お盆の、迎え火
前に勤めていた会社の社長は、生まれも育ちも銀座でした。
その社長が、銀座の一等地に建つ自社ビル(兼住居)の通用口を出たところで、お盆の「迎え火」を焚いている姿を目撃したことがあります。
それは銀座にまるで似つかわしくない光景だったのですが、同じビル内にお住まいのご高齢の母君の、たっての要望だったのかもしれません。
今考えると、銀座という土地に社長のご先祖様がお帰りいただくことに、特別な意味があったようにも思えます。
この時期は、それぞれの家で「Return Home」があって、過去の記憶と未来が、結ばれていくのでしょう。
雷雨と共に、令和二年の「月遅れの盆」が始まりました。
8月13日から始まるお盆を「旧盆」と呼ぶ人がいますが、それは正しくありません。
「旧盆」とは旧暦七月十三~十六日に開催される盂蘭盆会であり、毎年、日程がズレます。
今年は西暦8月31日~9月3日に該当します。
しかし本日から始まる「月遅れの盆」は、本来の旧暦になるべく季節感を近づけるために設置された、いわば折衷案です。
明治時代、旧暦から西暦へと暦が切り替わって以来、西暦7月に執り行うお盆があまりにも季節外れなので「せめて1か月ずらして西暦8月の同じ日にすることで雰囲気をつかもう」というのが「月遅れの盆」です。農作業の真っ最中だったという不便さも、あったようです。
戦後までは旧暦のお盆がまだまだ健在だったようですが、昭和三十年以降、月遅れの盆が旧盆にとって代わったとされます。
月遅れの盆は、夏休みの帰省、終戦記念日と、特別なことが重なっている期間でもあります。よって月遅れのお盆にも、意味があると思うのです。
本来でしたら秋田に行って墓掃除をして、仏壇の前に盆棚をこしらえている頃なのですが、今年はコロナの影響でお参りができず。
その代わり、キレイに掃除され花や供物が供えられた先祖代々のお墓の写真が、LINEで送られてきました。今年は遥拝、遠隔でのお参りにとどめましょう。
ちなみに迎え火を焚くという風習は、秋田の家にないんです。近所でも見たことありません。
昔から墓参りを、そのまま迎え火の代わりにしていたようです。
徒歩5分くらいの場所にある墓から、ご先祖様が一緒にゾロゾロ歩いて家までやってくる・・・というイメージ。こちらのほうが、しっくりきますね。
今日から16日迄、気吹乃宮では毎日サンを焚くことによって三宝を供養し、土地神を鎮めて土地を浄化します。悪霊や亡霊については負債を消し、祖霊に対しては菩提を廻向します。
今年は「Stay Home」しつつ「Return Home」することに、つとめます。