 、スイス、イギリス:各 1社ずつ
ではどのようにして、ブランド力を鍛え、ブランド価値を高め、それを収益の増加に繋げていくのかと言いますと、この二点がキーとなります。
HOW?
1. 感情的価値の促進による競合との差別化
ブランディングにおいて、デザイン、ヴィジョン、ストーリー、ミッションなどを包括する "感情的価値" を上げ、視覚的に優れたコミュニケーション を展開する。
2. ストーリー戦略
顧客を中心としたマーケティングの考え方をベースにして、顧客にとって魅力的な "独自のブランド・ストーリー" を展開しファンを増やす。
差別化されたストーリーの発信から、共感してもらう力、つまり、同じ機能のものでも、高く売れる心理的価値を強化することが狙い。
今は、感情的価値の促進による "競合との差別化" の時代です。先ほど少し触れましたように、日本企業は良いものを作れば売れる、という、機能的価値を大切にしていきました。しかし現代のグローバル化により、機能的価値 による競合との差別化が難しくなり、感情的価値での差別化が重要になりました。そこで、高品質なデザインが、コミュニケーションツールとして不可欠なものとなってきております。
また独自のストーリー展開も非常に重要です。顧客多様化時代にオプティマイズしたマーケティングをベースに、魅力のあるストーリーや仕掛けつくりで顧客の心を引きつけ、そして感情を揺さぶり、共感させ、購買に繋げる といった、一連の流れ作りがとても大切だと思います。
3. A WINNER & A LOSER
独断と偏見をご容赦ください 🙇♀️
それでは次、前述したことを踏まえて、現在アメリカ、ニューヨークに進出している企業の、WINNER と LOSER、を見ていきたいと思います。
はい、WINNER は、 一風堂です。
一風堂は、2008年のニューヨーク進出以来、世界的に展開し "ニューヨーク・ラーメンブーム" の火付け役と言われています。ラーメン1杯で20ドル、お酒も合わせると2人で合計150ドル、それでもお客さんは途切れないという、人気のスポットです。一風堂の最大のポイントは、様々な創意工夫を凝らしながら、競合との差別化に成功していると言う点です。例えば、こちらの ”ラーメンダイニング" というコンセプト。これはモダンなインテリアの中に作られたウェイティングバーで、お酒を飲みながら空席を待つ、ですとか、ジャズを聴き会話を楽しみながら食事をする、と言う、会話好きなニューヨーカーのライフスタイルに合わせたものです。
また、ラーメンだけではない、一品料理やアルコールメニューの充実、スタイリッシュな店舗、それから、デザイナーコラボのユニフォーム、オンラインマガジン、ファッションブランドのようなおしゃれなロゴ、といった、イマドキのブランドの確立にも大成功しています。
ではその次、はい、ルーザーさんです。ご存知のように、いきなりステーキ、です。こちらに関係者の方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
敗因は、一言で言うと、文化の違いを理解していなかった、と言う事です。アメリカ人は、外食にエンターテーメント性や楽しい会話、コミュニケーションを求めています。なので 安い・早い・おいしい!と言った日本式の感覚とは異なります。そして、なにより私がびっくりしたのは、このデザインのイケてなさ、です。これではちょっと、アメリカ人のハートはゲットできないかな、という印象です。
4. これからが楽しみです。
羽ばたけ日本のECビジネス 🚀
それでは、こちら、まだ成功するかしないかはわからないのですが、大きな期待を込めて、素晴らしい例を紹介いたします。
Rakuten、です。Rakutenは2005年にアメリカ進出をし、アメリカのECサイトを買収しながら拡大してきました。そして2018年になり更にグローバル化を加速させるために、ブランディングをリセットしました。この新しいロゴの、この辺りの文字と文字の詰まり感や、この紫のグラデーションの使い方などは、とてもアメリカっぽいなと言う感じですね。またそれに伴ってウエブサイト等の販促物も刷新しました。そして、さらに大胆なプロモーションも打ち出しました。それが、この、CMです。
アメリカ人に正しい社名を覚えてもらうために、“らくてん” と正しく発音すると現金がもらえる機械の前で、現金をもらって大喜びするアメリカ人の姿を映し出しています。
で、それは、Rakutenで買い物をすると現金を還元しますよ、それはものすごくエキサイティングですよ、というメッセージが込められています。ではご覧ください。
はい、いかがでしたか?面白いですよね!かなりアメリカ人の目線を意識したCMに仕上がっています。ものすごく頑張っているのがおわかりいただけるでしょうか?
5. 今日のまとめと留意点
これだけは最低限押さえたい
では、最後に今日のまとめと留意点です。
アメリカで成功するには、アメリカ人受けするものを知る、これが最重要です。ターゲットの細分化とそのニーズに合わせた丁寧なマーケティングがとても大事です。
アメリカ人はインパクトのあるビジュアル、見てすぐわかるもの、そしてポジティブなイメージに惹かれます。また宗教や人種の違い、多様性やインクルージョン、男女平等であるコンセプトにもとても敏感です。
それらを踏まえて日本企業が目指すものは、ハイクオリティー、デザイン性の高いブランディングで他者との差別化、を図る事です。またアメリカ式のマーケティングを取り入れて、文化の違いに精通した現地のマーケティング会社に委託する、などのローカライゼーションも視野に入れたいところです。そして最後にフレキシビリティー。日本で大企業であっても、アメリカでは新人です。アメリカ人の事を一から学んでいこう、文化の違いを理解しよう、という、柔軟な姿勢がとても大切か、と思います。
最後に。私は日本経済が生き生きしていた頃にニューヨークにやって来ました。マンハッタンにも日本のデパートがあったり、駐在員のご家族や留学生などがたくさんいました。一ドル80円代になったこともあります。あの頃を取り戻すべく、こちらで培った経験と知識を生かして、デザインで、日本企業のアメリカ進出のサポートをさせていただければ幸いと思っております。
今日は最後までお付き合いいただきまして、大変ありがとうございました。
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私は、ニューヨークのアートスクール卒業後、数々のリアルワールドでのプロジェクトを通じ、本物の ”ビジネス戦略としてのデザイン” を習得しました。アメリカ式デザインで世界的に活躍されたい方、なんだかよくわからないけれど、ご自身のコーポレートサイトに危機感を感じている、テックスタートアップ関連の方、あなたの会社の魅力を最大限に引き出すブランディングに興味のある方など、こちらまで お気軽にご連絡ください。
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