大安寺のすべてー天平のみほとけと祈り@奈良国立博物館
奈良が好きすぎて、毎週のように通っています。
ポカンと広いお寺の敷地。せんべいを持つ観光客をもとめウロウロする鹿たち。雑草が生い茂る平城宮跡を横切って走る近鉄電車。
どうしてこんなになつかしい気持ちになるんだろう。
歩きつかれてベンチに座り、鹿に囲まれお茶を飲みながら山の緑をぼーっと眺めていると、いつか、遠い昔のことを思い出せそうな気がします。
今日のお目当ては、奈良国立博物館で開催中の展覧会『大安寺のすべて』(6月19日まで)。
大安寺は今、小ぢんまりとしたお寺だけれど、火災や地震に遭う前は、東大寺や興福寺と並ぶ大伽藍だったのだそう。
奈良国立博物館が「すべて」と言ったら、本当に「何もかも」なのです。
仏さまはもちろんのこと、古文書、瓦のカケラ、学僧たちが使っていた日常の道具に至るまで、大安寺にまつわる無数のモノたちが、学芸員さん渾身の解説と共に展示されています。
奈良で「昔」と言ったら、1300年前のこと。
だから展示物も、「国宝」「重要文化財」の文字があまりに多すぎて、ゲシュタルト崩壊を起こしそうになります。
何よりもまず、昔日の大安寺をあらゆる手段で蘇らせようとしてきた人びとの情熱、というよりも執念に胸を打たれました。
いま、大安寺の跡地には民家がびっしりと建っていて、たくさんの偉いお坊さんたちが願ったように、現実の世界で大伽藍を復活させることは難しそうです。
けれど展覧会では、かつての大安寺の姿をCGで見ることができます。
昔のお坊さんたちが、このひろびろした道をどんな晴れがましい気持ちで歩いていたか、今はもう見られなくなってしまったお堂がどんなにカラフルな色合いだったか、想像すると少し切ないです。
タイムトラベルから戻ってきたような気持ちで博物館を出て、もの欲しげな鹿たちに荷物を物色されつつ、今度はお向かいの興福寺へ。
国宝館の千手観音さま。
そして東金堂の薬師如来さま。
失われてしまったお寺に思いを馳せるのもロマンがあるけど、今、目の前で会える古い仏さまや、見上げることのできるお堂はやっぱりいいなあ。胸が熱くなります。
10代の頃、修学旅行で奈良を回ったときには、仏像にこれほどたくさんの表情があるなんてまったく気づきませんでした。
当時は未来のことで頭がいっぱいだったせいかな。
今のこの、恋焦がれるような気持ちは一体何なんだろう。
年を重ねて、多少は心に隙間ができたのかしらん。
すっかり興福寺のファンになり、きれいな写真がたくさん入った『興福寺の365日』という本まで買いました。よく見るとDVDがついています。
なんと!
奈良が恋しいとき、私がいつもエンドレス再生しているNHKの番組『映像詩』を撮影している、奈良在住の映像作家、保山耕一さんが撮影した映像ではないですか!
これからゆっくり見るのが楽しみ。
そしてまた、憧れの仏さまたちに会うため奈良へ行こう。