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音楽で巡る鉄道の旅〜「Railway Story」によせて

予定していた電車に、乗り遅れた。
走り去る車両を見送りつつ、人もまばらなホームでため息。
今日は朝から、ほんとについてない。

急いでいたら、自転車を降りるときに、お気に入りの服の裾を引っかけて、ほつれてしまった。
ベンチに座って、飛び出してしまった糸を切り、端を結んでおく。

指の間で丸まった糸を見ていて、ふと、駅って結び目みたいだな、と思った。
たくさんの人がここから出発し、通過点にし、そしてまた、駅へ戻ってくる。

   🎵

先日、「鉄道」をテーマにした中井智彦さんのコンセプトライブ「Railway Story」に出かけてきました。
同じタイトルのアルバム発売を記念したワンマンライブとのこと。

会場は昨年も訪れた目黒の名門ライブハウス、BLUES ALLEY JAPAN
しっとりした大人の雰囲気で、どの席からもステージが近く感じられます。
そして、食事がとても美味しい。

ライブでは、「TRAIN-TRAIN」や「卒業写真」など、鉄道が登場するJ-POPの名曲が、ご本人の散文詩を差しはさみながら紡がれていきます。
よく知っているはずの名曲も、長濱司さんのアレンジと、中井さんの深みのある歌声に新たな魅力を引き出されて、別の物語のよう。

一緒に出かけた夫は「遠く遠く」を聴いて、ふるさとを思い出した様子。
私はアルバムの最後に収録されている「駅」というオリジナル曲が心に残りました。

たとえば、夕闇の中を走っていく電車を遠くから眺めていて、窓のところがあたたかく光って見えるときみたいに。
演奏を聴きながら、今はもう戻れない場所へ帰りたくなるような、大切な何かを思い出せそうな気持ちになりました。

時が流れ、周りの景色はどんどん移り変わって、列車のように通り過ぎていく。
そうしていつか、自分がいなくなった後に、一番星の残像みたいに小さな光が、レールの上に残って、誰かの足もとをそっと照らしてくれたらいいなあ。なんてことを、音楽に身を委ねながら考えました。

贅沢な時間の思い出を心の宝箱にしまって、また、それぞれの旅が続いてゆきます。

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髙橋三保子
読んでいただきありがとうございます! ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。 よかったら、またお越しくださいね。

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