セイロ人気の裏で、国産メーカーさんが"残りわずか"という話
三保原屋本店は静岡の家庭用品店専門店。創業は1687年といわれています。
2023年秋から、「セイロ」が大注目されました。
(ネットで調べすぎて、ワケが分からなくなってしまった方は、一度、お近くの専門店さんで訪ねてみると良いと思います。)
2023年の秋・冬は、インターネット上の各店舗のセイロ在庫が売り切れになり、三保原屋本店でも例年よりセイロの販売数が数倍に伸びました。生活に興味を持っていただけたという意味では、とても良かった面もあると思います。
その一方で、「国産の中華セイロメーカーが残りわずか」という現状を、ご来店いただいたお客様の一部には伝えさせていただいています。
本日の本題
ここからが本日の本題。
結論から言えば、今回のように
「この道具を使ってみたい!!」と思った時には、
「もう作っているメーカーさんがありません。。」
「国産メーカーさんは残り1社で、大欠品しています。。」
なんてことは
今後簡単に発生する。(実際に発生している。)という話です。
国産の中華セイロ
今回、お客様と話をして「国産の中華セイロ高い!!」とビックリされる方もいらっしゃいます。
たしかに、蓋で1万円、身で1万円するものも珍しくないので、家庭用品というジャンルでは安くはないですよね。
一方で、家電などと比べれば高くはないとも言えます。
使える年数や、実際の製造工程を考えれば、値段がしても納得と思える商品だとは個人的にも思っています。
製造方面の話
では、国産の中華セイロメーカーがどれくらいあるか??と言えば、
企業体で製造されている会社さんが実質的に1社。
ご家族でつくられたり、作家さんのような立ち位置で作られている方が数社。それらを含めても5社くらいのようです。
(↓以前、お伺いしたメーカーさんのインスタアカウントです。)
非常に限られた製造キャパで、
・家庭用
・業務用
の中華セイロは作られています。
有名な横浜の「中華街」で売られているものや、東京都の「かっぱ橋」で販売されている国産のものも含めてです。
販売店で有名なお店があっても、メーカーさんの名前が認知されるまでには相当の時間がかかっています。
(木曽駒印が刻印されるようになり、数年経過しますが、この刻印がされているものは、マルヤ製作所さんが製造されたものです。)
どんどん廃業はつづく
木製品に限った話ではありませんが、
「この仕事は次世代の人には継がせられない」と、廃業を心の中に決める(決めている)メーカーさんはかなりの数があります。
国産の中華セイロに関しては、
「久しぶりに皆様の興味が向いたので、このような話をすることが出来るし、皆様も耳を傾けてくれる。」
という印象はあります。
家庭用品ジャンルでは、安くはないのは事実ですが、国産中華セイロは、何年も再評価されることがなかったジャンルにも思えるだけに、少しでもお客様に現状をお伝えできて、良かったと思うこともあります。
(中華セイロに限らず、価格の裏側の話が伝わった結果、道具を大切にしていただき、道具が長持ちすればと願っています。)
今回蒸し料理にハマった方へ
ここからはお願い(提案)を含んだ文章です。
外国産(中国産)が悪いわけではありませんし、国産中華セイロは安くはありません。
そのため、今回の蒸し料理人気がキッカケで、外国産のセイロを買われた方も多かったと思います。
私たちも「とりあえず使ってみたい!」という方には、外国産のセイロをオススメしたりもします。
もし、今回のセイロ人気で、
蒸し料理や、セイロ生活にハマった方は、
国産の中華セイロも是非、手にとってみてください。
(インターネットでは、重さや香りが分からず、木製品には必ず個体差があるので、一度は実店舗で触ってみてください!)
国産という意味では、和セイロもジャンルとしては存在します↓
(セイロに高さが欲しい方は、和セイロも魅力的ですが、中華セイロとは木の種類が違うこともあるので、匂いも確認してみてください。)
昔と比べて
ユーザーさんの生活
国産のセイロが高い安いという議論よりも、強く感じるのは、
最近の「普通に」生きるためのコストが高くなっているということ。
携帯電話の契約料金、コンビニエンスストアやドラッグストア、100円ショップでのお買い物など、年間であわせれば数十万になることも珍しくはありません。
今と昔では物価・価値観・スピード感も違うので比較のしようがないのですが・・
限りある資金・時間や興味を、どこに向けるのか??で、
その方の生活も大きく変わる(かも?)と思うことがあります。
そして、その選択が、国内でのモノづくりの未来を左右するのかなと思うことが増えています。
どんな未来を選ぶのか??
例えば、
「私たちのような商店街の専門店」で、
「国産のセイロ」を購入する
という選択をしていただけると
●私たちのような商店街の専門店
●国産のセイロメーカー
が、存在するような未来を選んでいただけるともいえるのかな??と思います。(投票しているような感覚?)
最後に
冒頭でも記載しましたが、今回のセイロ人気で、インターネットで迷子(調べすぎて、よくわからなくなっている?)になっている方をよくお見かけします。
分からなければ、お近くの専門店さんに行って、スタッフさんに話を聞いてみていただければと思いますし、
そのためにも、三保原屋を含む地域の専門店さんは頑張って生き残る必要があるのかなと思っています。