江戸川Qの「独想感想文」#10
郷土史と言う分野は歴史学の中の本流ではない、という一般的な認識の人の方が多いのではないでしょうか。
然しながら、俯瞰的に見て歴史学に「本流」というものは無く、歴史そのものは地球上のあら揺る箇所で平行線に動いているタイムシフトの時間軸において結合と離反の結果、パラダイムシフトを発生させている、或る意味「時間学」ともいえるかもしれません。
本作はそんな日本の歴史と言う「本流」を考えて読むことをあまりお勧めしません。
できれば読者の方が素直に幕末から明治維新、そして西南戦争というタイムシフトを九州南部の地「飫肥」にて宿志の人である藩家老平部嶠南が書いた記録と感性を感じて読むことをお勧めします。
またこの本は西郷隆盛研究においても、もう一つの冷静な側面から学び取 れる研究誌でもあると言えます。
幕末の小藩に於いて、「維新」とは何者であったのか?
本作はそれらの正体を感じ取れる一冊でもあり、また研究誌でもあり、そして郷土史という分野がいかに歴史的な布石を人類のタイムシフトに投じてくれるかと言うことを改めて考えさせてくれます。
――宿志とは、前々からもち続けてきた願い。年来のこころざし。宿意。素志。夙志しゆくし、を謂います。
時代が変わり、変動の危難の時ともいえる現代。私達は「宿志」を心に秘め、生きる日々とも言えないでしょうか?
もしあなたがこの本を気になったら、
そんなあなたにこの一冊を。
そして
あなたが一冊の本を読み終えたら、あなただけの「独創感想文」を。
文:江戸川Q